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夢の推しは現実でも夢だった① 〜ソロコン事前準備編〜

セミがミンミン鳴いてる夏のど真ん中で暑さにやられてる日に、汗も吹っ飛ぶような情報を目にした。

「MAMAMOO ムンビョル、初の単独来日公演が決定!8月20日(土)NHK大阪ホールで開催」

幻覚だと思った。遂に暑さにやられて私の脳はおかしくなっちゃったんだと。そんな都合の良い話がある訳ない。だって、確かにこのコンサートは3月に韓国で行われたけれど、海外でもやるなんて言ってなかったし。それに今は別にカムバの時期でもなんでもない。

フェイクニュースであることを確かめようと目をかっぽじってもう一度記事を読む。どうやら紛れもない事実であることが確認できた。

ムンビョルが…最推しが…来日…しかも…ソロで!

とんでもねぇ~~~!!! 

そう。ご存知ない方がほとんどだと思うので記しておくが、私は昨年からオランダに住んでいる。が、幸運なことにも7月は片道チケットでの一時帰国中だった。しかし、そろそろオランダへの帰りの便を抑えないと、ただでさえ高額な航空券が世紀の円安とサーチャージで法外な値段で売られてるからヤヴァイ時期だった。

そんな時に天から舞い降りてきた吉報。これは運命や…と思って、このコンサートを見届けてから遥か遠い蘭国に戻る決意を固めた。

― ―

チケッティング百戦錬磨の実姉に協力を仰ぎ、コンサートのチケットを確約してからは、無敵状態だった。精神も肉体も健やかになったのだ。

何かあっても、「ま、私はムンビョルのコンサートに行くんで大丈夫ッス!」と言う精神で小さなことには動じなくなった。もしかしたらもしかすると夢にまで見た2ショ会にも参加できるかもしれないという一縷の望みにかけて、週2でジムにも通い出した。

私は炭水化物と揚げ物をこよなく愛しているのに、ピッツァもパスタもからあげクンも天ぷらも我慢した。丸の内での女子会ランチでもひとりだけ「ステーキ200g、ライスとパンはなしで」と男気満載で言い放ち、朝昼夜プロテインをシェイクシェイクして飲む筋トレ野郎へと変化を遂げていった。そう、これらも全て…最推しの目に入った時に少しでも良いコンディションでいたいから…!行動とは裏腹に心は乙女なのである。

ついでに言うと、前回ムンビョルのヨントンに参加した以来にまつげにパーマをかけたりなんかもした。美容への関心はあるけれど、なんせ出不精だしそこまでするモチベが普段は皆無だ。そんな人間のフットワークすら軽くさせる推しはやっぱり偉大だと思う。まつ毛がちょっと上がったところでたとえ気付くのは自分しかいなくても、なんだか幸せな気分で、無敵だった。

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無敵状態もいつまでもは続かない。

コンサートの日が近づくにつれ、モクモクと煙みたいに不安が押し寄せてくるのが感じられた。理由は明白だと思うが、「コ●ナ」とかいう図々しいにも程がある、名前を出すのも憚られる奴のせいだ。だから以下では、あえて「ヴォルデモート」と呼ぶことにする。コンサートが開催される大阪の地では「ヴォルデモート」がまたもや大暴れしていて、みんなを困らせていた。

「自粛」という言葉を知らないヴォルデモート、いい加減にしてほしい

まだ我々マグルがそこまで「ヴォルデモート」の正体や撃退法を分かっていなかった2020年。その年はHIPで勢いが加速したママムが海外でたくさんのコンサートを行うはずの年だった。最近の7周年を祝うママムのドキュメンタリーでは、海外プロモーションの幕開けとしてコーチェラの舞台が予定されていたことも明らかになっている。

「やっと日本でママムのコンサートが見れるんだ」と、その日を待ち望み続けていた。しかし、結果は虚しく「ヴォルデモート」に惨敗した。発券した4枚分のチケットが現金で戻ってきた時の深い悲しみを、私は今でも覚えている。

あれからもう2年も経っているのに、日本ではまだまだ「ヴォルデモート」の存在感が強いように感じる。オランダでは規制解除の宣言がされたその日から、街ではマスクをしてる人も店の前に置かれていたアルコール消毒も一瞬で消えた。そんなものはあたかも最初から存在していなかったかのように。

オランダ(のみならず欧米諸国)はもうとっくに「ヴォルデモート」がエクスペリアームスされた後の世界を生きているので、「ヴォルデモートのせいでコンサート中止になっちゃったらどうしよう!」とか考える必要は一切ないのだが、日韓での状況を鑑みるとコンサートの幕が上がるまで完全に不安が消え去ることはなかった。

― ―

もう数日後にはコンサートだというのに、なかなか実感が湧いてこない。不思議と他人事なのだ。それとも防衛本能が働きすぎて、あまり期待しすぎないようにしていたのか、よく分からない。

けれど、折角ムンビョルがたくさん準備をして日本にやって来てくれるのだ。こちらだって準備不足で後悔はしたくない。ステージの上から見えるかは分からないが、もし日本でコンサートに参加するならずっとやってみたかったことに挑戦することにした。

うちわ作りだ。

うちわ作りビギナーのため、そもそも何から準備すればいいか分からない。まず、うちわってどこに行けば買えるんだっけ。そこから始まる。ありがたいことにインターネッツの世界では賢者たちが事細かに知識を共有してくれている。調べていく内に、おすすめのうちわはダイ●ーのだとか、背景は黒の方がいいとか、セブンイレ●ンのネットプリントを使うと便利だとかが分かってくる。

即席で得た知識を持って、ダイ●ーに駆け込み、ジャンボうちわ2つとステッカーと文字をデコる用にキラキラしたラッピングシートを購入。その日は台風が直撃していて、道中横殴りの雨にもあったけど私は負けなかった。

どんなメッセージを推しに見てもらいたいかは言うまでもなくとても大切だ。悩みに悩んだ末、私は以下のメッセージをうちわに託すことにした。

1. 하트뿅뿅 (ハートゥピョンピョン♡)
2. 
언니 고마워  (お姉さん、ありがとう)
3. 〇〇
 여기 (〇〇はここです)

一番はムンビョルのファンならピンとくるだろう。これはムンビョルが「Studio Moonnight」というNAVERが運営する冠ラジオ番組にて披露していた鉄板愛嬌ネタだ。ハートゥピョンピョンと書くだけでStudio Moonnightを見ていたということが(多分)伝わるし、あわよくばムンビョルからハートゥピョンピョンがいただけるかもしれない。最強のチョイスだ。

二番目はシンプルに謝意を伝えたかった。日本に来てくれて「ありがとう」だし、一生懸命コンサートを準備してくれて「ありがとう」だし、存在してくれることに「ありがとう」だ。

三番目は、もう下心全開もいいところで己の存在をアピールする「私はここ!」だ。「お前誰やねん」と思ってもらうことで、笑いを誘いたかった。ちなみに、キムタクファンの方がコンサートで実際にこれをやってキムタクからグッ👍をもらったという噂からヒントを得ている。

「うちわなんて2〜3時間もあればすぐ作れるっしょ!」と思った無邪気な自分は、ハサミで文字を切るのだけで30分以上経過した時点で消滅した。ようやく切り終わったところで、キラキラにデコるためには文字の長さを定規で測り、その写しをキラキラのラッピングシートに取ってから再びハサミで切らなくてはならないということに気づき、私は蒸発した。

甘く見過ぎていたのだ。自慢ではないが、私はチャンピオンof the手先不器用である。幼稚園の頃から折り紙が苦手だったので、頼み込んで隣の子に鶴を折らせていた人間がいきなり短時間でうちわを作るなんて無茶な話だった。

でも諦めたらそこで試合終了だ。一日で終わらせようと思うからしんどくなるのである。私は3日間かけてこのプロジェクトを完遂させることにした。

そしてついに出来上がったのが、こちらだ。

イェ〜〜〜イ!!!クオリティ云々の話は一旦隅に置いとくが、3日に分けて完成させた自分を褒めたい。正直に告白すると、キラキラでデコるのは大変すぎて2作目から諦めたし、ハートのシールを貼る作業は母上に外注したが、まあとにかく完成したという事実が大事なのである。

明日はいよいよ大阪に向かう。
楽しみであまり眠れなかった。



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