手紙

前略
本当に色々とお世話になりました。
下では味わったことのない感情でした。
決して私達の間では起こらない同じ立場としての連帯感、そこに私の羨望という感情から発展した私にとっては本当の恋でした。
少しの間、私は毎日声を聴いたり、会えていたこの時間を失った寂しさに心を痛めるかも知れません。でも、そんな時はあなたが私に吹き込んでくれた命の在処を見ることにします。
そこに私達2人だけの関係を見つけて、その寂しさを昇華していくことができると思っています。
そして、いつか下で穏やかに過ごせる数分を楽しむことができるようになるでしょう。
いつか下で会えなくなる時が来たとしても、同じように今のこの想いを懐かしむことがきっと来ると信じています。
下では以前と同じように、ほぼあなたとしか会わない数分があるのだと想像しています。もうこの羨望から恋に発展した時間は、二度とないという気がします。
あなたの香水の香りが何だったか知ることができないまま、この時間が終わってしまうことだけが心残りとなりそうです。数々の愛おしい時間を無駄にしてしまった私を、今は少し恨んでいます。
でも、あの日の心臓の鼓動は決して忘れることはないでしょう。あなたが私に新しい命を吹き込んでくれたその奥で密やかに、確かに刻んでいた鼓動を…悲しくなった時は、この思い出に浸ることにします。
決して交わることのないこの恋に気づかせてくれて、ありがとうございます。これからもう少しだけ、あなたとの新しい時間を私に分けて下さい。
草々
私からあなたへ

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