抗がん剤治療に至るまで

癌の肺転移が分かってからも3年ほどは無治療で過ごしていた。

大学を1年遅れで卒業して(これは病気のせいじゃなくて遊びすぎて単位が足りなかったから)、普通に就職して酒もガバガバ飲んでいたので傍目にはとても癌患者とは分からない状態だった。

なんで治療をしなかったかと言うと、もう肺に転移してる時点で完治を目指すのは難しいと言われたから。

抗がん剤で延命治療をするしかないけど私の癌に薬が効く確率は20%ほどとのことだった。

効くか分かんない薬のために髪の毛や肌を犠牲にしてなんの意味があるのか本当に分からなかったのと、元々刹那主義的なところがあるので どうせ完治しないんだったらこの執行猶予期間を悔いなく楽しもうと思っていた。

主治医の先生は私のそういう性格にとても理解があって、あなたがやりたいタイミングで治療を始めましょうと言ってくれていた。

それに対して私は、いよいよヤバいってなったら治療したいですという風に伝えていた。

今思えばこれがクソ甘ったれな考えで 吹っ切れているようで全然覚悟が出来てなかったなーと思うんだけどね。

そんな感じで日々を過ごしていたら、それまで本当に無症状だったのに突然息切れが始まる。

ちょうど通院の日だったのでCT撮ったところ肺に水が溜まっているようだとのこと。

これまでは腫瘍もゆるやかに大きくなっていくだけだったのにいきなり症状が悪化してしまって、目の前が真っ暗になって診察室でギャン泣きする私。

そして胸水を抜く治療の説明を受けて、前より症状は悪化してる状態だから抗がん剤治療を始めるか?と聞かれる。

自分がなんでこれまで無治療を貫いてきたのか、そのとき一旦持ち帰ってよーく考えるべきだったんだけどもう胸水の件でプチパニックだからその日のうちに抗がん剤治療やりますと答えてしまった。

この日に戻れたら絶対抗がん剤治療なんかやらなかったのにな と今もどうにもならない後悔をずっとしている。

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