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勝手にミュージックビデオ・アワード〜その2〜

はじめに

昨日に引き続き『勝手にミュージックビデオ・アワード』です。
趣旨及び「その1」はこちら:

最優秀「フランス待望」賞: « TFTF » - La Zarra

・今月デビューアルバムが出たばかりのカナダ・ケベック出身の、本名的に多分アラブ系女性アーティスト、La Zarra。
一言で言い表すと「Trapを取り入れたエディット・ピアフ、Mylène Farmer風味」。という訳でシャンソンファンやフレンチポップファンは取り敢えず驚愕せずにはいられないはず。
また、才能ある女性シンガーがデビューする度に「ピアフの再来!」というキャッチコピーを濫用してきたフランス音楽業界(確かZAZもそう形容されていた。笑)にとっても、今度こそ本当の再来(カナダ人?だけど)なので朗報。

・更に言えば、めちゃくちゃセクシーでグラマラスなビジュアルなのに、下品にならず知性を保っている感じ(歌詞含めて)は総じて初期ビヨンセを彷彿させる。
...そんなこと可能なのかって?ビデオ観てみてよマジで!(笑)


最優秀「すごい遺伝子」賞: “No digo que no” - Rita Payés

・カタルーニャの若きシンガー兼トロンボーン奏者、Rita Payés。涼しい顔して歌とトロンボーンの演奏を自在に行き来しているが、これは並大抵のことではない(笑)
  
・加えて、クラシックギターは実母のElisabeth Roma。Bad ass過ぎて正直一瞬主役を喰うレベルの演奏技術。
  
・という訳で、この何の飾り気もない母娘が目の前で繰り広げていることの次元が高過ぎる。
ジャズとボサノヴァ、フラメンコを融合したような楽曲のオリジナリティ、ミュージックビデオのイラストレーションの素晴らしさ、などなど感覚的なことに全集中力が持っていかれてしまい、正直歌詞はあまり耳に入ってこない(パッと聞き、修復不能な恋愛関係について。笑) 
& 春からこの曲を聴き続けているけれどアーティスト情報の仔細を未だ検索できていない。
よって翻訳が後回しになるのは当然。


最優秀「アートの真髄」賞: "Ateo" - C. Tangana & Nathy Peluso

・「チーム・ラテングラミー + グラミー(結果的に)」とでも表すべきこの2人。C. Tangana はスペインのラッパー、Nathy Peluso はアルゼンチン人だけれどバルセロナベースのシンガーソングライター。 

・スペイン語で『無神論者』と題されたこの曲のミュージックビデオ撮影をトレド大聖堂で行い、加えて聖堂内でエロティックなダンスを踊り、極め付けにはNathyがヌードになった、ということで信者の猛烈な怒りを買い、最終的には司祭が辞任。聖堂ではお清めのミサ開催が決定される事態となり、そのニュースは海を渡ってここ日本でまで報じられた。

...と書いたら、あなたはどんな作品を思い浮かべるだろう?いかがわしい?ふざけている?今どきの男性ラッパーと女性歌手のやりそうなこと?
実はこれ、どれも甚だしい誤解であり、このミュージックビデオが批判している社会現象そのものなのだ。

・彼らのメッセージは、文脈を無視して全体のほんの一瞬・一部分だけを切り取った情報だけに基づき、永遠に赤の他人を批判し続けることの恐ろしさ・無意味さ。及び、他者や異文化への寛容。プロットとして非常に良く練られているし、聖書やキリスト教芸術へのリスペクト(*)に富んだ知的で社会派の作品。
最後のネタバレまで観て欲しいし、歌詞(「無神論者だったけれど、今は信じている。君みたいな奇跡は天からの贈物に違いないから」)の大意を知って欲しい。
という訳で、これこそがまさにアートの真髄、あるべき姿。

(*この聖書関連の諸々は、キリスト教文化圏でない日本において馴染みがない題材なので、後日このミュージックビデオの解説noteを別に書こうと思います。)

因みにNathy Pelusoについては別の曲を訳してあるので、もしご興味あればそちらもご覧下さい(^^)

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