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るきさん

母の本棚に唯一ある漫画が「るきさん」でした。

正確には唯一ではなく、高野文子先生の漫画が他にも数冊あったみたい。大人になって気がついた。

るきさんは都会に住む素朴な女性。
流行りに敏感なお友だち、えっちゃんとは対照的に、のんびり倹約家で、力まずに自然に生活している姿がとても魅力的。こんな風に暮らしていけたらいいなぁと思う。

るきさんは1ヶ月分の仕事を1週間でこなし、あとは図書館に行ったり、喫茶店で焼きそばパンを食べたり、趣味の切手を集めたり…
そして月末に、「今日終わりました」と報告してお給与をもらう、という生活をしている。なんて羨ましい!

どのお話もサラサラと読みやすい。喫茶店で珈琲と一緒に、もしくは電車に揺られながら読みたい漫画。

るきさんは最後、仕事を辞め、趣味の切手を売り払い、東京を離れてナポリに旅立つ。いつも通りの明るい雰囲気のお話なのに、初めて読んだ子どもの頃、なんだか凄く寂しかった。えっちゃんと離ればなれになってしまって、今までの素敵な暮らしが終わっちゃう気がしたのかな…

大人になって、本屋で「るきさん」の文庫本を見かけて購入した。改めて読んでみると、るきさんは少しわたしの母に似ていた。母にそのことを伝えると、「るきさんが連載されてたHanakoは、東京の流行りのお店とか食べ物が載っていたんだけど、るきさんみたいに生きても良いんだなぁって思ったの」と。

「るきさん」は遠くへ行ってしまったけど、たぶんこれまでと変わらず、ごはんを食べて、図書館に行って、お散歩して、変わらない生活が続いてるんだろうなあと、今は思うようになりました。きっと、えっちゃんとの関係も続いてるはず。

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