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【トンデモ歯゛スターズ】ホワイトニング用歯磨き粉で芸能人の歯の白さに?
SNSを中心に「ほとんどの人が知らない、磨くだけで歯の黄ばみが取れる方法」「歯科衛生士の裏技 黄ばんだ歯が1分間磨いただけで…」などとうたい、歯磨き粉によるホワイトニング効果を強調する広告を目にする機会が多くなりました。このような広告を見ると「この歯磨き粉を使えば歯は白くなるんだ!」と思ってしまいますが、エビデンスに基づく見解ではこの情報はどのように判断できるのでしょうか?
本記事では「ホワイトニング用歯磨き粉で芸能人の歯の白さに?」について検証します。
執筆:気まぐれ歯科情報ななめ読み
チェック:2名以上のトンデモ歯゛スターズメンバー
(見出し画像:akina先生@nakixa)
トンデモ歯゛スターズ的結論
本来の歯の色より白くする方法は「過酸化物からなるホワイトニング剤」であり、歯磨き粉では着色を落とし本来の歯の色に近づくだけである。
参考としたエビデンス
抜粋
現在、歯の漂白(ブリーチ)効果が学術的に認められているものは、いずれも過酸化物からなるホワイトニング剤を使用する方法です。医薬品医療機器等法(旧薬事法)の上では、医療用具(歯科材料)とされており、歯科医師または歯科衛生士の資格を持たない者がこれを用いて施術する事は違法行為になります。
※過酸化物とは、過酸化水素や過酸化尿素のことです
②Tooth whitening: what we now know
抜粋
・メーカーの指示に従えば、過酸化水素と過酸化尿素は安全で効果的である
・患者側はホワイトニングに関連するリスク(知覚過敏等)を知らされるべきであり、専門家の助けが得られるように副作用を説明されるべきである
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④Oral Health Foundation(イギリスの口腔衛生慈善団体)の発信
抜粋
ホワイトニング歯磨き粉は着色を除去するだけで、元々の歯の色は変わらない
トンデモ歯゛スターズ的見解
SNSを中心に散見されるホワイトニング効果をうたう製品は
「歯の黄色くなる原因はステインである」
「歯科医院でのホワイトニングは高額で健康被害が多発している」
「ここまで歯が白くなった!」
などの効果を強調し、宣伝を行っているようです。
このような広告を見れば
「この製品を使えば安全に歯がもっと白くなるんだ!」
と思ってしまうものです。
しかし実はそもそも、私たち歯科医師の言う“ホワイトニング”と、一般の方の使う“ホワイトニング”は違うのです。
え?どういうこと?と思いますよね?
それを知るためには、まず歯の色が変わってしまう原因を知っておく必要があります。
①外因性:食べ物や飲み物に含まれる色素やタバコのヤニなどのいわゆるステインと呼ばれるもの
②内因性:歯の内部が変色する「内因性」のもの(加齢による色の変化、歯の神経を取ったことによる変色など)
参考: https://www.lion-dent-health.or.jp/labo/article/care/06.htm
ここでさらに、日本審美歯科学会の発信からホワイトニングという言葉の定義も一緒に見てみましょう。
「歯のホワイトニングは広義では歯に沈着した汚れや着色を除去するいわゆるクリーニングなども含めた、歯を白くする処置の総称ですが、狭義には歯の漂白(ブリーチ)のみを意味します。」
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イラスト作成:akina先生@nakixa
つまり、歯のホワイトニングと言っても
①歯の本来の色に近づけるために、歯の着色を歯磨きやクリーニングで除去すること
②歯の本来の色よりも白くするために、漂白(ブリーチング)すること
の2つの意味があるという事です。
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白い車に汚れが付いていた時に、洗車すれば(ステインを取れば)元々の白い色は出てきますが、決して元の色よりも白くはならないですよね?
塗装屋さん(歯医者さん)の出番ということです。
また、日本審美歯科学会によれば
「歯の本来の色よりも白くするために、漂白すること」が科学的根拠に基づいて認められている方法は、過酸化物からなるホワイトニング剤を使用するもの
としています。
逆に言えば
「過酸化物からなるホワイトニング剤を使用する方法以外は、歯の本来の色よりも白くする科学的根拠はない」
ということになります。
SNS上の広告を見てみると、実は「ステインを除去する」ということしか言っておらず「歯の本来の色よりも白くする」という表現は使っていないケースもあります。
ただ、使われている写真は明らかに歯の本来の色よりも白くなっているものを使っていたり、「白くなる」という点を強調し、ミスリーディングさせるような形で購入を勧めている広告が非常に多いのが現状であり、大変悪質であると言わざるを得ません。
歯磨き粉以外にもマウスウォッシュや家庭での歯のホワイトニング剤の使用でホワイトニング効果をうたう製品もありますが、これも結局は
「過酸化物」を含んでいないもの
が使用されている場合がほとんどで、あくまで「着色を除去するだけ」であり、現時点での科学的根拠に基づけば歯の本来の色以上には白くなることは考えにくいと言えます。
また、これらの製品の広告にはポリリン酸ナトリウムのホワイトニング効果をうたっているケースもありますが、こちらもステインの除去効果が期待されるのみであり、「歯の本来の色より白くする」効果はありません。
(ポリリン酸ナトリウムを含んだ過酸化物のホワイトニング剤を使用すると、その後の着色がしにくくなるという試験管レベルでの報告はありますが、論文数は少なく実際の人でも同じ結果が得られるかは断言できません。)
したがって、ネット上で購入できる製品は基本的に歯を白くするとアピールしていますが、これは
「着色を除去して歯の本来の色に戻す」
という意味であり、
「歯の本来の色以上に白くするわけではない」
ということを必ず知っておきましょう。
また、これに関連してですが、いわゆるホワイトニングサロンに関する広告も目にする機会が増えてきました。
ここには国家資格を有する歯科医師や歯科衛生士は常駐しておらず、日本審美歯科学会では
「最近、美容室やエステティックサロンに類する店舗において歯のホワイトニングが行われているとの報告が寄せられております。これは医薬部外品や化粧品に属する製品を使用して歯のクリーニングに相当する行為が行われているものと推察されますが、製品や方法に関する詳細は不明で、当学会が推奨するものではありません」
としています。
ちなみにイギリスでもホワイトニングサロンは問題になっているようで、NHS(イギリスの国営医療サービス事業)では
「エステティックサロンでの歯のホワイトニングは、訓練を受けていないスタッフや歯科医師の資格を持たないスタッフが行うと、口腔の健康を損なう恐れがあり、違法である。」
と注意喚起がされています。
さらに光照射を売りにしたホワイトニング製品も散見されますが、ホワイトニングの関する論文をまとめた結果では
「光照射によるホワイトニング効果、ホワイトニング効果の持続性、ホワイトニングによる歯の知覚過敏の回避などのメリットはありません。」
とされており、現時点では光照射によるメリットはそれほどないと考えられます。
また、ホワイトニングで歯が強くなるという意見もあるようです。
確かにホワイトニングによる知覚過敏や歯の構造の変化などの副作用を防ぐ目的でフッ化物が含まれることはありますが、あくまでホワイトニングによるマイナス効果を打ち消すために含まれているものであり、元の歯以上に歯質強化につながるとする知見は疫学的にも存在しません。
本来の歯の色以上に白くするのであれば、現時点では歯科医院にて過酸化物を使用したホワイトニングを行う(オフィスブリーチ等)のが最も確実なのは間違いないでしょう。
しかし知覚過敏などのリスクや、ホワイトニングの適応症や禁忌症もありますので、歯科医院で相談をして十分に納得したうえで治療を受けることをお勧めいたします。
今回の検証をお読みいただいた方々が怪しい製品に踊らされることなく、歯の色について満足できる結果を得られることを願っています。
トンデモ歯゛スターズの活動は、基本的に全てボランティアで行っております。本活動を持続可能なシステムにしていきたいと考えておりますので、是非ご支援いただけると幸いです。