見出し画像

TRPG TIPS 「らしい」RPの話

※タイトル画像はAIによる生成品です。

Twitterで表題の連投をしたので、記録として残しつつ補足をしてみんとす。
もともとは「自分のRPテクを晒す」といったお題だったのだが、「よいRP」とされるものがたくさんある中で、今回はもう少し的を絞ることに。
その結果が表題の「らしい」RP、というわけだ。もう少し詳しく書くと他のセッション参加者に、そのPCらしいロールプレイだ、と思ってもらうためのテクニックについて掘り下げてみた。

1.その時その瞬間で成立しない

いの一番にこれをもってきた理由は連投の途中で気がついた。

「らしいRP」には、その時その瞬間の状況に対するリアクションから生まれる「らしいRP」と、自己紹介やセッション内の言行を経て積み上げられた「らしいRP」の2種類がある。

内容を絞った途端に2つに分裂する「らしいRP」。

とはいえ、これは当然に組み合わせ可能で、そのときにこそ最大の力を発揮する。

書いている通りその場その場のリアクション「だけ」よりもそれまでの積み上げを経た部分を含めたリアクションの方がより「らしく」なるだろうし、書いていないけどその逆、どれだけバックボーンがあろうとも、その場面の状況を気にせずやりたいこと・言いたいことをやってキャラ表現をしようとするのもまた、ハードモードだ。

2.キャラクターを知ってもらう

自画自賛を承知で言うと、例えがすべてのお話。相手の中に何らかのモデルがあり、それに合致した言行をもって「らしいRP」という評価に繋がる。

人間はできるだけ処理する情報を少なくしたがるものだ。
仮にも教師ともあろう者がなんということを! みたいに、属性を汲み出し、そこに当てはめて「らしい」「らしくない」なんて判断までしてしまう。
人間の脳はリソース節約のために、肩書や見た目で、人を割と大雑把な箱に詰め込みがちなのだ(いわゆるハロー効果。こういうステレオタイプな当てはめは決して良いものではないが)

逆に言えば、何者か分からない存在にはそんな最低限の「らしい」「らしくない」すら生まれない。

だから、「人間・戦士・男」という最低限の自己紹介も「らしいRP」の土台だし、ぼんやりとしたステレオタイプのイメージから、自己紹介や説明を通じて鮮明にイメージを伝えることができれば、「らしいRP」と感じられる部分も増えてくるはずだ。

そして後半の「らしくない」のためにも土台は必要、というところ。ここは後で詳しく書いている。

3.一言説明をためらわない

たくさん設定を書いて満足してしまう気持ちもわかる。
そして「これ読んで! ねぇったら!」って言う気持ちもわかるし、ようやく書いたそれを短く要約するのは、せっかく創作したものを自分で切り刻んでしまう気持ちになってしまう。

全部わかる。がしかし。

これは、自分が作った創作に自分で最高のタイトルを付けるようなもので、決して切り刻むようなものじゃない。
たとえば長い記事にはリード文みたいなものもあるし、最近は3行要約を最初に載せているようなサイトもある。

設定は自分のためにあるが、紹介は相手のためにある。相手の理解を助けるための、もう一手のダメ押しだ。

そしてひとこと説明をする特にどこをピックアップするか。大事なことは、そのセッションで直接関わるPCに対してどのように見えるか、という視点だ。
「今、何をやっている?」(カヴァーのルールとかがあるやつもあるね)
「性別年齢不詳って言っても周りからはどういうふうに見えるの?」

このあたりは最初のアプローチになるので、要約するときにも忘れないようにしておきたい。

4.自己紹介、一言セリフとか付けてみよう

FEAR系ゲームの公式NPCは自己紹介系の参考になる。なんならフォーマットにしてもいいくらい。ツイートにも書いているが、これは様々な卓でGMがそのNPCを「らしく」するために必要な情報だからだ。

もちろん実際のセッションでは、様々な場面に応じた喋り方もするだろうし、続くツイートで書いているように大事なのはリアクション、ではあるんだけど、「代表的な”普段の姿”」を自らイメージして切り取って周りに示すこと、というのが大きいね。

これなんかも「そのキャラってどんなキャラ?」を伝えるための一手法だ。

5.「らしさ」のヒット確認

これはもちろん、相手の顔色を覗え、なんていうつもりの話じゃない。これはキャッチボールのボールを投げてから相手から投げ返してもらうまでの間、ちゃんと相手をみていようぜ、という話だ。

そして、ここに書いてあることはそのまま、相手のRPに対してしっかりヒット確認できるリアクションをしていこうぜ、という話にもつながる。この辺は後で詳しく書いてるので改めて。

ところで、あらためて読み返すと、ここで既に後述のアクティブ特徴の話に触れていたな。

6.ヒット確認が難しいやつを意識する

パッシブ特徴。自分のRPとして能動的な行動と紐付けが難しいやつ。

美形キャラなら全く意識せずに「顔が近い」状況を作ってみたり状況を選ぶが背景を点描にしてみたり。大柄なキャラクターなら狭くなる座席、悲鳴を上げるベンチ、とかね。

行動の前後に、そういったパッシブ特徴によって引き起こされる、パッシブ特徴ならではの演出を挟むだけで一気に「らしさ」を引き上げられる。

もちろん、しっかりキャッチしてくれるPLであれば、しっかりとその美形さにリアクションをしてくれることもあるだろうけど、これらは双方向でしっかりやっていけば良い話。

7.「らしくない」土台の使い方

主に周りのキャラクターから「お前らしくない」なんて発言を引き出せればそれはご褒美だ。そのキャラクター(そしてそのPLは)キミのPCが何者なのか、しっかりと分かってくれている!

その「らしくなさ」が雄弁にキャラクターを表現することもあるのだ。

報酬が絡んだら、名誉が絡んだら……「らしくない」のトリガーなんかも決めておくと良いかもしれない(そしてそれはしばしば、停滞しそうな状況を打破する鍵になることがある)。

8.セッションは(だいたい)特別

これはおれのプレイスタイルが「シミュレータ型」から「フィクションの再現」にウェイトを置いていることにも関わっている。

設定にあるような内容はPCにとっての「日常」であり、セッションで描かれるのはそんな「日常」にいたPCにとっての「非日常」として切り取られたもの、というスタイルだ。

企業の傀儡のようなキャラクターだったり、ある意味ではハードボイルド探偵だったり。非日常なシーンにあって「変わらない」を売りにするキャラクターもいるけどね。それすらも非日常あってこそ「変わらない」が映えるので、セッションは特別、というのとは矛盾しないんだけど。

そういう非日常だから、7で書いていたような「らしくないこと」は起こりやすい、くらいの心意気で臨もう、という話。

9.PCの「変化」=土台の「変形」

土台をしっかり作ったうえで「らしくない」行動に出てみるとき、そこにうまいこと「理由」を付けてみる。「こういうときはらしくないこともするのさ」っていう形で、それはキャラクターを形作る土台の一部になる

セッションで様々な局面に置かれたときに、しばしば起こる現象として、「今のこのキャラでは”らしくない”行動になってしまう」みたいなことは』あると思う。そういうときに「理由」(これはその場で作ってもいいし、考えてある別の設定とつなげてもいいだろう)を使ってうまくつなげていくのはよくある話。

キャラクターの土台は、セッションの場で変化することを厭わないことだ。なんせセッションは「だいたい特別」なんだから。

10.演技して説明する遊び

演出も含めてキャラクターに何かを表現させること、で考えたときに、映画とも小説とも違う点はまさにここだと思う(まぁ、別のキャラクターに語らせたりとかであえて説明を加えるような映像作品や小説もあるとは思うけど)

GMやPLは他のメディアよりもずっと自由に補足説明しちゃっていい。それこそプロじゃないんだから、言葉の演技だけで感情を表現するなんて偉業にチャレンジしなくても、「家族を喪ってるこのPCとしては他人事じゃないんですよ」みたいな話もどんどんやっていこう。

あれ? でもこれってTRPGならではの要素、ってことは他メディア摂取してもいまいち良いお手本が無いやつかもしれないな。

11.前後にアクションを挟む

これは結構やりやすいやつだし、「いつもそれなりにやっていることをわざわざ書いたヤツ」、とも言える。

PL「振り払うように手を横に一閃しながら『そんなことはさせない!』と叫びます!」

みたいなやつだね。シーンに出ているキャラクターにとって、セリフの瞬間こそ、一番わかり易いスポットが当たる瞬間だ。みんなの注目が集まるそのタイミングでしっかりRPをするのはとても高コスパ、というわけだ。

本当にあえてどちらかといえば先に動作の描写を入れる方が個人的には良いと思う。セリフを言う前に動作の描写を入れることで、聞く側に「喋ってるキャラクター」のイメージを事前にもってもらうことができるからだ。

あと、掛け合いのラリーが早くなると忘れがちなのも周知の事実なので、適宜忘れないようにしていくことも大事だね。

12.キャッチ力

タイトルだけではなんとも分かりづらいな。
要は「相手はやってくれたことを返してくれるものだ」というやつで、「らしい」と思ってもらうためにはまず「そのRP、めっちゃそれっぽい!」っていうサインをこっちから出していくことが大事だったりする。ホメてくれる人には好意的になるものだ。

あと、これはただのお返しだけでなく、「お、今日はこういうのをアゲていくノリなのね」って、卓全体のトーンなんかにも影響したりする。病院で不健康自慢が始まるのと同じ原理で「それっぽいRPをホメていく」空気を作るのだ。

盤外戦術? まぁ、このテキストは「それっぽいRPをする」ことじゃなく、他の参加者に「それっぽいと思ってもらう」ことを目的として書いているから、そこは勘弁してくれ。

13.おさらい

おさらいしてる割には新しいことを書いているな……。
PC間でコネクションを結ぶ系統のゲームを多くプレイしているが、この「相手のことをよく知っている」という席はとても重要だ。

「らしくないな」というRPには、相手の”らしさ”をよく理解しているからこそ出せるRPという点で相手の”らしさ”をクローズアップしつつ、同時に「おれはそんなキミの”らしさ”をよく知っているんだぜー!」っていう自身の”らしさ”も引き出せる一石二鳥なムーヴなのだ。

いや、もちろん「キミらしいな」も同じ効果はあるんだけどね。

ただ、あえて”らしさ”のレールを外れてみせたときに「らしくないな」というフォローがあるのはすごく助かる。これは10で書いていたように「ここはあえて”らしくないこと”します!」みおたいな宣言をするのもアリ。

14.場面を使う

140字だとうまく収まりきらなかったので、ここでの解説しとこう。
これは「らしい」の中でいうと「その時その場の状況に即している」という分類になるだろう。
GMが「硫黄のような異臭が立ち込めている」と描写しようものなら、PCたちはそれぞれに、硫黄の匂いに反応するはずだ。共有された描写への反応ってのは、それだけで「らしさ」を感じてもらいやすい。実に高コスパのアクションだ。

だからこその個性付け、ってのもあるよな。
「くさっ!」って言うキャラもいれば「だれかオナラした?」みたいなボケをかますPC、「……オレじゃないぞ?」って先に言うようなヤツもいるだろう。同じお題だからこそ光る個性もあるって話だ。
(硫黄の匂いを例に取ったことを少し公開している顔)

15.なぜ掛け合いでRPした感が高くなるか

この辺は、考察しながら書いていた感があるな。
あとから見てみると、「その時その状況に即していることの”らしさ”」という話に至るための整理だなこれは。

これはすなわち、「らしい」と思ってもらうためにはいかにGMや周りのPLの話を聞くことが重要か、ということである。

16.組み合わせて最強に見える

これも考察の過程にして、冒頭で書いた2つの「らしさ」がついに並び立った瞬間である。

……しかしまぁ、人に向かってコツを書きながら同時に考察してるんだから適当なものだ。

閑話休題。その場で起こっている状況に対し、周りに知ってもらっているキャラクター”らしさ”というフィルターを通じて対応すること。まさに最強。

ではあるんだが、これって結局TRPGにおける基本動作、be動詞的に形を変えて常にやってること、でもあるんだよな。

GMが状況を説明して「きみならどうする?」というやつだ。青い鳥。

17.場面への影響力

GMばかりが場面描写をするわけじゃない。PCだって、場面に影響するいろいろなことをするはずだ。潜入計画のために机の上に羊皮紙の地図を拡げたりすれば、きっと周りのPCは覗き込んで色々話し始める。

うむ、この項目は自身が周りから”らしい”と思ってもらうためのテクニック、という事前の定義からするとちょっと迂回ぎみではあるな。

18.物品に物語を付与する

事前の設定をRPに含めていくとき、もちろん「このキャラはこういう過去を持っているからここでこんなことを言います!」みたいなのは大いにアリだ。そこでいう「こういう過去」をひとつのアイテムに背負わせてみちゃおうぜ、というのがここでの話。

冒険家だった祖父の形見として「羊皮紙の地図」なんかを設定すれば、そこに描かれたバツ印を大事に撫でながら「待ってろよ……!」とか言うだけで、祖父の思いを受け継いでいるRPとして”らしい”というわけだ。

ちゃんと説明するのは大事、と散々書いてきたが、こういった「設定の延長にある物品」は、そんな説明を更に補強する効果がある。設定作成の際にはなにかひとつ、仕込んでおこう。

19.セリフに物語を付与する

これ、前と並列で書いているがどちらかというと「その場に即した”らしさ”」のほうかもしれない。
セッション内の頻出ワードのほか、トレーラーやタイトルなどから借用してくる方法もアリだ。まぁ”らしい”って言うよりもカッコよさの方が強いかもしれないが。

他のPCが話してたことにアンテナを立て、頻出ワードにする、ってのも面白い。「貸し借り」「賭け」「約束」とかをうまいこと引きずっていきたいものだ。

20.演出はセリフほどにものを言い

”らしい”と思ってもらうRPはなにもPCの言行だけじゃない。この辺は演出家のワザとでも言おうか、時には自然現象さえも操ってしまっていい。このあたりは映像作品が参考になるね。

「えっ?」と顔を上げたときにそれまでかかっていたBGMが消えます、みたいな映画お約束演出なんかも、「それまでかかっていたBGM」なんて無いにもかかわらず演出として成立したりする。パブリックイメージってすごい。利用しない手はない。

本文にも書いているが、この手の(BGMはともかく)雨が降ったりの演出は、17でも書いたやつ。「その場に起こっていることに即したRP」の糸口としても使えるので、結果周りのキャラクターのサポートにもなる。

21.カメラを動かせ!

これなんかは先の映画お約束演出の延長、パブリックイメージに訴えるやり方だ。11の「前後にアクションを挟む」とかと組み合わせて、自分のセリフとともにカメラアングルまで指定してしまうというわけだ。

「自分視点のカメラが左右にキョロキョロと動いて、ちょうどキミのPCを見つけたところで止まるイメージで。『おーい!』と声をかけるよ」なんて、一人称視点を使ってみるのもいい。

この辺の”らしさ”は、PCらしさというよりも「あ、こういう映像作品見たことある!」っていう”らしさ”だけどね。その結果、画面に写っている自分のPCごと”らしく”見える、というやり方。

話は変わるが、おれは最近セッションの演出表現で「ワンカット長回し」とか「止め絵が順番に出てくる」何かをよく使っているな。この辺は聞いてくれているPLたちにその辺のリテラシーが根付いてくれてるというのもある。

22.相手を動かす

これもある意味盤外戦術。これと24番が群を抜いて「いいね」が少ないのも分かる話だ。しかしまぁ、目的は書いてあるとおり「周りの参加者から”らしい”と思ってもらうこと」なので、自分がどう動こうが相手に響かなければ意味がない。

21の「カメラを動かせ!」でも書いた「ワンカット長回し」なんかもそうだが、ある程度相手側にリテラシーを要求する言葉だ。すなわち「相手に分かる言葉を使う」というのがわかりやすい。受ける相手を無視した万能のテクニックなんてそうそうないからね。

なのでここからはしばらく、自分のアプローチを相手にうまく浸透させるテクニック部分、あえて悪ぶって言うとゴールポストの動かし方だ。

23.直接アプローチの基本

ゴールポストの動かし方というよりストライクゾーンの広げ方かもしれないな。基本中の基本として相手の中にイメージを作ってもらうこと。

これをおろそかにしてしまうと、設定にしろ今回予告のトレーラーにしろ、”なんかカッコいいこと言っているけどいまいち何言ってるかわからん”みたいな事故ににつながる。

なので、本稿のちょうど半ばになるが、これら設定は「同卓者に自分のPCが何者かをわかってもらうために書いている」という基本をおさらいしておこう。

24.好かれよう

”らしい”と思ってもらうことからするとこれもかなり盤外戦術に見えるかもしれないが、「聞こうと思う気持ち」がなければそもそも話は頭に入らない。

「まったく、こんな奴が作るメシが美味いわけが……(モグモグ)」
「! こ、これは……!! 美味いッ!!」

ってのはフィクションではよくあるけど、マイナス→プラスのドラスティックな転換というフィクションならではの面白みであって、TRPGのセッション、特に参加者間の交流でやる必要は全くない。
(多くの場合においてマイナスの先入観はそのまま、受け入れたものへのマイナスの評価に繋がる。上記の美食家は、フィクションのために理想化された人間、とも言える)

そういう意味で、マナーなどの好感をもってもらうためのアプローチはすべて、キミのRPを良いRPと思ってもらうためのアプローチなのだ。

25.リアクションにこそ力点を

これは「相手あってのRP」という話とも密接につながってくる話。
誰しもが自分の話をしっかり聞いてくれる人には好感を持つものだ。だからこそリアクションはセッション中でも特にしっかり受け止めてもらえるRPになるのだ。

そしてリアクションは「その場に即した”らしさ”」を表現するのにピッタリだし、キャラクターというフィルタを通すことで「積み上げたキャラクター”らしさ”」も出していけるし、やり取りの中で相手の中に自分のPCイメージが更に膨らんでいく。

セッションでPCが動く時、大抵の場合は(GMの描写・PCからの問いかけに対する)リアクションではあるんだけどね。

26.目論見を話す

ひとこと説明と目論見を分けて書いたのは、PLとしての希望を伝えることの重要性をピックアップしたかったから。

「『危ない!』と引き寄せたところで顔が近くなります……ここで美形アピールしといたほうがいいかと」
「いまいましげに舌打ちをします……できればなんでそんなに怒ってるか聞いてくれたら、自分のHOのこと話しやすいかな」

……後者は”らしい”RPというよりもシナリオ進行上の”いいRP”か。実際目論見を話すときはどちらかというと”らしさ”よりも進行の方にウェイトが置かれてる気がする

とはいえ、「ここでこういう掛け合いがしたい」という目論見を話すことは、相手にとってはキャッチボールがしやすいということでもある。リアクションを引き出し、いい掛け合いに繋げていくための初手として機能するはずだ。

27.パッシブ特徴には触りに行く

これも、ここまでの説明のアプローチ方向を変えたやつ。
ヒット確認が難しい「パッシブ特徴」。ならば相手のパッシブ特徴には積極的にリアクションを返していく。これは「好かれる」でもあるし「掛け合い」でもあるし、そして本文でも触れたように「場面で共有されているもの」へのリアクションとして自身の”らしさ”にも繋がるのだ。いろいろな要素の糸口になるという点で、高コスパのRP。

だからこそ、相手の自己紹介には注意をはらい、パッシブ特徴……外に向けてどんな雰囲気を放っているか、そしてそれを見た自分のPCはどのように反応するか、を考えておくと色々とスムーズになる。

28.声のトーンを分ける

考えてみたらこれも聞く相手への直接アプローチという点では盤外戦術と言えなくもない。

もう古くなってる気もするが「メラビアンの法則」ではコミュニケーションにおいて相手を判断するのに、視覚情報の次に来るのが聴覚情報。これは「何を言っているか」の言語情報とは区別しての聴覚情報である。

特にオンセなんかでは視覚情報は弱くなりがち(立ち絵表示機能とかいいよね)なので、聴覚情報のウェイトが高いと考えられる(独自の見解です)。

で、ここで声のトーンが変わるだけで「別の人が喋ってる」感を与えることができる、というわけだ。電話の例を取ってもわかるように、誰もが日常的にやってることだから、「演技だ!」とかそんなに身構える必要はない、軽い気持ちでやってみるのが一番だ。

29.世界観を利用する

雨が降っていたり暑かったり寒かったり、その場にいるキャラクターが等しく感じているものを土台にしたRPの”らしさ”の応用である。

世界観に根ざしたいろいろなこと。SW2シリーズなら多神教世界の神様だけでなく「穢れ」に対するスタンスなんかも含まれてくるだろう。7つの月のしろ示すルナル、なんかもこれまた分かりやすいね。

少し回り道になってしまうが、ヒーロー系PCの持っているパワーソース、レネゲイドだったり聖痕だったりもここに分類されて、しばしば「〇〇のキャラクターに質問」みたいな形で使われたりする。

そこにいる誰しもが関わっているであろうこと、という点で、雨とかテーブルの上のマグカップなどと同様に扱いやすいトピックだ。

30.役割を意識する

ここでの”らしい”は”そのPCらしい”に「そのセッションでの」という枕詞が付く。セッションとなんの関係もない場面でそのキャラクターのRPをする機会の方が稀で、大抵の場合はセッションがあって、そこでキャラクターのRPをするわけだから、ほぼすべてのRPは”そのセッションでのRP”なわけだ。

で、あれば。同じ場面に遭遇したとして、主役として正面から対決の姿勢を見せるRPもあるし、助演として主役のアクションの後に続くケース、主役の背中を押すケースもあるだろう。

”らしい”RPは常に一つの正解を見つけ出すものではなく、その場の条件によっても変化しうる。”らしい”と思ってもらう道筋の中には、そのセッションにおけるキャラクターの役割を果たす、というルートもあるのだ。

31.一貫性

これは前々から言っている話の焼き直しであり、本稿のまとめのひとつでもある。

ツイッターで「おれ」という認識をされるために必要なものも一貫性だ。キャラクターシートに書いてある内容(ツイッターならアカウント?)だけでなく、言行の一貫性もまたおれという個人の認識に寄与している。毎日会っている人だってそうだ。俺たちは何らかの方法で「その人」をその人として』認識している。

ところが、キャラクターは生身の人間に比べるとあまりにも情報量が少なく、偏っている。見た目は立ち絵とかでカバーできるにしても、だ。
すなわち、キャラクターは情報の塊でしかない、ということ。

だからこそ、事前に知ってもらった設定、その場に合わせた行動、それらに一貫性を持たせて、その情報の塊を指向性を持って認識してもらうということが重要になるということだ。これは”らしい”RPに限らず、NPCの立ち回りとか全てにおいて言えることだと思っている。

33.らしさとは選択肢を絞ること

何者でもないキャラクターは、その後何にでもなりうるというワイルドカードを持っているかもしれない。それは確かに強いカードかもしれないが、使われるまではただの裏向きのカードだ。どうしてもオープンにしないままで「らしいRP」をしていくにはパワー不足になってしまう。

しかし、セッションで言行を重ねていくうちに、手の中のワイルドカードは一貫性というレールがおぼろげながら見えてきて、表にする前にだいたい内容が固まっているはずだ。逆に言えば、そのレールが見えてなおワイルドカードの「なんでもできる」にこだわってしまうと、何者かわからないままで終わってしまう可能性もある。

選択肢が絞られてきたら、それに乗っかっていくことで一貫性は担保される。

34.そして連想すること

これは一貫性の罠、キャラクターの設定を作り込むときに陥りがちな罠だ。手持ちの材料の中から、一貫性を損なわない行動を選択しがち。

極端に言えば「このキャラクターはこんなことしません」も、選択肢を絞り込んで一貫性を重視した結果生まれてしまう事故と言える。

だから、一貫性を大事にしつつ、そこから想像を拡げる意識、手前に書いた中では土台を広げる意識を持っておくことも大事になる。この辺のバランス感覚は、むしろキャラクター”らしさ”の追求ではなく、セッションで行われる”セッション進行のためのRP”の方にウェイトを置くとうまくいきやすい。今回はそっちの方はあんまり触れていないけど、セッション進行部分を”お題”にして、別の角度からキャラクター”らしさ”を出していけるのもTRPGの魅力、自分の頭だけで考えていたら引き出せなかったものが出てくる楽しさにつながっているのだと思う。

35.理屈っぽくなろう

ストーリーって理屈なんだよ。
愛するものと結ばれたから嬉しい。理不尽な行為を受けたから怒る。
〇〇したから〇〇した、という流れがストーリーだ。理不尽な行為と怒れる男を別の額縁で飾っても(個々に想像はできても)ストーリーにはなっていない。

だから、PCの行動(それが設定に根ざしたものでも、相手からの掛け合いのリアクションでも、もちろんダイスロールの結果によるものでも)に、何らかの理屈……〇〇したからこうだったんだよ、というものが結びつくと、とたんにそのキャラクター”らしい”行動、という風に見えてくる。
事後解釈も大いにアリだ。

逆説的に、”らしくない”行動を取ったときもこの辺の「〇〇だから」という理屈付けが通ると、それもまた”らしい”にすることができるしね。冷酷なヒットマンPCがなぜその少年だけを生かしたのか? その状況だけ見たら”らしくない”行動が、「息子が生きていたら同い年くらいなんだよ!」みたいな理屈をつけることで”らしい”になったりね。

36.イラストに引っ張ってもらう

最近改めて感じること。用意した自キャラのイラストを見ながらロールするとセリフや動作のキレが良くなっている気がする。……って、これじゃ相手に”らしい”と思ってもらうためのテクニックじゃなくて、自分の出力を満足にするためのテクニックだな。

ただ、相手に見せる上でも、ただのポーンを見てもらいながらよりはPCのイラストを見てもらいながらの方が良い気がするね。
あんまりこの辺を掘ると、リッチ環境の礼賛になりかねないけど……それでもあえて、しっかりとメタルフィギュアやテレインを構える”すごい”遊び方がジャンルとして確かにある、というのは事実なわけで。イメージを補強するための様々な工夫ってのは良いことだと思うよ。

37.アクティブ特徴を持っておく

設定を作るときは一人なわけで、そういう時ってキャラクターを客観視しているから、静的な特徴(パッシブ特徴)でも十分に感じるんだよね。当然、外見年齢や見た目とかは大切な特徴なんだけど。

で、実際にキャラクターを動かそうとすると、それらって相手にキャッチしてもらうことで初めて場に出るような特徴になる……ってのはこれまでに書いた通り。

だからこそ、意識して「外に出しやすい特徴」を設定してみようぜ、というお話だ。口調なんかはキャラクターの記号としても使いやすい。お嬢様口調なんて「〇〇令嬢」ってジャンルにまでなってるし。

余談。サクッと付与できる口調だが、ときどきあるのがセッション内での被り。昔「ボクっ子」が被ったときにはなんともモヤモヤしてしまったものだ。この辺が先鋭化すると「一人称と兄への呼び方が12種類」なんてネタの方になってしまう(古典)。

38.これはゲームだ。

これもいつも言ってることだね。
”らしい”と思ってもらうRP、というお題ではあるが、そういうことをするゲーム、もっというと「そういうことをする”遊び”」である、という気持ちは大事だと思っている。

うまく伝わったら楽しいし、誰かをサポートして、その誰かが見事なプレイをするのも楽しいものだ。そういう遊び。
ゲーム=遊びなんだから、次も「うまくいって楽しい!」って思うためにいろいろな試行錯誤があるだろうし、こうやって長々とテキストに表して、誰かにとってのヒントになればいいな、とも思っている。

39.注意を向ける

おぉ、あとになって見返すと同じこと言っているシリーズが再び。「11.セリフの前後にアクションを挟む」でも、できるだけセリフの前にアクションを入れたほうがいいかも、ということを書いていたが、ここでも同じだ。

頭の中の絵コンテだと、セリフの吹き出しだけが出てきて、登場人物が「誰だ!?」って振り返ってから話者のキャラクターが登場……なんてのはよくあるコマ割りなんだけどね。
この絵コンテごと相手に伝えるためには、「君たちの背後から声をかけてくる者がいる。”ようこそ私の館へ”」の方がオススメだということ。

うん、これは”らしいRP”の話題からするとだいぶ番外編の”らしい演出”だな。

40.キャラクターに働きかける

40番の話の応用。ディスる意味ではないが、舞台演劇のように、相手に向かって話しかけているテイで観客に向かって話している、みたいにならないように。

オフセならしっかりその人の方を向く、ってのがひとつの方法論ではあるが、オンセの場合だとそれは難しい。だからこそ普段よりもしっかりと「呼びかけ」が大事になる。そうして注目を集めたところに喋る仕草なんかをちょっと入れると、”らしさ”が増すというものだ。

41.コマを使う

意外とPCの位置関係って難しいんだよね。ダンジョンの隊列とかはともかく、室内でみんなで話をしているシーンなんかでも。お互いのイメージのズレによって、離れていると思ったキャラクターに突然頭ポンされたりの瞬間移動が発生してしまう。

そういう時にキャラクターコマの力を借りるとイメージがしやすい。というお話だ。これは”らしさ”がセリフだけから伝わってくるものじゃなく、そこにキャラクターがいる、と思ってもらう臨場感なんかからも伝わるものだからだろう。

余談になるが、メインのフレーム外のキャラクターがしっかり動くアニメは力が入っていて良いよな。

42.ピンチは(RPの)チャンス

セリフを喋る瞬間が一番スポットが当たるから、そこでアクションも合わせてやろうぜ、といった話の応用編、バネを作っておく話。

ストレス耐性によっては、やられるシーンは過度に演出したくない、という話の向きも分かるところだが、しっかりピンチを演出するからこそ、それをバネにしたアクションが映える、というのはある。

この辺もストーリーの理屈立てによるものかもしれない。それだけのピンチに陥る相手だからこそ、打ち勝つことが偉業として”らしく”捉えられるわけだ。

43.移動を大事に

41.コマを使うの項で触れたばっかりの話ではあるんだが、再度触れたのはここでも書いたようにちょっとしたアクションが「表情・しぐさ」に偏りがちな部分。ここにしっかりと「移動」を絡めると、キャラクターが生き生きとし始めるのだ。

これも余談だが、力入っているアニメはワンカットのまま動く。普通のアニメはカットを切り替えながら動く。低予算アニメはカットも変わらないしキャラクターが立ったまま……という偏見がある。

キャラクターの演出をリッチにやる、ってのは、頭の中の映像をどうやって場面に出すか、ということだ。アクションを絡める、移動を絡める、みたいなやりかたは、頭の中にある映像の言語化、というジャンルのテクニックかもしれないな。

44.エピソードを作る

生きたキャラクターらしさ、というのをどこから感じるか。手前に書いたアクションの話のように、よく動くのもひとつのキーになると思うので、最後に別のアプローチ。

特徴的なアイテムや、ライフパスと絡めたりとか。今そこにいるキャラクターシートの情報をキャラクター自身に語らせるときに、ちょっと具体的なエピソードを織り交ぜてみると、”らしい”印象を与えることができる。

結構、アドリブで話を盛るときのテクニックだったりするんだけどね。

「18.物品に物語を付与する」でも書いているように、そうやって作ったエピソードは持ち歩いたり手入れしたり人に渡したりができたりもする。一つ一つを詳細に作る必要はない、ちょっとした味付けでも”らしさ”は見せられるものだ。

さいごに

ツイッターで「いいね」に合わせて書き始めた時はこんな大作になるとは思わなかった笑

自分でたくさん書き、そして補足を入れることによって、自分の中でも整理ができたのは収穫だった。

事前に「こんなヤツ!」って紹介をし、それを回収していく「らしさ」
セッションの各瞬間にピッタリのリアクションを返す「らしさ」

その両方の配分・組み合わせによってそのキャラクターの「らしさ」が生まれていくんだなぁ、と再認識した。どちらかだけでも十分ではない。

今回はあくまで「よいRP」として「相手にそのキャラクターらしいと思ってもらう」と定義してそのテクニックを挙げていったが、周知の通りほかにも「セッション進行とキャラクター性のバランスを取る”良いRP”」とか「他のPCの”良いRP”を引き出すための”良いRP”」だとか、「セッション内の役割に応じた”良いRP”」だとか、切り口は無数にあって、実際のセッションの場ではTPOに応じてそのウェイトを変幻自在に変えているのが実情だ。いつかはそういった側面についてもこうやって言語化してみたいものである(でも今回はこれで疲労困憊、しばらくはお休み)。

自分にとってもいい機会になった言語化が、誰かの良いセッションの助けになれば幸いである。

それでは、良いセッションを。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?