奇跡を起こすために、この病院に来たんですと言われた話。

Noteでちゃんとした投稿は初めてです。
普段は都内の某病院で看護師をしています。
病棟で出会った患者さんの母が印象的だったので、少しアウトプットしたいと思います。

重度心身障害の患者様

重度心身障害という言葉があります。この障害を持っている方を重度心身障害児または重度心身障害者と行政的には分類します。重度な肢体障害と精神障害を合併している方のことです。絶えず医療的なケアを必要としている方々のことです。
この患者様は重度心身障害を持つ男の子です。病院には治療を目的に来ており、母が24時間の付き添いをしていました。

「奇跡を起こすために、この病院に来たんです」

この患者様はてんかんを合併しており、以前は少しずつ食べられていましたが今は難しい状態です。嘔気が強く、常に嘔吐してしまっているような現状がありました。
その患者さんの母と話す機会がありました。
患者の母は、以前のように食べられるようになることを望んでいました。前医では、気管切開や胃瘻を勧められていた。だけど、食べることが好きな子だったから、食べられるようにしてあげたい。そんなことを話してくれました。
状況は正直厳しい患者様です。自分で十分に唾液を飲み込むことが難しく、それにむせてしまい、刺激になって嘔吐してしまう。十分な睡眠もとれていないようで消耗してしまっていような状態です。
このままの状態では、誤嚥がいつでも起こりうる状態であると思います。誤嚥が起きれば、肺炎のリスクにつながります。肺炎になれば、呼吸状態の悪化から命に関わります。
前医と同じように患者の命を考えるならば、気管切開や胃瘻は必要な処置です。

延命とQOL
病院って何をしにくるところなんでしょう?治療を行う場所です。治療って何を目的に行うのでしょう?病状の改善?治療の目標ってなんでしょう?考えていくと、いつも延命とQOLという壁にぶつかります。延命は文字通り命を延ばすことです。極端なことを言って仕舞えば、呼吸は呼吸器に頼り、栄養は胃瘻や点滴に頼ったとしてもその人の心臓が動いていれば命があります。死の定義はまた難しい問題なので、また考えらればと思います。医療が発達していく中で、以前は延命が第一に考えられていました。だけど、延命すれば、それでいいのか?という問題が出始めました。生きがいやその人らしさって延命だけしていたら、なくなってしまうんじゃないかという考え方です。そこででてきたのが、QOLという考え方です。Quality of life、直訳すれば命の質でしょうか。命を期間ではなく、質でみようとしました。母の考え方は、延命よりQOLを望んでいるようでした。##結局病院って何をするところ?奇跡を起こしたい。テレビや映画では奇跡がよく起こります。ですが、現実はすべての積み重ねではないかと思います。はっきり言うなら奇跡はそうそう起こらないということです。病院に奇跡を求められるのは、厳しいです。現代医学は奇跡を起こせないからです。それを望まれる母親。どう接していいのか分からなくなりました。病院って何をするところなのか?看護師は何をする職業なのか。考えていかなければなと思いました。マル。なんか頭がごちゃごちゃしてきました。また考えます。

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