【取材した怪談話162】失恋物件
「今になってみれば、ネタみたいな話なんですが」
精悍で端正な顔立ちの俊輔さんは、穏やかな口調で話し始めた。
ある年の春、学生だった彼は東京都内の某マンションのX階に住み始めた。都心まで一本で行ける利便性の良い駅から徒歩五分のマンションで、間取りは典型的な縦長のワンルームだ。立地条件や家賃などを当時のバイト先の先輩に話したところ、「いくらなんでも条件が良すぎるだろ。事故物件だよ、絶対」と断言され、「調べといてやる」とまで言われた。賃貸借契約の際に不動産屋からは特に何も聞いてお