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ネイピア数

自然対数の底として使われるネイピア数 $${e}$$ の定義について解説する.

数列 $${{a_n}}$$ が全ての自然数 $${n}$$ について $${a_n\leqq a_{n+1}}$$ を満たすとき増加列であるといい, 逆に, 全ての自然数 $${n}$$ について $${a_n\geqq a_{n+1}}$$ を満たすとき減少列であるという.  また, ある実数 $${M}$$ が存在して全ての自然数 $${n}$$ において$${a_n\leqq M}$$ を満たすとき, 数列は上に有界であるといい, 全ての自然数 $${n}$$ において $${a_n\geqq M}$$ を満たすとき, 数列は下に有界であるという.

上に有界な増加列は収束する. これは実数の連続性に関する公理の一つであり基本的な事実である. 実数の連続性に関して多くの微分積分学や位相空間論等の書籍で述べられているが詳しく知りたい読者のために鈴木([4])を挙げておく. この記事では上に有界な増加列 $${{a_n}}$$ は収束し,
その極限値 $${\displaystyle\alpha=\lim_{n\rightarrow\infty}a_n}$$ については, 全ての自然数 $${n}$$ において $${a_n\leqq\alpha}$$ が成り立つことと, どんな小さな正の数 $${\varepsilon}$$ に対しても $${a_n>\alpha-\varepsilon}$$ が成り立つようにできること仮定する. また、下に有界な減少列につても収束することやその極限値についても同様の事実がなりたつことを仮定する.

定理1  数列 $${{a_n}}$$ と $${{s_n}}$$ を

$$
\begin{array}{rcl}
a_n &= &\displaystyle \left(1+\frac1n\right)^n \\[3mm]
s_n &= &\displaystyle \sum_{k=0}^n\frac1{k!}
=1+\frac1{1!}+\frac1{2!}+\frac1{3!}+\cdots
\end{array}
$$

とする.
     (1) $${{a_n}, {s_n}}$$ は増加列である. 
     (2) 全ての $${n}$$ について $${a_n\leqq s_n}$$ を満たす.
     (3) $${{s_n}}$$ は上に有界である.  (2) より $${{a_n}}$$ も上に有界である.
     (4) (1) と (3) より $${{a_n}, {s_n}}$$ は収束し, $${\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}a_n=\lim_{n\rightarrow\infty}s_n}$$ が成り立つ.
$${\displaystyle e=\lim_{n\rightarrow\infty}a_n=\lim_{n\rightarrow\infty}s_n}$$ をネイピア数という.

上の定理は小平([3]), 青本([1]), 加藤([2]) でも示されている.

参考文献

[1] 青本和彦. 微分と積分1, 現代数学への入門, 第1 巻. 岩波書店, 東京, 2003. ISBN-13: 978- 4000068710.
[2] 加藤十吉. 微分積分学原論. 培風館, 2002. ISBN:4-563-00294-1.
[3] 小平邦彦. [軽装版] 解析入門I. 岩波書店, 1991, 2003 軽装版. ISBN: 4-00-005192-X.
[4] 鈴木晋一. 集合と位相への入門— ユークリッド空間の位相—. ライブラリ新数学体系E1. サイエンス社, 2003. ISBN10: 4-7819-1034-3.

証明

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