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百字小説

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100文字の小説 ※タイトルとハッシュタグは除き、本文だけで100文字 ※文字数カウントはnote執筆画面の表示を参照しています
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2024年6月の記事一覧

【自動演奏】  祖母の形見のピアノには自動演奏機能があるから、毎年命日に祖母の好きだった曲が流れるのにも、違和感はなかった。家族の誰も、自動演奏の設定なんかしていないのだと分かるまでは。  今年も、曲は流れている。 #百字小説

【盗まれたマンホール】  マンホールが盗まれた、との通報を受け駆けつけた警察。道路を見れば、そこにある筈のマンホールの蓋が……普通にあった。通報はデマか? 一応異常がないか確認するため蓋を持ち上げ、気付く。蓋の下に穴がない。 #百字小説

【家族の事を想うが故に】  俺は家族の為なら何でもできる。うちの妻をからかってくる近所の奥さんも、息子をいじめた同級生も俺が土に埋めてやった。さて娘よ、お前も誰か嫌いな相手はいないか? 「うるさいパパ嫌い」  俺だな。任せろ。 #百字小説

【妹は怪獣】  僕の妹は怪獣だ。少しでも嫌な事があると、すぐにギャーギャー騒いで暴れる。今日だってそうだ。好きなお菓子が品切れだったってだけの理由で暴れ、巨大な足でビルを一個踏み潰し、火を吐いて山火事まで起こした。 #百字小説

【フライポテト】  フライドポテトが大好きで食事する店にポテトがあれば必ず頼むのだが、今日初めて入った店のメニュー表に「フライポテト」の文字を見つけ注文した結果、翼が生え宙を飛ぶジャガイモが提供され絶賛戸惑い中である。 #百字小説

【おぞましき人造人間】  2XXX年、世界各地で人造人間が発見され、人々は震撼する。なんて冒涜的な。人間とは、適切に管理された工場で産まれるべきものだ。機械が人間を造るのだ。人間の腹の中で造られる人間なんて、人造人間なんて! #百字小説

【シーなんとかと言ったから】  友人は海岸でシーグラスを探していたのだ、と気付いたのは、ガラス瓶で彼を殴り殺した後だった。だって海岸を歩きながら「シー……」とか言うから、てっきり海に遺棄した僕の元カノのシーナが探されているのかと。 #百字小説

【奇形の定義】  2XXX年。核戦争後の世界で、奇形児が多く産まれるようになった。腕が3本もある子供達。  3XXX年。地球環境浄化活動が順調に進む中、何故か奇形児が多く産まれるように。腕がたった2本しかない子供達。 #百字小説

【猫吸い失敗】  普通に猫を吸ったつもりが、勢いよく吸い込みすぎたのか、猫がするりと私の口へ入り喉を流れ、そうして私は猫を飲み込んでしまった。今、猫は私のお腹でゴロゴロ言っている。体内は狭くて落ち着くのかもしれない。 #百字小説