84「詩」これから
山肌に馬が見えたら種まきの季節
昔からの言い伝えだ
数日したら田おこしが始まる
赤茶けた田畑の下でじっと冬を耐えた
思いたちが目覚め始める
家路につく夕暮れ
ふと自転車を停める
私の影が
固い土を割って生えた雑草の上に
ふんわりと落ちる
やがて
ふさふさとした稲が
ひしめき合って日の光に
手を伸ばし始める
一枚一枚の葉先に光を集めて
稲たちは良いモノだけを身体に貯め
やがて黄金色の光に変えるだろう
これから
すべてが
始まるのだ
さて
自転車のペダルを思い切り踏んで
家に帰ろう
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