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人を傷つけるものは刃物だけではない。_映画「シザーハンズ」を観て。


「雪はどうして降るの?」

少女の無垢な質問から始まるこの物語。
1990年に公開されたジョニーデップ主演のアメリカ映画「シザーハンズ」

一度は見ておきたい不朽の名作。

純粋な心を持つ、両手がハサミの人造人間。発明家の博士が急逝したことで、彼は人里離れた屋敷でひとり寂しく暮らしていた。そんなある日、化粧品セールスの女性が彼のもとを訪ねてくる。やがて彼女の自宅に迎えられた彼は、その家の娘に恋をする

シザーハンズ あらすじ

あらすじだけ見て、人々に気味悪がられる悲しい物語なのかなと安直な推測を立てて再生ボタンを押した。

なんだ、この悲しくて、優しくて、暖かくて、苦しくて、心が切り刻まれる作品は。あと、ジョニーデップが天才すぎる。人として生きてきて、あの表情や動き、感情の表し方ができるものは彼以外にいるのだろうか。両手がハサミの人造人間。その人生を歩んでいなければできないであろう表情や息遣い。彼が演じるからこそ、この作品はここまで名作であるのだと感じるほどだった。

この物語を通して感じたものは社会の醜さだ。
民衆は彼を不審がりながらも興味津々に尋ねる。自分達に有益であると判断した途端、いいように使い始める。自分に都合が悪くなると、一瞬で捨て去り彼を非難し始める。挙句、城へと追いやり最後には捕まえろだ、殺せだ言いたい放題だ。

一方、純粋なエドワードは家族の温かさに触れ心を許していく。
私はこの描写にものすごく心を打たれた。ペグが家に彼を連れてきた時、家族はもっと彼に対して怯えたり驚いたりするものだとばかり思っていた。そう思い込んでる時点で、自分が彼を目の当たりにしたらそいう態度をとってしまうのだとゾッとした。

彼の優しくて純粋な姿がとても愛おしかった。
どれほど追い詰められて、避難されても、犬の目にかかってしまっている毛を切ってあげるところは特に彼の心の底からの優しさを感じられるシーンだと思う。

民衆は、声が大きい。大きい声に惑わされ、私たちは真実を語る小さな声が聞こえなくなってしまう。美容院裏でのジョイスの行いや、ジムの強盗事件のように。声がでかい者の意見が正解へと成り代わり、真実がどれかわからなくなる。

現代でも同じことが言えるだろう。私たちは誰の言葉を聞き、何を信じて生きていけばいいのだろう。この物語を通して、情報を聞き分ける能力とはこれほどにも重要で、それでも使いこなすのが難しいと痛感させられた。

物語のラスト、演出にものすごく心が打たれた。彼は今でもキムの笑顔のために、彼女を喜ばせるために雪を降らせ続けている。あの孤独な城で一人寂しく、いや寂しくても、心細くはないのかもしれない。彼女を思いながらハサミを操る彼の顔には優しい笑みが浮かんでいたから。

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