9/25 天下繚乱『涙と笑顔の別れの日』感想

そういえばTwitter連投よりはまとめて書いたほうが良いんじゃないか、とか言いながら始めたnoteだったことを思い出す。

最近の感想ツイート、大体5~6ツリーくらいに及ぶことが多くなっているので、それならばということで不意に場所を移しての週末セッションの感想だ。

結論から言うとこのところの天下繚乱セッションは大当たりを引きすぎてなんだかコワイ←まんじゅうに覚えるたぐいのそれ

1.プリプレイ

今回のセッションは前回に引き続き天下繚乱旧版のシナリオクラフトルールの改造版。
https://twitter.com/MOO_hw/status/1436887484525277184?s=20

今回はGMが「大江戸最後の日!!!」をチョイスし、シナリオ全体のあらすじになるグランドオープニングを公開。

恐るべき羅刹である【ライバル】はゾンビの群れを率いて江戸に迫る! その鍵を握るのは【ヒロイン】! 事態を重く見た【協力者】は英傑たちを招集した……!

ってな塩梅だ(ちょろっと改変)。

いつもの身内レギュレーションのとおり、【ヒロイン】以下重要NPCはハンドアウトでコネクションを持つ担当PCのPLが作成することに。
グランドオープニングでとりあえず【ライバル】がゾンビを放って江戸ピンチ!って情報や【ヒロイン】がその鍵、っていう情報はあるので、担当PLはそのあたりを手がかりに、自分のPCの事も踏まえてNPCを作るって塩梅だ。

おれは今回、【ライバル】枠を担当。
”ゾンビパニックもの”に付き物の医療関係者枠として、かねてより設計していた蘭学者PCのデビューにもってこいと思ったのもそうだが、そこで「担ぎ込まれたヒロイン」にコネクションではなく「ゾンビを放ったライバル」のハンドアウトを選んだのは、自PCの宿星として【人を救う……蘭学は人を救うための技術だということを広める】というものを考えていたから。
そのアンチとなるNPCとの対決姿勢を見せることで、自キャラが引き立つと考えたからだ。もちろんヒロインを助ける流れでも表現はできるんだろうがね。

で、考えたのがこちら。

▼ライバル
名前:永平 幻為(ながひら げんい)
年齢:30歳代 性別:男
カバー:怪人 主なクラス:蘭学者? 外見:和装の上に白衣を着た
性格:技術開発こそ全て 夢や理想:可能なことは全て試してみたい
PCへの感情:哀れみ
設定:江戸にこの人ありと謳われた蘭学者・穂蔵不乱の高弟のひとり。師に禁じられた殺人兵器を開発、薩摩に売り渡したことで破門された過去を持つ。薩摩藩に拾われるも、そこで入手した阿片によりその精神が時空破断に飲み込まれる。何処から囁かれるこの時代ならざる技術に魅せられ、化政時代の技術でその実験を繰り返すうち、人の心を手放していく。今やその技術はあらゆる分野に及び、一切の禁忌は彼を縛ることはない。自らを「万能の天才(蘭学でいうウォモ・ウニヴェルサーレ)」と呼称するに至った彼は薩摩藩でも扱いきれるものではなく、じきに出奔。いまは"渾沌石炭"を求めて江戸に舞い戻ってきている。
科学を人を救うためのもの、として奮闘するPCは幻為にとっては哀れみの対象である。科学は万能であり、何かの目的に縛られるものではない。全てを為し、世界のあり方を完全に詳らかにするまで、彼の暴走は止まらない。たとえその頭に囁きかけるものが、時空破断の果てにある"科学の暴走によって滅びた世界の亡霊"であろうとも。

いわゆるマッドサイエンティストに色んなものを超時空結合して元ネタを定かならざるものにした感のある造形はわりと天下っぽくてお気に入りである。

お気に入りすぎて「GM! このシナリオで死なすのが惜しい! ラス戦は手下を放ってくるとかにして!」とお願いするレベルだった。こういうこともある。

とまぁ、こいつが今回のゾンビパニックの元凶というところまで決まった所に、ヒロイン担当のPC①から次の球が打ち込まれることになる。ヒロインのクラスは屍人、蘭学でいうゾンビである――ということで、既にゾンビとなるも意識を持ち、さまよえる人々への救済を望むヒロインがここに参戦してきたのである!

もうこれでだいたい面白くなりそうなシナリオのガワは完成したと言っていい。ここまで読んだ歴戦のGM諸君なら余裕でセッションにまでこぎつけられるだろう。

ちなみに協力者枠には公式NPCより大岡越前を迎えることになるが、これの理由はPC③が「初期コネで持ってたのに複数遊んでまだ絡めてないから」というもの。こういう使い方ができるのも自分で担当するプレサージを作るっていうときの醍醐味である。

2.メインプレイ

実際のセッション部分は主に、アフタープレイで言及のあったうまい話を中心にピックアップしていこう。

まず大事なのは、今回のシナリオがビターエンドになる、という了解だった。シナリオクラフトなので普段ならプリプレイに告げられるべき内容が、今回はセッション中に方向づけられた。

繰り返すが普通のセッションならビターエンド展開はプリプレイ、あるいは早めにアナウンスしておき、PCは辛く苦い物語を受け止め、PLの心理的安全性は確保して楽しむ、というのがトレンドであるとおれは考えている。

今回それがシナリオ中に開示される流れはある意味、前述のセーフティがない時代の流れだったわけだ。
そこで【宿星:人を救う】のおれのPCだったり【宿星:運命への反逆】のPCだったりが反発するんだけど、ヒロインの犠牲以外の方法はない、という流れから、そしてPC①、ヒロイン担当の妖怪絵師が彼女の確かに生きている姿を写し取っていく…という良いシーンに。

振り返るとここは薄氷のバランスだった。みんななんとなく、シナリオクラフトだからと”ビターエンドになる”という明言を避けたまま進行していたからだ。あの”絵を描く”という行為の不可逆性が、言外にしっかりと、ビターエンドを示してくれていたのだがね。

真似してはいけないタイプの成功体験。

彼女の犠牲によって手に入れた特効薬(みんな途中からワクチンと読んでいたが、ゾンビ毒罹患者で自我を保っている特異な彼女から得た精髄なわけで、その制作過程から考えてあながち間違いじゃない)。


蘭学医キャラとしての演出は、特に行わなかった。別れのシーンは絵を描くシーンで既に行われているから、という理由だったりするんだけどね。
GMのニクいところは、おれのPCもまた、「村雨丸を見出し、時空破断が正されたときに自分は消えてしまうんじゃないか」という疑問を持っている弱さを内に秘めたキャラクターだったんだけど、デビュー戦でいきなり、ゾンビ化して意識を持っているヒロインが命を掛けて他のゾンビ化した人たちの特効薬を作る、なんてモチーフをぶつけられるとはね。GMニクい。

……二人きりの手術シーンで彼女にそれを語るシーン演ってもよかったな。良いセッションはだいたいいくつかの「あれやっときゃよかった」シーンがあるものである。
……今後覚えておいていつか自分の存在が天秤にかけられるときに再生しよう。

が、二人きりの手術シーンをカットしたおかげで生まれた、PC間コネ同士で戦いに赴く前の交流をするシーン。ここも白眉のひとつだったんだけど、多分手術シーンをカットしなかったら冗長になってしまって、最悪の場合コネ同士の交流シーンがカットされていたかもしれないので、結果オーライだ。

さて、そんな交流シーンだが、ここでも老獪なプレイングが垣間見えた。

手術を終え、ヒロインの命と引き換えにしたゾンビ化特効薬を手に他のPCのもとにやってきた蘭学医PC@おれ。「……全部うまくいったわ」と力なく。

待ってたPC「じゃあ彼女も助かったのね!」

いやまて。ビターエンドの了解はたしかに明言してなかったけど、【宿星:人を救う】失格だと自責に駆られながらヒロインの命を預かってきた医者に掛ける言葉がそれか。

というかコネクションで友人取っている相手(待ってたPC)に、「特効薬は得られるが彼女は助からない」って説明しないまま手術はじめた人になるのかおれのPC!?

流石に【宿星:世界への反逆】とは言っても、その説明聞きながら「彼女も助かったのね!」はロック過ぎるんじゃないのォー!!

友人PCの希望の花が咲いたようなリアクションを前に、おれのPCはまたひとつの輝きを奪わなければならないのか。

という様々な感情が胸を吹きすさび。おれは。

ルールブックP267「■セッションを中断する」を行使した。

「ちょっと……そのリアクションはおれのPCでは受け止めきれないので、助からないことは分かってた感じでもう一回頼めるかな?」

蘭学でいうカット&リテイクである。

あにはからんや、その後のやり取りからお互いの無力と、それでも勝ち取るための再起、というとても良い女の友情シーンになって、おれの大好きなクライマックス前の緊張を高めるシーンとしては大成功だった。

真似してはいけないタイプの成功体験。


ともあれ、シナリオはクライマックスへ。マッドサイエンティストのマッドっぷりを遺憾なく発揮しつつ、ラスト戦闘の舞台設定やまさかまさかの別シナリオからの復活怪人など、GMからの楽しませる仕掛けたっぷりのバトルだった。

アフタープレイで話題になったのは以下のふたつ。

①解説役!

おれのPCは蘭学者で知恵者ムーブをやる、という流れで動いていたので、PCと妖異の《疾風怒濤》の打ち合いによる【行動値】差での位置取りだとかを、PC目線で「機先を制してみせた! あれが戦国の習い、”いくさ人”ということなの……!」とか解説をたくさん挟んでいたんだが、これが結構ウケたみたいでよかった。

②《天佑神助》!

クライマックス戦闘も佳境になると、データの方に目が行って、大切なリソースである奥義(とか神業とか奇跡とか)も、誰が何持ってて今はこれ使ったほうがー、みたいな話題になりやすいのは周知の通り。

おれはなるべく、奥義に関してはあんまり使用タイミングとかを口出ししないようにする主義なんだけどね。意識しすぎて「ここで使えばカッコイイんじゃね?」みたいな提案も少し引き気味になってる自覚もあって、ここは中々加減が難しい……閑話休題。

そんな「リソースとしての奥義」の目線を強めていくと、《天佑神助》のような使用回数回復系の奥義について「ここで《天佑神助》からの《破邪顕正》だな。よろしく。よっしゃ打ち消し」みたいなパズル感覚が首をもたげてきて、挙げ句カメラは《破邪顕正》使用者に行く、みたいな事になりかねないのだ。

またしても閑話休題だが、N◎VA系列の《ファイト!》の経験点取得条件が「対象に感謝されたら」っていうのは、上記のような状況になりがちな中で、本当に理にかなっていると思う。

今回もまた「ここで《天佑神助》からの《破邪顕正》だな。よろしく」の状況ではあったんだけど、おれのPCの《天佑神助》(ラスボスの最後の一撃で誰かが倒れる。キミはそんな”絵”にはしないことを知っている!)に対し、「PCからの言葉によって、尽きていたはずの力をこれまでにない方法で振り絞り、追加の一回《破邪顕正》を放つ」って演出で返してくれたこと。これが嬉しかった!

もともと、妖怪絵師/朱雀な今回のPC①は奥義の演出をしっかりと回数制限のある技として組み立てていたことが見事にハマった感じ。奥義がシナリオ1回、というのはルールとしてあるんだけど、回数制限の部分まで設定しているかというとそうじゃないこともあるからな。
具体的に決めておくことで、みんなで触ることのできる要素になる。わりとこう、TRPGセッションにおける”具体化”の好例のような気がする。

クライマックスまで来て、ようやく真似できるタイプの成功体験の話ができた(笑)

3.さいごに

3週連続で天下繚乱のセッションが続き、うち2回が改造ルール版のシナリオクラフトである。
このレギュ、正直面白いので布教したい。
自分で作ったNPCと自分で関わる、ってだけだとものすごい手酌感があるんだが、そうやって生まれたNPCが3人いるだけで十分新鮮な感覚が生まれるものだ。あと、自分の担当NPCじゃないNPCとの交流が生まれたり(これ通常のシナリオではあまりない現象でもある)も意外に面白かったりする。

なによりも、GMする時のコストが大幅に下るというのは特筆に値する。

いつか、別途シナリオクラフト私家版改造ルールとしてnoteにアップしてもいいかもしれない。

それでは、良いセッションを。

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