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ひとりぼっちのくろ_5

甲板の上で毛づくろいしていると、空から声をかけられた。
「くろ!なんだって、こんなところにいるんだい」
「あっ、ホーホ。アイちゃんの家、出てきたんだ」
「えーっ、せっかくいい人間の家を見つけたってのに」ホーホは残念がった。
「ごめんね。アイちゃんは優しくしてくれたけど、くろはずっと家にいるわけにはいかないの。だって、灯台島に行かなきゃ」
「うむむ」ホーホは甲板に降りて来た。

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「ねえホーホ、人間と暮らせば幸せになれるって言ったよね。でも、くろは、くろが幸せかどうか、よくわからなかったの。幸せってどういうこと?」
「まだ赤ん坊だと思ってたら、哲学的なこと考えてるんだな。幸せっても、いろんな幸せがあるだろうけど、今のおまえの幸せは、お母さんを見つけることなのかも」
「くろもそう思う。灯台島に帰って、お母さんを探したいの」
「でもなぁ、漁師たちが話してるのを聞いたけど、灯台島は、この間の嵐で、たくさんいた猫が一匹もいなくなったそうだよ」
「どこに行けば、お母さんたちに会えるかなぁ」
「わからないが、…聞いた話じゃ、猫だけが暮らす”猫島”ってのがある。捨て猫もはぐれ猫も、みんなその島に集まるってよ。もしかしたら、その中に混じって暮らしているかも。どうだい、行ってみるかい?」
「いく!」
「よし、そうと決まれば、この船とは逆方向だ。つかまれ」
ホーホは、くろを乗せて飛び立った。

船が目的地の桟橋に着いても、くろが降りてこないので、連絡船の船長さんは首をかしげたのだった。

(つづく)

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