北海道大学2023年総合入試(理系)[4]

問題

解答

$${1\leqq a_1\leqq 6}$$ より $${|1-a_1|=a_1-1}$$ である.
同様に, $${|a_n-6|=6-a_n}$$ である. よって

$$
K_n = 5+a_1-a_n+|a_1-a_2|+\cdots+|a_{n-1}-a_n|
$$

である.    ここで

$$
J_n = a_1-a_n+|a_1-a_2|+\cdots+|a_{n-1}-a_n|
$$

とおく.

$${|a_1-a_2|\geqq a_2-a_1}$$ だから $${J_2=a_1-a_2+|a_1-a_2|\geqq 0}$$ が成り立ち, 等号が成立するための必要十分条件は $${a_1\leqq a_2}$$ である.
さらに $${k=2,\dots,n-1}$$ において $${a_{k}-a_{k+1}+|a_{k}-a_{k+1}|\geqq0 }$$ だから

$$
\begin{array}{rcl}
\displaystyle J_{k+1}&= & \displaystyle a_1-a_{k+1}+|a_1-a_2|+\dots+|a_{k-1}+a_{k}| +|a_{k}+a_{k+1}|\\
&= & \displaystyle a_1-a_k +|a_1-a_2|+\dots+|a_{k-1}+a_{k}|+a_k-a_{k+1}+|a_{k}+a_{k+1}|\\
&=& \displaystyle J_k+a_k-a_{k+1}+|a_{k}+a_{k+1}|\geqq J_k
\end{array}
$$

が成り立ち, 等号が成立するための必要十分条件は $${a_k\leqq a_{k+1}}$$ である.

したがって

$$
K_n=5+J_n\geqq5+J_{n-1}\geqq\cdots\geqq5+J_2\geqq5
$$

が成り立ち, 全ての等号が成立するための必要十分条件は

$${a_1\leqq a_2\leqq\cdots\leqq a_n}$$

である.   よって $${q_n=5}$$ を得る.

(1)

さいころの目 $${a_1, a_2, a_3}$$ が $${a_1\leqq a_2\leqq a_3}$$ を満たすような場合の数は $${1}$$ から $${6}$$ までの自然数を重複を許して 3 個選び,
小さい順に $${a_1, a_2, a_3}$$ と定める場合の数に等しい.   よって, 場合の数は $${{}_6{\mathrm H}_3={}_8{\mathrm C}_3=56}$$ に等しく, $${K_3=5}$$ となる確率は $${\displaystyle \frac{56}{6^3}=\frac7{27}}$$ である.

(2)

これまでの考察により $${q_n=5}$$ であり, 求める必要十分条件は $${a_1\leqq a_2\leqq\cdots\leqq a_n}$$ である.

(3)

$${L_n=K_n+|a_4-4|\leqq q_n+|a_4-4|=5+|a_4-4|\leqq5}$$ より $${K_n=5}$$ かつ $${a_4=4}$$ のとき $${L_n}$$ は最小値 5 をとることがわかる.   $${L_n=5}$$ となるための必要十分条件は $${a_1\leqq a_2\leqq a_3\leqq a_4=4}$$ かつ $${4=a_4\leqq a_5\leqq\cdots\leqq a_n}$$ である.

$${L_n}$$ が最小値をとるようなさいころの目の出方の場合の数は $${1}$$ から $${4}$$ までの自然数を重複を許して 3 個選び, 小さい順に $${a_1, a_2, a_3}$$ と定め, $${a_4=4}$$ とし, $${4}$$ から $${6}$$ までの自然数を重複を許して $${(n-4)}$$ 個選び, それらを小さい順に $${a_5, \dots a_n}$$ と定める場合の数に等しい. 場合の数は

$$
{}_4{\mathrm H}_3\cdot {}_{3}{\mathrm H}_{n-4}
={}_6{\mathrm C}_3 \cdot{}_{n-2}{\mathrm H}_{n-4}
=20{}_{n-2}{\mathrm H}_{2}=10(n-2)(n-3)
$$

であり, 求める確率は $${\displaystyle\frac{10(n-2)(n-3)}{6^n}}$$ である.

独り言

絶対値を扱う上で最も重要で頻出の不等式は三角不等 $${|a|+|b|\geqq|a+b|}$$ である.   三角不等式を変形して得られる不等式
 $${\left|\rule{0mm}{3mm}\,|a|-|b|\,\right| \leqq |a-b|}$$  もたまに見かけるが,  場合分けをして三角不等式を使えば直接この不等式を使わなくても同様の議論ができる.   この問題では最も基本的な不等式 $${|a|\geqq a}$$ があれば事足りる.   入学試験の問題のようなレベルで三角不等式を使わなくても解ける問題は珍しいと思われ, 紹介する価値があると感じた.   もっとも, 初見で問題を解くときには著者も三角不等式を使用して解いている.   証明を記述する際に議論を整理する過程で三角不等式が不要であることに気がついたというのが実情であり, 三角不等式のありがたみを減じるものではない.

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