最近読んだ本の書評と感想(前編)―備忘録としてー
お久しぶりです、メシロです。最近文章を書く時間が取れず、下書きに途中まで書いて放置を繰り返してました。すんません。
最近(去年と今年)読んで面白かった本を、自分の備忘録もかねて紹介します。ちょくちょく斜め読みしてるので、解釈が間違っていたり、途中までしか読めてない本も多々あるので、その点ご容赦いただければと思います。
わらの犬 ジョン・グレイ
まずはこれ。無類の本好きである父親からおすすめされて買った一冊。西洋世界の基本的な価値観であるヒューマニズムについて、幻想に過ぎない、「人間も、地球の平穏を乱せば容赦なく捨てられるだろう。」とバッサリ切り捨て、いかに人間がちっぽけで思い上がった存在かを説いた本。一言で言えば「人間調子乗るなよ」っていう本。正直身も蓋もないし、夢もかけらもないダークな本だけど、謙虚な気持ちにさせてくれる本でした。面白かったです。
印象的なパート:
もう闇堕ちしたグレタだろこれ。
EV.Cafe 超進化論 村上龍、坂本龍一
大学の授業である先生がお勧めしていて、面白そうだったので買ってみた一冊。言い方を選ばずいうとスノッビーな文化人があーだこーだ語る本という感じ。この頃の坂本龍一尖ってんな〜って思いながら読んでました。あと彼の音楽への向き合い方も面白い。ただいうまでもなく、教養のある人々による対談本だから、いろいろ考えさせられるし、示唆に富む本でした。章ごとに各分野の代表的な研究者を呼んで対談してて、面白かったですね(正直当たり外れはあったけど)。個人的にはサル学の権威である河合雅雄さんと二人の対談が面白かったですね。
印象に残ったパート:
個人的な印象としては、坂本龍一は歌声も楽器の一つとして扱っているのかなって。現代の洋楽(ポップ)的、そしてオートチューンを使ったヒップホップの考え方にも通ずる部分がある気がしますね。(もし本人がこれ読んだら否定するしブチ切れると思うけど)
恥知らずのパープルヘイズ 上遠野浩平、荒木飛呂彦
ジョジョの奇妙な冒険シリーズ第5部のスピンオフ小説ですね。通称恥パ。
たまたま寄った本屋に置いていたので、ジョジョファンとしては読まねばッ!という気持ちになり購入。本編では早々に退場してしまったフーゴにスポットライトを当てた作品で、著者は「ブギーポップは笑わない」で有名な上遠野浩平です。感想ですが、この作品のフーゴの扱いは解釈一致。あとフーゴがミッションを終えた後の後日譚に他の5部メンバーの回想とか出てくるのが良かった。あと毎度の事ながらラスボス(ドーピングニキ)の能力チートだろ。
印象的なパート
ジョジョって悪役だろうが脇役だろうが、それぞれの哲学をもってて、それをカッコよく言わせるのが魅力の一つだと思うんですよね。そこにシビれる!あこがれるゥ!
だからこれ読んでる人、これだけ覚えて帰ってください。ジョジョはバイブル。
金は払う、冒険は愉快だ。 川井俊夫
古道具屋を営んでいる著者による私小説。独特の文体、そして言うなれば野生味があって愚直な著者の個性が全面に押し出ていて、めっちゃ面白かったです。強烈な読書体験になる事間違いなし。
印象に残ったパート
終始こんな具合で、文体は平たくて、頭にスッと入ってくるけど、入りやすい分、言葉の強さで拳を食らったような感覚になる。良書。
私たちはどこから来て、どこへ行くのか 宮台真司
日本を代表する社会学者の一人である宮台真司氏による一冊。恥ずかしながら、なんとなく食わず嫌いでこの人の言説を避けていたのですが、読んでみるとめっちゃ面白い。宮台さんらしく、独自の用語や解釈をポンポン出してくるからついていくのは少し大変だけど、この人の論ずるフィールドや見識の深さにはただただ驚かされます。そしてこれが社会学者のあるべき姿だなって思うんです。物事をミクロで深く捉えた上で、マクロな視点にも耐えうる言説を創る。もっとも、システマティックに、そして断定的に論ずるが故にズれてるんじゃないかというポイントもあったりするけど、社会学を学ぶ者として、この「深く、狭く」というこの姿勢は尊敬します。(だからこそ最近の姿勢が残念でならないとも思ってしまう)
印象的なパート
個人的には、サブカルについて論じた章の中で、2000年代、謂わゆるナイトクラブに変革が起き、それまでは入りにくかったクラブが、イケてない高校生や予備校生や大学生が一人でやってきて踊れる場所になり、日常的な癒しの場となることで、こうしたクラブが彼ら彼女らの日常の場となり、家や学校が非日常となる。と説いたこの上記のパートが面白かったですね。これほんまけ??って思って、クラブ行ってる友達の何人かに聞いてみると、当たらずも遠からずといった具合に、こうしたクラブがある意味でそうした側面を持っていることがわかって、やっぱり彼の研究は緻密で面白いなって思いました。あと最近不倫スキャンダルで騒がれてるけどこれ読んだら「だろうな」って感想しか湧かなかったよ
音楽は自由にする 坂本龍一
本屋で追悼として置かれていたので購入。もともとあまり彼の音楽も知らなかったのですが、「教授」の半生や考え方が詰め込まれていて、面白かったです。あと、彼の気難しい拘り、例えば、「これはこうでなければならない」とか、在るモノに対する強烈な嫌悪感や、反抗心が自分にソックリで、結構共感できました。(僕がめんどくさい人間ていうのがバレてしまうな)
印象に残ったパート
あまり本筋には関係ないパートなんですけど、僕はこの言葉がすごく響いて、しばらく考えさせられました。まだこうした死別は経験したことはないけど、いつかはくるものだし、死別でなくても何かの拍子に、いかに相手のことを知っていた”つもり”だったのかと思わせるモーメントが多々あって、その度に分かったような気でいた自分が嫌になる。これも学びですよね。
ちなみに坂本龍一の好きな曲はこれです。
音を組み立てて構成しているのがいい感じ。そしてメロディーセンスが天才。あとE.VCafeにもあったように、ナレーションや歌声も割かし適当というか、とりあえず嵌め込んでみた感じも嫌いじゃない。
バウハウス百年百図譜 伊藤俊治
バウハウスデザインがもともと好きだったのですが、改めて勉強したいなとおもって購入。この本はバウハウスのデザインだけでなく、それを取り巻く歴史、思想、哲学や学校としてのバウハウスについても網羅しており、勉強になりました。如何にバウハウスという思想が現代のプロダクトデザインや建築に影響を与えているかも学べて、面白かったですね。ただバウハウス的な美しさを持つものはごく少数だなとも。ちなみに、個人的に好きなバウハウスプロダクトはマルセルブロイヤーのワシリーチェアです。これ世界最初のスチールパイプ椅子なんですけど、そうとは思えないカッコ良さがあるんですよね。
印象に残ったパート
バウハウスデザインの名作って呼ばれるモノの特徴って、シンプルだけどつまらない訳では決してないんですよね。これぞ機能美というか。
紀州のドンファン殺害「真犯人」の正体 ゴーストライターが見た全真相 吉田隆
最後に紹介したいのはこの本。何故今??という感じですが、少し前にこの動画をYoutubeで視聴したのをきっかけで買ってみました。
この動画もそうですが、この人のエピソードトークする動画、めちゃくちゃ面白いんでぜひ見てください。
この本の解説に入りますと、もともとこの本の著者は大韓航空機爆破テロ事件の犯人(北朝鮮のスパイ)の居場所を突き止めたりしている凄腕の週刊誌記者で、あるきっかけから紀州のドンファンと仕事・プライベートを超えた関係を築いていたのですが、その矢先に事件が起きてしまった、という経緯です。この本の出版時点では犯人とされている奥さんは逮捕されていなかったのですが、それをうかがわせる描写や背後にいる存在がほのめかされていて、かなり闇が深い事件だなと。あと単純にドン・ファンが規格外すぎる人間なんで、随所に挟まる彼の話が面白かったです。
印象に残ったパート
前述のとおり、当時22歳だったドンファンの妻が逮捕される前に記された本なんですけど、僕も本を読み通して思ったこととして、「これ奥さんの背後に誰かしらいるのでは???」って思ったんですよね。
そしてこれ以外にもアプリコ(ドンファンの会社)の取締役で友人とされている人物が突然、「ドンファンの遺言書を持ってる」と主張し始めて法廷で揉めたり、さっちゃん(逮捕された妻)が事件前から付き合いのあった、ある弁護士事務所が金銭目当てに、事件後に遺産整理や、「釈明のために一緒に出よう」と番組(バイキング)の出演をそそのかして事件に介入してきたり、ほかにも社長が脱税目的で隠していた現金2億円が事件後に会社の金庫から消えていたりと、あまりにも不可解な出来事が周りで多発してるんですよね。陳腐な感想ですが、お金は人を変えるんやなって。
小括
もともと一本の記事にする予定だったのですが、あまりにも長くなってしまったので、前後編にまとめることにしました。自分自身本を読む時期に波があるんで、あれ、これ読んだっけ??ってなったものや、ほとんど内容を忘れてしまったものもあったんで、再確認もかねて読み直したものもいくつかありました。ここで紹介した本は万人受けするものは多くないですが、自信をもってお勧めできる本ばかりです。特に「わらの犬」,「金は払う、冒険は愉快だ」,「私たちはどこからきて、どこへ行くのか」あたりはぜひ読んでみてください。それでは。
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