117「詩」夕日
なぜか分からない
生きようと思った
なにかに引きずられるように
あの世への入り口を探していた
もがいても
もがいても糸口がみつからない
さらに重い塊になった紐がもつれて
重さをさらに増していった
運が悪いのだ
最初から決まっている運の悪さを
嘆く元気もわたしには残っていなかった
自分が自分から離れていくのが分かる
なにかがわたしの体を引きずって
暗い森の入り口に向かわせた
草原を抜けて
ゆっくり
川の辺りを歩く
自分の影が草むした土手に短く落ちている
夕日だ
なにも語らない
沈みかけた夕日の祝福に満ちた赤が
突然目に入ってくる
心の中で重い塊になっていた紐が
一瞬緩んだかと思うと
するすると抜けて
一本の華奢な光に変わった
生きてみよう
なぜか分からない
このまま生きてみようと思った
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