あしたのことはいまかいて

今日(7月 25日)から、なつ休み!

1か月くらい学校に行かなくていい! あそびまくれる!

したいことはたく山ある。 プールに行ったり、BBQしたり、なつまつりに行ったり・・・

でも

なつ休みはたのしいことばかりじゃないんだよね。

そう、しゅくだいがあるんだ。 

がっこうの友だちのケンタは、あんなにたく山あるしゅくだいを3日でおわらせたんだって!

ぼくもはやくおわらせなくちゃ・・・

あとずっともって帰れって言われたものもって帰ってなかったから、ランドセルがすごくおもいよ~

7月30日

がっこうのしゅくだいはおわった!

まい日10ページくらいやって、音がくの先生にやれって言われたリコーダーもたく山れん習した!

でもひとつだけのこってて・・・

それは、なつ休みの絵日っき。

まい日コツコツかけばいいじゃんっておもうでしょ?

でも、ぼくさい近しゅくだいがおわってから、友だちといっしょにあさから夜までずっとゲームしてるんだよね

それでいつも日っきかくのわすれてた!ってなって、まぁいっか明日かこうーってなってもいざ明日になるとまたかくのわすれてそれのくり返し。

だから、今日はゲームもおことわりして、「ウソ」の日っきをかいてもう全ぶのしゅくだいをおわらそうとおもうんだ!

あと、みんなのウケをねらっておもしろい日っきをかこうと思うよ きっとほめられるぞ!

よし、そうときまればかいていくぞ〜!

7月30日

あさおきたら空に白いひかりがあった。
もしかして、地きゅう外生めい体かな?
ママやパパにはなしても、「きっとひこうきだ。」とか、「太ようとまちがえてるんじゃない?」って言ってしんじてくれない。
あしたもそのひかりがあったら写しんとろうっと!

8月5日

今日はひかりのことなんかぜんぜんかんがえず、家ぞくみんなでプールに行った。
ウォータースライダーがたのしかった。ぼくのお兄ちゃんはおよぐのが下手くそでうきわをつけてた。もう15さいなのに。
家にかえってあのひかりのことを思いだしたから、ひかりがいちばん見える窓に行った。
あのひかり、どんどんこっちに近づいているきがする。

おもしろくかけてる気がする!
よんでいくうちにどんどんおもしろくして、らくに日っきをかいて、みんなにほめられまくろう!

かけた!よし!これで、ぼくのしゅくだいは全ぶおわったぞ!
あそんで、あそんで、あそびまくろう!

8月10日

毎日朝8時半に起きる。
夏休みなのに毎日毎日ゲームばかりしてる自分に少しうんざりしてしまう。

だから今日は外で少しだけ散歩することにした。
朝はフレンチトーストを食べて、服はお下がりのシャツと短パン。

「暗くなるまでには帰りなさいよ」と僕の母親が言う。
「わかってるよ 少しだけだから、少しだけ!」

家の廊下を走り、玄関を開ける。 明るい日差しがスポットライトのように僕を照らす。

まだ9時半なのにこんなに暑いのか…

照らしつける太陽を僕は嫌々目に焼き付ける。

…?

違和感を感じる。 光がもうひとつ。太陽じゃない。
その時真っ先に頭の中から出てきた。 

あの絵日記。

まさか。あれは全てウソで、楽するためと、クラスのみんなに面白いって言われてもらうために書いただけなのに。

真夏なのに背筋がゾッとした。
きっと見間違いだと思う。いや、思いたかった。

結局1時間くらいですぐに帰った。 散歩をしてる時はずっとあの絵日記のことしか考えられなかった。

8月11日

嘘の絵日記を読み返す。 その通りになっている。
心臓がドクドク鼓動を打っている。 なんで?どうして?
このことは誰にも話さないようにした。 微妙にあの光がこちらに近づいている。
吐き気がしたのでカーテンを閉めてリビングに向かった。

8月12日

やっぱり、やっぱりだ。近づいてる。 僕のあの絵日記の最後、つまり31日の絵日記にはこう書いてある。

8月31日
あのひかりが大きな音をたててひまり公えんにおちた。
みんなそのひかりをみたいって言って、ひまり公えんはたく山人がいた。
ぼくも行った! いつもはしずかでほのぼのしてる公えんなのに、この日はおまつりみたいだった。

なつ休みさいご、7年生きてきてすごく印しょうにのこったなつ休みだったな。

ってことは、公園に落ちる。 落ちる 嘘じゃない 今まで書いた嘘の日記、全てその通りになってきてるんだ。嘘じゃないんだ

ガバッとベットから出て、顔を洗って心を落ち着かせてからリビング行った。リビングのドアを開けた瞬間、僕の母親が言った。

「ねえ、ふたつの光のこと、知ってる?」

顔が青くなった。どうして?なんで?誰にも言わなかったのに。でも、あんなに、明るかったら誰かに気づかれるだろうな、とも思った。
でも一応聞いてみた。
「どうして知ってるの?」
僕の母親は答えた。
「ニュースでやってたんだよ どのニュースつけてもそのことばっか しかもちょっとずつ近づいてきてるんだって 怖いね~」

もうそこまで来てたのか。ニュースに出てたの?最近はニュース見てなかったから知らなかった。 僕の嘘で世界がおかしなことになってる。

そうだ、あの絵日記、もう一度初めから書いて、光のことをなかったことにすればいいんだ。
今ならまだ間に合う。 はず。

急いで自分の部屋に行って絵日記を開いた。 消しゴムで全てのページを消した。
途中紙が折れたり少し破れたりしたけど今はそんなことどうでもいい。
「光、消えたかな…?」

カーテンを開けてあの光を探す。…まだ、ご健在中だった。
きっと徐々に消えていくのだろうと言い聞かせカーテンを閉めて、次はちゃんとした絵日記を書き上げた。

8月13日

あの光は消えない。ネットや近所はあの光のことばかりだ。 普通に書いとけばよかった ウケ狙いなんか、楽に書こうとなんかしなければよかったと思った。

もうほとんど諦めかけている。 後悔と絶望だけ。だけどその事を表には出しては行けないと思ったから、みんなの前では元気にしてた。

夜もあの光を見つめる。 そうだ、どうせ落ちるし、名前でもつけとくか。2つ目の太陽。白い光を放つ星。セカンド・スター…… いや、ダサいな。

そんなことをぼんやり考えていたら0時過ぎになっていたのですぐに布団に入って寝た。


数日後


8月30日

とうとう明日。明日。来る。落ちる。近所の公園に落ちる。正直、大きさとか絵日記には書いてないからどのくらいの大きさかわからない。 クソでかいかもしれないし、逆に米粒みたいに小さいかもしれない。

今日は友達が僕の家に来た。 その間だけはあの光のことを忘れられる。そう思ってたのもつかの間だった。
「なぁお前 あの光のこと知ってる?なんでもいいからさ」

正直ドキッとした。 本当は沢山言いたいことはあるけど言うとバカにされてしまうから流行ってるよね アレ だけ言っておいた。

「ちぇ。お前の部屋の窓からも見えっかな」
「や、やめろよ」
「やば!めっちゃ見えるじゃん 写真撮っとこ」
ケンタは7歳なのに携帯を持ってる。誕生日に貰ったらしい。一時期その自慢をクラス中にしまくってたっけ。

「も、も〜 やめろってマジで」
「え〜?良いじゃん」
「良いけどさぁ…」

その後はずっとマリカしてた。ちなみに、ケンタは超弱かった。

夕暮れになったのでケンタは帰った。まだもうちょっといて欲しい。またあの光のことを考えたくない。と思った。

8月31日

夢を見た。
ドーーーン!と大きな音が鳴って、予想通り公園に落ちた。
僕の家は公園にすこし近かったので、僕の家もボロボロだった。午前の3時くらいだった。僕の家族はみんな僕を起こしていたらしいけど、僕は全然起きなかった。
家族みんな血だらけだった。もちろん、僕も。

ん?でもこのシーンは絵日記には書いてない。

公園に落ちるとは書いたが、こっちまで被害が及ぶことなんかひとつも書いてない。 夢じゃない方の自分はそう思った。

結局夢の中の自分は目を開けた。 家族だけだと思ったが、大勢の人がいた。近所のおばちゃん、ケンタ、消防隊員、あとは…知らない人たち。

鳴り止まない救急車の音
人々たちの助け合う声と悲鳴
そして、僕が無事でよかったと言ってくれる僕の家族の声。

そこで目が覚めた。

時間は午前6時。

「あ!やっと目覚めた!」
「え?本当?」
「良かった…」
「汗だくじゃん!」

見知らぬ天井と聞き覚えのある声。
病院にいた。 あれ? どうして?夢?

「あ、あれ…」
「お前、事故ったんだよ」
「どういうこと…え?…どういうこと?」
「今は安静にしててね」
病院の看護師が優しい声で話す。

「で、でも、何があったの?あの星」
「星?」
「寝ぼけてんじゃないの?」
「た、確かに…」

全部夢?あの絵日記も書いたのも夢?どこからが夢で、現実なのかわからない。

「なんか、お前、熱中症で倒れてたよ 玄関の前で びっくりしたなぁ」
「そうそう、めっちゃ重い荷物ランドセルに背負ってさ。あの時はびっくりしたよ」
「そうだったんだ…」
「それでさ、2日間くらい目覚まさなくて 怖かったよ」
「ちょっと待って 今なんにち?」
「今日は7月28日だよ」

びっくりしすぎて声も出なかった。全部夢だったんだ。
じゃあ、あの星は存在しない 絵日記も真っ白。あと学校の宿題も……

でも、なんしか、良かった。 僕の絵日記で世界を変えてしまって、大混乱させてしまった。それが全て無くなった。夢だった。

そして明日には退院した。

絵日記はちゃんとサボらず今日あったことを書いた。あの光のことは何も書かなかった。
もちろん、誰にも夢の話はしなかった。日にちが経つことに光のことは忘れていき、8月31日にはほとんど記憶の中にはなかった。


夏休み、とても充実したと思う。

光のことは思い出すけど、あの長い長い話は思い出せなかった。ただ、なんかすごいことがあった くらいだった。

8月31日夏休み最終日、朝日が今日も眩しかった

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