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君の声は

最近、彼女が夢の中に出てくる。
その夢では、私と彼女が勿忘草のような花が咲き乱れていた。
内容は忘れたが、何か約束を交わしているようだった。

私の顔はどうか分からないが、夢の中の彼女はどの勿忘草よりも綺麗で、どれよりも暖かいお日様のような声で私を呼んでくれた。


それだけは夢から覚めても、覚えていた。
絶対に忘れたくなかった。

人というのは亡くなった人を声から忘れていくらしい。
そんなことを誰かから聞いた。
最初聞いたときは、

「そんな馬鹿な。彼女の声なんて覚えていられるだろう。」



そう、ほざいていた。
私が彼女の声を忘れるはずがないと。

だが、現実は違った。
数ヶ月後の今、また彼女との夢を見る。
だが、もう彼女の声が聞こえない。

本当に、私はあの言葉の通りになってしまった。
記憶の中から彼女の声が遠ざかり、私の中から消え去ってしまったのだ。

朝起きると、私は泣いていた。
彼女のことはまだ好きでいられるのに。
なぜ彼女の声を録音しなかったのか。

なぜ、もっと彼女と色んな話をしなかったのか。そんな後悔が私に迫る。


しかし、後悔してももう遅いのだ。


私の中の彼女の声は、もう何も聞こえない。
しかし、彼女の姿はまだ分かる。
彼女との写真はまだ残っているからだ。



私は、これからのまだ長い人生を彼女の声ではなく、彼女との写真と好きな花である勿忘草だけで生きていくのだ。

-終-


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