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一般人はパワーメーターは必要か?

最初に結論

買える人は買いなさい。

パワーメーターを知った頃

プロがパワーメーターを使っているらしい、という話を聞いたのがおおよそ10年以上前のコンタドールが活躍し、クリストファー・フルームがグランツールでまだウィギンズのアシストをしていた頃の話なので、だいぶ前だ。
その頃は Stages の製品が探せばある、くらいではあったが25万円の自転車に5万円以上するパーツを取り付ける意欲は正直湧かなかった。
必要性を感じられていなかった、というのが一番正しい。

しかしこの「必要性」というのが極めて問題で、つけてない人は永遠に気付けない。使った人は無いと落ち着かない、というレベルになってくる。
それくらい自転車乗りとしては当たり前の指標になったと感じている。
以前は心拍計がトレーニングでは最重要視されていたと思われるが、トレーニング目的じゃ無い人は心拍をつけていたかと言われたら、私も含めてつけている人は少なかったと思われる。

心拍計自体も以前は胸に巻くバンド型しか見たことがなかったが、スマートウォッチが普及してくれたおかげで腕に巻くタイプが増えてくれて、これまた随分と導入するハードルが下がった。
個人的な話だが、今でも胸に巻くタイプが透けて見える人がたまにいると「ゲッ」っと思う程度にはアレが嫌いなのである。

どこかで解説されていたのだが、パワーとは現在の体が出せるエネルギーであり、心拍はパワーを出した後の体の結果、という表記を見たことがあるが、非常に腑に落ちた。

実際に疲れてくるとパワーは出なくなるし、心拍もパワーの割に高かったり低かったりするが、好調不調に左右されることがデータの蓄積でわかってきた。
パワーウェイトレシオ(Power-to-weight ratio)は略して PWR と記載されることが多々あるので、今後は利用する際にこの表記を用いることにする。

パワーメーターの導入

2024年のゴールデンウィーク頃から、遅まきながらパワーメーターを導入してみた。
主だった種類は下記の通りだが、

  • 片足計測(主に左足)

  • ペダル型

  • 両足計測

自分が導入したのはコストと手間と初物になれる意味合いも兼ね、4iiii の PRECISION である。
コンポは Ultegra 6800系の ANCHOR なのだが、当然6800系は古すぎて対応製品がないので、とりあえず装着自体は可能な 8000 系の製品を購入して取り付けた。

まあ6800と8000では剛性とかが違って厳密な数字が正しいかは正直わからないではいるものの、中華のエアロバイクのガバガバな数字に比べれば至ってまともな数字が出るだろう、ということで校正をちゃんとしながら一年ばかり運用した。
しかし効果や威力は200kmも走らないウチに、というよりしまなみ海道の1往復で十分にわかった。コレはやばいぞ、と。

パワーメーターの使い方

じゃあ体の出す出力、具体的にはペダルを踏み込む強さがどれくらい強いかがわかると何がいいのですか? という疑問は至極当然である。
そして何をどう活用すればいいのか、と。

とりあえずサイクルコンピューターの類は前提条件としてパワーメーターの出力を見るためにリアルタイムで表示できる何かしらがあるものとするが、最近は Garmin のスマートウォッチでも連動できたりするので、モニタリングデバイスには困らないとは思う。(iPhoneでも表示させることはできるし)

まず第一に「頑張りすぎない」ようにできる。
なんのこっちゃ、と思うかもしれないが、これが極めて重要なのだ。
具体的には2kmの平均斜度5%くらいのヒルクライムがあったとする。初心者や復帰者がやりがちなのは、坂道だからと頑張って踏んで心拍が上がって呼吸が爆上がりして「ハァハァ」と息が苦しくなって最後は足をついて止まる、という絵に描いたようなパターン。
これを読んでいる諸氏にも見覚えのある景色、または経験した苦い思い出はあろう。

これが無くなる、とまでは言わないにしてもかなり減らせる。

一般的にバテる、というのは体が継続できる強度を超えて頑張ってしまって、回復が間に合わない状態を指す。ゆえに適切な休憩を取った後はある程度回復するので、呼吸は楽になってるだろうし心拍も通常に戻っているだろう。

パワーメーターがあると、この強度の限界を超えないギリギリを攻めることができるようになる。もしくは限界をわざと超えて上限を伸ばすトレーニングができるようになる。

具体例を出そう。

先ほどの 2km / 5% のヒルクライムを想定し、平坦100w(att) くらいでで走っている人がいたとする。
この人が100wで坂道を登った場合はどうなるだろうか? おそらく息は多少弾むかもしれないし、平均速度も明確に落ちるだろうが、体が出しているエネルギーは平坦を普段通り走っているのと変わらない。
そのため「あー、頑張って登った」くらいの感覚すらない程度に楽に登れたなと感じるだろう。

では同じ条件でパワーだけを200wにしたとする。
するとおそらく早々に呼吸が荒くなり、太ももや足の裏の筋肉が硬くなったのを自覚し、心拍も相当に早くなるはずだ。足つきなしで登れたとしても、200wを維持して上り切れたかもしれないが、とてもではないが他人と会話ができないくらいに疲弊していることは請け合いである。

つまり、パワーがわかると一般的な言い方をすれば「(正しい意味で)一定ペースで走る」ことができるようになる。
時速を一定にするのは、体の利用しているエネルギーから見た場合、一定ペースで走ってるわけではない。例では坂道を出したが、向かい風の時速 30km/h と追い風の時速 30km/h は全然必要になるパワーは違うが、そこでも同じことが言える。

チープなサイコンでは時速やケイデンスはわかっても、パワーがわからないのでケイデンスを一定にするギアは選択できるかもしれないが、体の出しているエネルギーを一定にはできないのだ。
そして心拍はパワーを出した後の、遅れで出てくる「結果」なので数十秒から分単位遅れでしか使ったエネルギーを想像しかできない。
ゆえにリアルタイムでパワーを測定する必要がある、ということになる。
真の「一定ペース」とは体が出している力そのもので、時速も心拍も結果でしかないわけだ。

一定ができると何ができるのか

一般的に言って、航続距離が伸びる。
今まで経験と勘だけを頼りに、走り慣れた道であればペースメイクはできたかもしれないが、初めての道であっても初めての斜度の坂であっても、己が狙ったターゲットのワット数で踏んでいる限りはエネルギーを使いすぎない状態で走ることができる。

故に各個人の持つ、真の上限までペースをコントロールすることができるようになる。逆に同じ100kmを走ったとしても、パワーメーターありとなしでは難易度が全く変わってくるだろう。走り終わった後の疲労度も違うはずだ。

また己の調子の好不調がデジタル化されるので、体感では軽快に走っているつもりでもパワーが出ていなかったり、逆に体が重くてもパワーはしっかり出ていたりすることもあるだろう。
自己判断ではなく、ロギングされたデータで判断できるようになる。

ただ気をつけなければならない点として、昨日と今日で同じパワー、同じ風速風向きだからといって、同じ速度になっていないことがある。これは空気の密度によって、当然差が出てくるからだ。つまり気温が違えば速度が変わる。夏より冬のほうが平均時速が遅くなりがちなのは風速云々より、空気の密度が違うと心得るべきだろう。

次回はパワーメーターのもうちょっと踏み込んだ使い方について

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