みじめな少年は。

いつからか、自分を惨めに思っていた少年は、「僕はここだよ、早く見つけてよ」と、
そればかりを願ったけれど、
口をついて出てくるのは、悪態ばかり。

何を思い出しても、悲しくなるから、
彼にはもう帰る場所もなく、
きっと誰かの呆れ顔にも見飽きたから、
諦めに取り残されることもなく、
みすぼらしく、俯いて笑う。

「僕はここだよ、早く見つけてよ」
ただひとこと、それだけで救われたはずの、
彼にできることといえば、
時間の流れに取り残されること。
時が止まったままの、冷たいお米を頬張りながら、がらんどう、まるで彼の過ごしてきた人生そのまま、からっぽの。

いつかの映画の台詞。
「いつか、誰かにぎゅっと抱きしめられていたら、きっと…」彼女はそれ以上は、話さなかった。
「僕はここだよ」
ことばだけが取り残されて、ひびく。
「誰かいませんか?」
「誰か聞こえてはいませんか?」

冷えっぱなしの身体。
もうずいぶんと誰とも話してさえいない。
季節がいつで、いまどこにいるのかさえ。
でもこれだけは諦めずに、ついに悲鳴のように叫んだ。
「僕はここだよ、誰かいませんか?」

気付くと、僕は僕を見ていた。
誰もいない部屋でひとり。
僕は僕を見る。相変わらず、みすぼらしい、
変わらず惨めな姿の僕。
気付く、傷つきながら、気付く。
こうしてまた崩れながら、それでも叫ぶことができるのは、僕しかいない、僕でしかない、僕しかいない。
「僕は君の前にいるよ」

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