TRPG TIPS:ハンドアウト「どれでも良い」の処方箋

1.あらすじ

いつものようにTLで見かけたTRPGネタ。
今回はGMが提示したハンドアウトを見るなり「みんなが選んだ残りでいいです」というPLと、それに行きあったGMについて。

TRPGに限らず、様々な機会で目にする光景である。
どういう意図かは人によって違うだろうが、ことTRPGのセッションにおいて、やられたほう=GMの反応はだいたい同じだ。

「遊びたいハンドアウトがなかったんだろうか」(スン

いやいや、そんなつもりはないのにGMしょぼくれないで、というPL側の意見もわかる。
純粋に、心の底から、どのハンドアウトも魅力的なので、ほかのPLの動向を見たうえで決めたいのだ、と。
それもわかる。だが伝え方ひとつでセッションはもっと面白く出来るし、あるいは「ほかのPLの動向を見て」いるときにうっかりハマりがちな「満足度を下げてしまう罠」もあったりする。

今回はセッションの満足度を高める観点からのいくつかのアイディアを並べてみようと思う。

2.PL側の工夫

心の底から、並べられたハンドアウトのどれも魅力的だと思えず、どの枠に入っても送りバントのような休日を過ごす未来しか描けないPLはどれだけいるだろう。
そこがコンベンションの卓上であれ、オンセの掲示板であれ、遊ぼうと思って集まったのだから、楽しもうという気持ちは持ってきているハズだ。
(もっとも、楽しめるビジョンがちっとも浮かばないような状況なら、その日は別の過ごし方を考えてみるのも良いかもしれない。照る日もあれば、降る日もあるのだ)

それなのにGMからは「遊びたいハンドアウトがなかったんだろうか」なんて思われるのはむしろ心外、なんて向きもあるかもしれない。

いきなり核心から入るが、この手のやり取りの半分以上は、大事なことを伝え忘れている「いらぬ心配」、疑心暗鬼の類だと思っている。
疑心暗鬼は恐ろしい。情報伝達のスキマから、いつだって手をこまねきながら俺たちを狙っている。しかもこの鬼どもはTRPGでおれたちが摂取しているものと同じ、想像力を養分にしてたりするので始末が悪い。

だから、PL側の工夫のひとつはTRPGerらしく想像力を味方につける情報伝達だ。

(1)意図をひとこと言い添える

GMとPLは味方同士、なんてのはだいぶ使い古されてわかりきった概念になっているかもしれない。
これは概念を下敷きに、何をしたらいいのかっていう具体的なコマンドのひとつだ。

味方だからこそ、必要な情報はしっかりと伝える。言い換えれば、不完全な情報だと何をどう味方して良いのかわからない。疑心暗鬼はその最悪のかたちだ。疑心暗鬼なんてのはジメジメした日陰に生えるカビみたいなもので、情報の風通しが良ければ生まれにくいものだ。

「ほかのPLさんがどのハンドアウトにどんなキャラクターを出してくるかを確認して、調整して出したい」とか「初心者さんに選んでもらったほうが良いと思って」とかね。
年齢とか性別とかキャラクター性とかデータのタイプとか、先に手を挙げることでその辺の調整をさせてしまうよりは自分からしたい、という考えを持っている人も少なくない。ストーリーの中の役割よりもデータ的な役割から組み立てたい、なんてのもあるだろう。ならばそれを表に出すといい、という話だ。初心者対応とかは分かりやすいね。
おれの周りだと「手持ちPCの持ち寄り」で遊ぶ機会が多いので、イメージだけでハンドアウトを選ぶと似たりよったりのアタッカーが集まったり回復役が居なかったりなんてことが起こるので、調整してくれる人に頭が上がらないのである。

そういう意図を出してくれれば、GM側からは「ハンドアウトを選んでからでもその辺の調整は出来ると思うよー」なんていう助け舟も出せるようになる。ハンドアウトとキャラクターの中身部分はそこまでヒモついてない、とかのGMが持っている情報から手助けをするにも、まずはPL側の意図を伝えるのが重要なのだ。

オンセでのやり取りなら「ちょっと忙しくて確認の時間がとれないので、先に選んでください」なんてのもあるかもしれない。リアルワールドは危険がいっぱい。
この辺はオンセ周りでたまに見る、連絡がつかなくなったりで発生する疑心暗鬼にも使える。

オフセやコンベと違って、オンセでの情報交換の場合はモニタの向こうにそれぞれの生活習慣やマインドセットの波がある。オンセでGMが情報公開した時、相手はコンベンションで卓分けした直後のようなモチベーションを持っているかどうかは分からないのだ。お互いに伝えていこう。

慣れてないと最初は面倒に感じるかもしれないが、意図(目的)を明確にするっていうのは、味方ばかりの状況でこそ重要になる。今まであまり意識してなかった人ほど、効果はわかりやすく出ると思う。おれがそうだったように。

(2)力技:選べないなら選んでもらう

(めったに機会を作ってないが)コンベンションで遊ぶときによく使うのがこの力技。正直(1)に比べると工夫レベルではない手間暇が生じるが、これをやったからうまく行った、ということは有っても、うまく行かなかった経験は今のところない。

要するに、「どのハンドアウトも良いけど…」っていうのなら、どのハンドアウトに対してもオールレンジ攻撃で面白くなりそうなボールを投げつけてしまうのだ。

PC①はヒロインが囲まれてるところからだし、グイグイ引っ張るようなタイプの熱血善人系、正しくないことをポジティブに指摘するような男子高校生がいいな。
PC②は元兄弟子のラスボスとのコネで負けスタートだけど、最後まで信じる負けロールが演りたいな。あ、こっちは道場継げない女性キャラってのは面白そう。
PC③は組織の依頼枠だけど、今回はPC①にコネを持つってところで、PC①のキャラクターにもよるけどメンター枠をしっかりやるために、同じ年齢くらいの子供と離れ離れとかで感情移入して、組織人成分以外も出したいな。

みたいに投げまくると、しばしば他のPLから「だったらこっちは…」みたいな声が上がって来る時がある。こうなればシメたもの。自分にとって同列に価値のあるハンドアウトが、呼応してくれた他のPLのお陰で一歩抜きん出た存在になる感覚。GMから受け取った物語の種から生み出した、キャラクター未満の物語の芽を選んでもらうのはでたらめに楽しい瞬間だ。プロデュースした甲斐があるというものだ。

もちろん、全てのハンドアウトに向かって書け!なんていうスパルタでマッチョなことを書くつもりはなくて、特にビジョンが複数浮かんでいるハンドアウトを並列で挙げてしまえば良い、ということ。

逆に、PLの立場で、先にこういう提案が有ったときには自分のやりたいこととのバランスとかを見てリアクションを返すのが冴えたやり方になる。PC間コネクションなど、PCの関係性を表すデータのあるゲームも多い。直接関わりあうPCが事前に分かっているなら周辺も固めやすいということだ。

ちなみに。個人的には初心者対応にしても、自ら枠の選択とやりたいイメージを挙げるのは有効だと思っている。初心者と経験者の違いはとにかく振る舞いの一挙手一投足に至るまでロールモデルがないことだ。「あぁ、このハンドアウトというやつはこんなふうに選んでいくのか」っていう風に、「今やっていいこと」を示すことも立派な初心者対応なのだ。
「まずやってみて」と手も口も出さないのは、行き過ぎると未就学児童のお使いドキュメントくらいには相手のトラウマになりうることも心の片隅に。

3.GM側の工夫

ざっくりいうと今まで書いたことの逆を行くことだ。GMの心理があればPLの心理もある。疑心暗鬼にとらわれず、「残り物」発言の意図を考える、尋ねることで見えてくるものはあるはずだ。

(1)意図を聞かせてもらう

ということで1つ目はPL側の裏返し、意図・目的の確認だ。
疑心暗鬼に囚われるくらいなら情報の風通しを良くしてしまうことだ。
聞いてみれば意外な残り物戦術を知る機会になるかもしれない。

……とはいえ。

これはおれにとっても公私ともども長らくの課題で、「よかったら理由聞かせてもらえる?」ってのをふんわり柔らかく伝える方法はないものか。
どうにも責めてるとか詰問しているように取られるのはおれの人徳の無さによるものか……。意図がわかれば協力する方法も見えてくる、っていうやつなんだけどなぁ。心理的安全性の高い言い換え方法を募集したい。

(2)選び方を工夫する

「お先にどうぞ」が成立するのはそういうシステムだからだ、という話。

早いもの勝ちで取得するシステムだから、「残り物でいい」も生まれるわけで、PL全員に希望枠を投票して貰う形にすればそもそも先も後もない。オンラインセッションではそれぞれの活動タイミングが異なるからか、わりとよく見る手法だったりする。オンセだと希望枠ひとつを挙げるわけではなく、ハンドアウトの数だけ優先順位付けて投票とかをよく見るね。

コンベンションのハンドアウト選択でも、フセン1枚あれば投票はできるので、やり方そのものを変えるのもひとつの手段だ。これは声のでかい誰かがまっさきにやりたい枠を取っちゃう、みたいなのも防ぐことができる点でも良い要素はある。

ただ、PLの工夫に書いてあったようなPCのプロデュースをしながらのすり合わせではなく、枠が決まってからのすり合わせってことになる点など、やり方を一部変えると色んな所の勝手も変わるので注意だ。

ちなみにおれはこの手法を取るときにPLに各枠のプロデュース付きで希望枠を挙げてもらう、なんてことをやっていた。ほら、希望枠が被ったときに裁定するための基準がほしいじゃないか(笑)

4.まとめ

というわけで、疑心暗鬼の殺し方について色々と書き連ねてみた。

卓環境もほんとに千差万別で、これで絶対うまくいく! を保証することはできないが、だれかにとっての楽しいセッションの再現性が高まったら嬉しい。

楽しいセッションに勝る薬はないからね。

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