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【どんでん返し】 「依頼された『どんでん返しの小説』執筆の為にネタを探していてね、出会ったのが、ここにいる謎生物ドンデンだ。奇怪な鳴き声、蠢く触手、名状し難いこの生物が私の脳を刺激し」 「元いた場所に返してきなさい!」 #百字小説
【火事を知らせる】 寝室の扉が激しく叩かれる。 火事だぞ、と叫ぶ声。 私は無視して眠る。火災報知器は鳴っていない。 翌朝、私はいつもどおり仏壇に向かう。数年前の火事の日に私を助けて亡くなった父に、おはようを言う。 #百字小説
【ドリンクシティの騒動】 ここはジュース、お酒、いろんな飲み物が暮らすドリンクシティ。今日はやけに騒がしいですが、喧嘩かな? 「あいつに非があるんだ!」 誰かを悪者と決めつけるのは……あ、確かに非があるね。 珈琲くんに。 #百字小説
【ひっくり返す】 僕は魔法使い見習い、今は物を動かす魔法の修行中。リンゴを浮かせミカンを飛ばし、次はあれをひっくり返すぞ……おかしい、魔法をかけても何も変わらない。どうして、師匠? 「そりゃ変わらんさ、トマトだもの」 #百字小説
【かえらない】 同居人が帰ってこない。 僕らは自力で動けないので外へ探しにも行けない。困っていると、知らない人達が部屋に入ってきた。 僕らを「遺品」と呼んで、どこかへ運ぼうとする。そこに同居人がいるのだろうか? #百字小説
【火星、異】 我々が火星で暮らし始めて、ちょうど(地球時計で)一年になるようだ。 だが、地球時計とは何か? 一年とは何か? 我々とは異なる文化を持つ、太陽系生物達。擬態は容易だが、その本質を理解するのは難しい。 #百字小説
【火星、いま】 僕が火星で暮らし始めて、ちょうど(地球時計で)一年になるらしい。こっちに来る前は正直少し不安だったけど、今は毎日が楽しい。 火星でできた新しい友達と、シェルターの中を探検するんだ。君も一緒に来る? #百字小説
【火星、やがて】 俺が火星で暮らし始めて、ちょうど(地球時計で)一年になる。この星で続けている研究が、やがては、荒廃しつつある地球を救う一助になると信じている。 愛おしい、青い星。あの美しさを、失ってたまるものか。 #百字小説
【火星、それから】 私が火星で暮らし始めて、ちょうど(地球時計で)一年になる。住みやすく整えられた居住シェルターでの生活は、思っていたより、普通で。 だから私はもっと先へ行こうと思う。遥か遠くの星まで、未知を求めて。 #百字小説
【物置の中】 物置を片付けていたら、昔好きだった絵本が出てきた。懐かしい。引っ越してった幼馴染みにプレゼントしたんだよな、これ。……じゃあなんでまだ僕の家にあるんだ? 物置の奥に、何か、骨のようなものが見えた。 #百字小説