女風を利用したきっかけと乳がんのこと

女風を利用することになった大元のきっかけは、夫がモラハラだったことである。

10年もの間、夫のコントロール下にいて、「夫が怒るのは、私が悪いから。私さえ我慢していれば、家族はうまくやっていける」と思っていた。

私の両親は異様に夫に気をつかう私を見て、変わってしまった娘の様子を見るのが辛かったと後に語っていた。

徐々にとける呪縛

それまでは、自分が全部悪いと思っていたのだが、だんだんと夫の対応について理不尽に感じるようになってきた。

友人に相談すると、「変わったね。前は全部自分が悪いの、と言っていたのに。あなたが言うような態度をダンナさんが本当にしてるのなら、我慢することないよ。おかしいと思う。ただ、私があなたのダンナさんに会っているなかで、そんな言動をする人に思えなかったから意外だったよ。」

ここがモラハラをする人間の肝とも言える。外面がいいのである。私の友人がくれば、愛想よく出迎える。まさか、こんな夫が恐怖のどん底に突き落とすように怒鳴り、人格を否定するとは誰も思うまい。

病気の発覚

夫のおかしさに気づき、小さいながらも夫に対し反発するようになってきたころ、健康診断でひっかかった。健康診断の結果には、精密検査を受けるようにと書いてあった。

自分が病気な訳がないと、とにかく早く否定したくて、検査を受けた。

「細胞診なので、正確なガンのタイプはわからないが、乳ガンであることはほぼ間違いない。手術が必要になるので大きな病院に紹介状を書きます。」

頭が真っ白になった。子どもはまだ小学生。残して死ぬことなどできない。針生検、MRI、CTなど続々と検査を受け、転移の心配はないことがわかり、手術日が決まっていった。

注)針生検は細胞診よりも太い針を使い、組織をより多く取り出すことができる。そのため、細胞診よりも正確な診断ができる。

そして入院することになるのだが、結婚して以来、一週間以上家族と離れて一人の時間を過ごすのはこれが初めてだった。嫌でも自分自身と向き合うことになり、これが本当に大事な時間だった。

手術も無事に済み、リハビリも順調で退院が見えてくると、精神的に不安定になっていった。家に帰るのが怖くなったのだ。子どもはかわいいし私の不在を寂しがっていたが、モラハラ夫のもとに帰るのが恐怖で仕方なかったのだ。

私はパニックに陥り病室で号泣し、看護師さんのすすめで臨床心理士さんのカウンセリングを受けることになった。自分の気持ちを洗いざらい話し、退院後もカウンセリングを継続させてもらうことにして、家に戻った。

余談であるが、乳ガン患者の方で家族の問題を抱えている人は結構いるそうだ。そのため私の入院していた病院では、カウンセリングなどサポート体制がしっかりしていた。

温存手術であり、傷跡もきれいではあったものの、手術した側の乳房は自分のものとは思えなくなっていた。また、夫と今までのことについて向き合い、話し合いを続けていたものの、夫を受け入れる気持ちは持てないまま時が過ぎていった。

女風と出会う

乳房のことと夫へのわだかまりで、したいという気持ちも起きず数年が過ぎたのだが、ふと性的に満たされたいという気持ちが起きた。そんなときに見つけてしまったのが女風だった。

いっそお金で解決してしまえ、と今までの自分では考えられない発想でもって女風を利用したのだが、安易に手を出してはいけないものだったと今は思っている。なぜなら依存性の高いサービスだからだ。一度利用すると、なかなか止められない。

利用し始めたばかりのころは、自分にブレーキをかけることに必死だった。とは言え、仕事や家事、育児で物理的に私が自由に動ける時間は限られていた。嫌でも無茶な利用ができない状況だったことは自分にとって幸いだった。そうじゃなかったら、もっと苦しんでいたと思う。

現状の自分

ただし私にとってはいいこともあった。「いつまでもこんなことをしていていいのだろうか?」と自問自答し、夫と和解する道を選べたことだ。

私が拒絶し続けたこの数年の間、夫は変わり、誠実に接してくれていたのだ。それでも長年の積もり積もった恨みと、もしかしたらまたモラハラが復活するかもしれないという恐れから、許し、受入れることができないでいたのだ。

和解のきっかけが女風ってどうなのよ?と思われるだろうけど、どんなきっかけであれ、一歩前に進めたのだから自分ではよしとする。

問題は、女風の利用をきっぱりと止めれられないこと。利用する回数や時間については上限を決め、仕事や家事、金銭面に支障が出ない範囲でしか利用していない。

「支障が出てなくても倫理的にダメだろう」という常識的な自分と「楽しめるときに楽しめばいい」という悪魔な自分がいて、悪魔な自分に負けているのが現状だ。

最低限のルールとして自分に課しているのは、マッサージは利用せず、あってお話だけすること。依存性の強いマッサージを回避することで、徐々にフェードアウトすることを狙っている。

女風の肝であるマッサージを利用しないってどういうこと?と思われそうだが、話をするだけでも十分おもしろくて楽しい。ただし、マッサージをお願いしてしまいたい、と葛藤はしている…。

ずっと同じ人を指名しているのだけど、いずれはセラピストの仕事を止めるときが来るのだから、会えるうちに会っておこうと思ってしまう自分がとても厄介だ。別の人を利用する気は全くおきない。

早く足を洗うことができるのか。それとも、今のセラピストさんが止めるまで利用し続けてしまうのか…。

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