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【魔王の企み】 「魔王よ、何故お前は世界を支配しようとする」 「教えてやろう勇者よ。我は全世界を我の私有地とし、車の運転をするのだ」 「くるま」 「免許試験に落ち続け幾年。そこへ私有地なら免許不要と聞き」 「やめな」 #百字小説
【愛犬の病気】 愛犬が病気になりあちこちの獣医に駆け込んだが、どこも皆「うちでは治せない」と言う。確かに難病だ。毛が虹色に光り頭には植物が生え尾が百本になるなんて。しかし皆口々に人間用の病院を薦めてくるのは何故だ。 #百字小説
【猫の声】 外から猫の騒ぐ声が聞こえて、盛りの時期だな、と思う。 核戦争が起きてから十年。俺達の暮らすシェルターの外、汚染された世界から、今日も元気な猫の声がする。それが本物の猫か否か、俺達にはわからないが。 #百字小説
【廃墟の怪異に出会った話】 大学生の頃、先輩に強引に誘われて廃墟探索に行ったんです。そしたら探索中、先輩の姿が急に消えて。頭上から悲鳴がして。見れば、黒くて巨大な怪物が、先輩の体を持ち上げていて。 ええ、それが、今の妻です。 #百字小説
【きっとずっとマジックの真っ最中】 家族で見に来たマジックショー。人体切断マジックのお手伝いに呼ばれたのは、僕の弟だった。ステージの上で弟がバラバラになり、悲鳴が上がり、救急車が来て、警察が来て、両親が泣き、それで弟はいつ復活するの? #百字小説
【ターゲットを絞る】 新商品開発に難航していた頃、「ターゲットを絞ると良い」と助言を貰った。 そのおかげで完成したのが、こちら。 ターゲット層である仲良しカップル達を丁寧に絞って作りました、人間100%ジュースです! #百字小説
【雨の日の定番曲】 雨の日の帰り道。 「雨雨降れ降れ母さんが♪蛇に乗りお迎え嬉しいな♪」 なんて友達が歌うので「歌詞ちょい違くない?」とつっこんでいると、そこへ巨大な蛇に乗ったおばさんが現れた。 友達の母であった。 #百字小説
【心神喪失】 馬鹿な私にも優しくしてくれる恋人が最近人を殺したのだけど、彼は、ええと、心身喪失?での無罪を狙うという。協力する事にした。心身……彼の心と体が失われればいいのね。死って事? 私は重い灰皿を手に取る。 #百字小説
【着ぐるみと悪ガキ】 風船を配っていた着ぐるみに悪ガキ達が群がって、その頭を取ろうとしている。のを目撃し、止めようと近付いたが間に合わず、着ぐるみの頭はぽんと外れ、そこから血が噴き出した。血の隙間から肉と骨の断面が覗く。 #百字小説
【寒暖差と引っ越し先】 最近、寒暖差が激しくなったように思う。昼と夜で気温が随分と違う。というのを嫁や孫に話しても「引っ越したからよ」「前の家とは違うんだよ」とよくわからん理屈で流される。俺は腕を組み窓の外の地球を眺める。 #百字小説
【捨てられない私の家の中】 昔から私は何もかもが捨てられない。学生時代に使っていた鞄も、〆切の過ぎたクロスワード雑誌も、どこかで買ったキーホルダーも、別れ話をした彼氏も、彼氏のお腹に刺したままの包丁も、全部家の中で腐っている。 #百字小説
【くだらない話】 腹を下して苦しんでいた俺に、友人が薬をくれた。さっそく服用すると、俺の腹は風船のように膨らみ、胴体から離れ浮きあがり、空高く上っていった。 「ほらな、これでもう下らないぞ」 「上がられても困んだよ」 #百字小説