皆既日食の継続時間について 速報版

はじめに

来たる2024年04月08日(月), アメリカ合衆国(※以下アメリカ)で皆既日食が見られます.
アメリカで見られる日食としては半年ぶり, 皆既日食としては2017年以来7年振りです. この数字を聞くと, アメリカでは意外と頻繁に起こっているように感じられるかもしれません.
しかし, 2017年の前の皆既日食は1979年と, 38年も空いていました. 広大なアメリカですら, 半世紀弱も皆既日食が見られていなかったのです. 2024年の次の皆既日食は2044年ですので, 貴重なチャンスと言えます. 
また, 今回の皆既日食は4分以上続く立派なもので, アメリカの皆既日食としては過去100年間で最も長いです.
ここ最近では昨年2023年にも金環日食がアメリカで見られたため, 日食ラッシュと呼びたいぐらいです.
では日本はと言いますと, 今2020年代は絶賛空白期間です. 昨年2023年04月20日に南日本で小さな部分日食が見られましたが, その後は2030年までは微々たる日食を含め, 一切日食が見られません.
2024年はそれに加えて月食もありませんから, 次回に向けてじっくり計画を立てられる貴重な期間となりそうです.

最長の皆既日食

問題

2024年の皆既日食は4分以上続き, アメリカで見られる皆既日食としては, 過去100年では最長です.

では, 世界で最も長い皆既日食はどれくらい続くでしょうか. 以下の四択で選んでください.

1番 5分30秒
2番 7分30秒
3番 9分30秒
4番 11分30秒

以上

答え

2番 7分30秒

2186年07月16日(アポロ11号打ち上げから丁度217年!!)に, 大西洋で起こります.

皆既日食の長さを決めるもの

皆既日食の長さには, いくつかの要因に左右されます.

太陽-地球間の距離

地球が回っている軌道は楕円形なので, 太陽と地球の距離は僅か (3%程度) ですが変化します. 小寒 (1月上旬) の頃に最近となり, 太陽が最も大きく見えます. 小暑 (7月上旬) の頃に最遠となり, 最も小さく見えます.
太陽の見かけの面積が小さい方が月に覆われやすいため, 1月頃よりも7月頃の方が有利です. 

月-地球間の距離

これが主要因でしょう. 月の軌道は円形ではなく楕円形であるため, 太陽-地球間と同じように, 月-地球間の距離が変化します. 最も近いときで約357,000km, 最も遠いときで約406,000km です.
月が最も遠いときは, 月の見かけの大きさが太陽よりも小さくなるため, 金環日食となります.
月の見かけの大きさが太陽を上回ると, 皆既日食となります. 月が地球に近いほど, 太陽を覆いやすくなり, 皆既日食も長く継続します. ケプラーの第二法則より, 月が地球に近いと月の公転が速まり, 継続時間が短くなるのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません. しかし, 公転速度は最大で2割以下しか変わりません. そのため, 月の見かけの大きさの変化の方が, 皆既日食の継続時間に大きな影響を与えます.

太陽・月の高度

地球は球体なので, 同じ昼側でも, 太陽や月までの距離は異なります. 
しかし, 太陽は遠いため, 見かけの大きさは地球上何処でも同じとみなせます. 前述の通り, 月が大きく見えるほど皆既日食に有利であるため, できるだけ高く見える場所 (天頂が最高) を選べば, 月に最も近くなります.

観察者及び月の動き

地球の自転によって, 観察者が動きます. もちろん, 月も公転によって動きます. 月の公転と同じ方向に観察者が動けば, 月の影を追いかけることができて, 皆既日食はより長く続きます. 両者が違う向きの場合, 月の影を追いかけないため, 太陽と月はすぐに離れてしまいます. 

観察者の動き1 観察地の緯度

赤道に近い (緯度が低い) ほど, 地球表面上では速く動きます. 逆に, 北極や南極では, 自転によってほとんど動きません.

観察者の動き2 地軸の傾き

地軸が傾いているので, 太陽・月側から見ると, 観測者の動く方向は季節によって変わります.

月の動き1 月の公転面の傾き

月の軌道は, 地球の公転軌道に対しておよそ5度傾いています. そのため, 毎月日食が起こるわけではありません. たまたま日食が起きた場合でも, 公転軌道は傾いているので, 日食前後では, 月が北 (南) から南 (北) 側に動きます.
月の動く向きと観測者が追いかける向きが近い場合, 皆既日食が長く続きます. 両者が異なると, 皆既日食は短くなります.


おわりに

以下のポスト (X/Twitter) は, アメリカのホテルの予約状況を示したものです.

見事に皆既帯に沿って満室になっていることが分かります. また, ホテルの宿泊料が普段の2倍以上に膨れ上がっているという報告もあります. 経済は天文現象によっても大きく左右されるようです.

2012年の金環日食では, 日本で日食グラスが飛ぶように売れたそうですが, 2030年の北海道金環日食や2035年の皆既日食のときも同様の事象が起こるか注目したいところです.

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