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YONEX CARBONEX SLD Vol.1 出会い編

最初から最後まで脱線する話

なぜ最初のロードバイクを ANCHOR にしたのか。
私は古い考え方をする人間でもあるので、日本メーカーの作った自転車が欲しかったからだ。とはいえ現実的には生産しているのは MERIDA だという話も聞いたことはあるし、天下のブリヂストンであっても流石に全て国産というわけでもあるまい、ということは前提としつつ、それでも国内のメーカーで行きたかったのだ。

細かいことは省略するが、私の最初のスポーツバイクデビューは SCOTT の SUB30 というクロスバイクで、正直いまでも FOIL などを見ると心が疼く。スイスのロードバイクメーカーといえば、私の中では BMC ではなく SCOTT なのである。

というわけで最初のロードバイクを吟味するにあたり、cyclowired の記事が当時はカッコよく見えたものだ。

フレームで 1000g、フォークで 450g くらいらしいので、重量だけで言えば今でも十分に活躍できるレベルには収まっている。

そんなわけで、私は基本的に外車より国産車派なのである。

YONEX との出会い

またもや話が微妙に脱線するが、中学高校と私はバドミントン部に所属していた。当然、ラケットを利用する。そこで圧倒的なシェアを誇っていたのが YONEX であり、定番中のド定番だったラケット名が CARBONEX シリーズだった。定番ゆえ、2024年の春でもラインナップに残っている、YONEX を代表する名前が CARBONEX なのである。

そのため、YONEX がカーボン成型技術を活かしてロードバイクに参入する、というニュースを10年前に目にして心が踊らないわけはないのである。

そして初っ端から CARBONEX という名前で出してきて驚いた。次にフレームが 650g と聞いて流石だなと畏怖すら感じた。最後に値段が40万円と聞いてズッコケた。

「いやまあ、そうやろな」という気持ちがないわけではない。
だがしかし、2014年当時の私が乗っているロードバイクの値段は25万で完成車だったのだ。Wiggleで初めて海外注文という体験をいきなり14万でおこなって清水の舞台から飛び降りる気分を味わった FFWD F6R のホイール前後輪分の値段を合わせてもフレームセットしか購入できない、圧倒的な高級車の値付け。
結果的にいつかは乗ってみたいなぁ、という気持ちはありつつも選択肢に入れることのできない現実離れした世界の一品という感じだけが残ったのだった。

2014年の鈴鹿エンデューロにて

私はチームで出るエンデューロがとても好きである。
一人で頑張るよりも、みんなでリレーで走るのはお祭り感があるので、自転車でもランでもリレー形式のレースは楽しく参加している。
2014年の鈴鹿も遠かったが、頑張って参加しに行った。
その時にYONEXがブースを出していたので、チームメンバーと二人で試乗させてもらいに行った。

2014年なので、まだ YONEX のラインナップも無印の CARBONEX 一本足打法をやっていた頃だ。
ホイールが何を装着していたのかは忘れたが、とりあえず DURA-ACE 組ではあったので、おそらくアルミ系のリム薄め最高級グレードの何かしらではあったかとは思う。

ロードバイクに初めて乗った時よりも緊張しつつ、最初の一漕ぎ目から10mも進まないうちに頭が混乱した。
意味がわからないほど体重をかけてペダルを踏んだ時のリアクションが軽い。なんだこれは、と思うまもなく脚を回すと、ヒュンヒュンと脚が回る。軽量とはこういう意味か、と理解する頃には試乗コースの半分程度は進み、その頃には明らかに体重をかける手と臀部からのフィードバックに再び混乱していた。
単純に言えば「乗り心地がよい」と表現すればいいのだろうが、自分が普段乗っているのはエンデュランス系のロードバイクで、世間一般的には乗り心地に振っているバイクだ。
にも関わらず、CARBONEX はシルキーな直進をする。アスファルトのわずかな凹凸を拾った時に生じるショックの丸め方が、ぜーーーーーんぜん違うので、アスファルトの舗装が一段階いいところを走ってるような錯覚を起こす乗り心地だった。
マイルド、スムーズ、表現する言葉はいくつもあるが、大体が当てはまる。
そして当時の己には「しなる」という評判を確かめるような尺度や技術は持ち合わせておらず、数分の試乗は緊張を混乱に変えたまま無事に終了した。

なお、同時に試乗したチームメートも「意味がわからんほどスムーズ」と表現していた乗り心地だったので、ロング系を走るならこっちの方が明らかにいいな、という感想だけが残った。なお、40万という値段で思考は常に止まった。

それから

ことあるごとに YONEX CARBONEX の記事やニュースは必ず追いかけてはいた。値段は忘れて、まあ憧れる気持ちだけはタダだしな、という感じと言えばいいのか。
一度試乗して体験もできたし、流石やな新潟のカーボン成型集団! と勝手に感心し、KINAN が供給を受けてレースで使うと聞いて、いよいよ普及が進むのかなと思っていた。
しかし私自身が大怪我をしたことによりロードバイクのブランクが生まれ、2023年に戻ってくるまでに AEROFLIGHT がリリースされてもおり、HR なども増え、気がつけば YONEX は数種類のフレームを用意する、立派なブランドへと成長していたのだった。

CANYON Aeroad を購入するにあたり、もちろん YONEX も検討はした。
しかし AEROFLIGHT はリムブレーキモデル故に候補から脱落した。進化の激しいエアロロードの領域で、進化が止まっているのは流石にいただけないと感じたからだ。

東広島市の自転車屋に ANCHOR の補修パーツでワイヤーを買いに行った時、私が知る限りその店は GIANT ストアだったのだが、いつの間にかスペシャライズドも含めて各種ブランドを取り扱う店舗になっており、そこでの世間話で乗っている自転車や在庫者の話、電動コンポのフィールなどについて店員と会話した時に「エートスいいですよ、僕も乗ってます。うちの2階に在庫ありますよ」と言われても、今から ANCHOR を10年の眠りから醒まそうとしていた浦島太郎にはナニソレという感じで、スペシャライズドにそういう自転車がある、ということを帰って初めて知った。

世間のトレンドにはエアロ、エンデュランス、オールラウンド等があるらしい、ということをその時に知ったのだが、私の中では「レースバイク」「エンデュランスバイク」の2種しかなかったので、まあエアロはレース関係の進化先だな、というのはすぐに想像がついたものの、Aethos のコンセプトを各種見てみてもなんのことかよくわからずにいた。

Specialized Aethos とは

まあ私が説明するより、cyclowired の記事を読んできた方が手っ取り早いと思う。私が思う Aethos とは、ロードバイクという乗り物の楽しさへの原点回帰みたいなものだ。

2023年の春からロードバイクに乗る生活を取り戻し、レースに何度も出ては結果がボロボロになって帰ってくる経験をし、山を息切れを起こして足付きしながら登り、しまなみ海道の往復で腰痛がキツすぎて発狂しながら走り切り、と比較的にストイックな走り方をしてきた。
秋が終わって冬になる頃、Aethos のコンセプトがようやくわかるようになった。
確かにこの記事に書かれている事を理解できるようになっている自分がいた。

しかし CANYON の Ultimate は欲しいと思っても、Aethos が欲しいとは思わなかった。禅問答のような自問自答の先にあるバイクのような気がして、心の琴線が鳴らなかったのである。

YONEX のラインナップ問題

半年のシーズンですっかりディスクブレーキに慣れてしまった私は、YONEX のロードバイクのディスクモデルの少なさにかなり辟易するようになっていた。
CARBONEX HR しかねえぞ、と言われたら「そんな自転車を踏み切る脚なんてありゃしません」としか言いようがない。
しかし CARBONEX SLD という新モデルがあるという。ディスクブレーキ対応フレームにも関わらず、脅威の 540g だ。500ml の水が入ったペットボトルと同じ重さしかない。

とはいえ税込66万円と値段も10年分の進化を果たしている。んなもんホイホイ買えますかいな、と思っていた。いたのだが…

あったのである。ANCHOR を購入した自転車屋に、そのフレームの実物が。

購入を考えはじめたら

2023年の秋、私は ELITEWHEEL の DRIVE40D を購入した。YouTuber が散々喧伝しているのもあったが、1200g 台の軽量ホイールを体験したかったことと、気がつくとリムハイトが高い物ばかりが手持ちのホイールで集まってしまい、すっかり横風ヨワヨワくんになってしまって夫婦共々辟易してしまったこと、この2点が大きな理由である。
40mm ハイトも一昔前なら十分ディープリムと呼ばれる高さな気もするが、35mm 級と似たような感覚で使える事を期待して、である。

ホイール自体の運用やインプレッションは詳述しないが、とりあえずホイール前後セットが1組、うちには余っている状態になった。

そしてとある理由で、私は2024年6月ごろに30万の入金があることになっている。

そこで心の中で計算が高速で行われた。

  • 冬と夏のボーナスを合わせるとフレームを買う目処はつく

  • 6月の30万でコンポの目処はつく

  • ホイールはある

  • サドルやハンドル等はなんとか頑張る

すると、増車できる気がしてくるのである。さらにさらに、1月の新年、ワイズロードに行ってよくわからないものを見つけてしまった。

現行 Ultegra のグループセットが約20%引きで福袋になって売られていたのだ。約25万円。
確かに自転車屋にフレームはあったが、己のサイズかどうかはわからない。注文後に生産されるパターンで考えると、1月に発注して2〜3ヶ月待ちという風の噂を耳にしたため、であるならちょうど春頃にコンポ以外のパーツを買い足していけば6月頃のお金を見込むと…

買えて…しまう、な、これは……

というわけで一旦冷静になろう。続く。

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