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ジャーナル(2日)、日米中央銀行の「違い」、基調的インフレか長期見通しか

パウエルF R B議長は今朝、F O M C(公開市場委員会)終了後の記者会見で「インフレに関する指標は予想を上回っている。確信を強めるまで、従来の想定よりも時間がかかりそうだ」と述べ、利下げ環境の整備に時間がかかるとの見通しを示した。また「インフレ率を目標の2%に下げるのに(現状の)政策引き締めは不十分だという説得力ある証拠が必要だ」とも述べた上で、「その結論を裏付ける証拠はない」と付け加えた。要するに利下げの時期は先送りせざるをえないが、だからといって利上げが必要だとは思わないと言っているわけで、市場はこの発言を捉えて「議長は依然としてハト派」と解釈、再利上げはないと安堵しながら胸を撫で下りしたというわけだ。日米とも当面の金融政策に大きな変更はなさそうだ。それはそれでいいのだが、日米中央銀行の総裁発言にちょっとした違いがあるような気がした。

パウエル総裁はインフレ再燃が懸念される現在の状況に関して、以下のような認識を示した。「年初来発表されたインフレ率データは予想より高かった」。だが、「長期的なインフレ期待は依然として固定されている」。「インフレ率を2%に戻すために、長期的には政策は十分に制約的だと考えている」、「適切である限り、制約的な政策スタンスを維持すると確約」、「次の政策変更が利上げになる可能性は低い」。最近の統計データを見る限りインフレ率は高止まりしているが、金融政策としては現状の引き締め策で十分であり、再利上げが必要になる可能性は低い。簡単に要約すればこういうことだろう。その理由として挙げているのが「長期的なインフレ期待は(高い水準で)固定されている」ということだ。植田日銀総裁の発言に照らし合わせてみれば「基調的インフレ率」が依然として目標金利の2%を下回っているとの発言に符合する。米国は高止まりで、日本は目標を下回っている。いわゆるデフレ再燃懸念だ。現状、日米の金融環境は正反対というか対極的だ。
 
問題は「長期的なインフレ期待」と「基調的インフレ率」の判断だろう。長期的なインフレ期待は市場関係者や学識経験者などのアンケートを元に弾き出された数字。これに対して基調的インフレ率は一時的な変動を除外し、事後的に作成された数字と説明されている。後者には数字を弾き出す具体的な根拠があるわけではなく、曖昧な部分がかなりある。植田総裁もそこは認めており、「精度を上げるべく努力している」と説明する。消費者物価には変動の激しい食料品やエネルギーを除外したコア指数、コアコア指数というものもある。これと基調的インフレ率はどこが違うのか、個人的には判然としない。日銀は基調的インフレの変化率を政策変更の重要な材料にしている。円安に伴う輸入物価の高騰もいまのところ基調的なインフレ率に影響を及ぼしていない。だから無視する。学者である植田総裁の精緻なロジックは理解できるが、それでもどことなく恣意的な気がする。

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