TRPG TIPS:ハンドアウトへの一工夫

小太刀先生のnoteを見て思い出したことがある。
Twitter連投による能書きをnoteの方で書こうとして、アカウントを作っていたことだ。

ということで、おれが最近公式シナリオのGMをする上で、少しばかり追加したトッピングのような試行錯誤について。

料理なんかじゃレシピそのままにすれば良いところを余計なアレンジを加えたせいで台無しにしてしまう、なんて向きもある。
今回書き連ねる試行錯誤もそんなアレンジのひとつだ。どんな料理に振り掛けても満足度が上がる魔法のスパイスじゃない。

美味しい料理は「楽しい食卓」の構成要素でしかないからね。
多分これは、「おいしくなあれ」というアクションにこそミソがあるのだと思う。

1.ハンドアウトの空白をPLが埋める

先に断っておこう。この手法は別のところでPLとして遊ばせてもらったシナリオの劣化パクリだ。

コネクション:謎の少女 関係:任意
キミは世界の宝物を集める怪盗だ。厳重に守られた富豪の屋敷に侵入し、地下に保管された「至極色の宝珠」を手に入れるまであと一歩。
しかし、最後のドアを開けた先には、窓のない部屋と、少女が一人。
「連れ出して」と懇願する彼女の声は警報音でかき消される。
キミは彼女を連れて逃げることにした。
なぜなら「                       」だからだ。

こんな感じで、動機の部分をPL側に委ねるやりかた。もちろんこのケースでも、GMは「少女を守るシナリオだよ」などと補足しつつの運用になる。

よく見られるパターンは、コネクションの関係欄に「庇護」とかを付与することで「少女を護るシナリオだ、ハンドアウトを読めー」になるわけだが。
少女を護るに至るモチベーションを自分で示してもらうことでシナリオ開始前からより一歩踏み込んでPCに入り込んでもらうこと、そしてそれを皆に公開することに意味がある。
おれはTRPGの特にキャラクターの表現は、「表明と履行」に有ると思っていて(要するに「こんなやつ!」って表明して、それが為されたときに「それっぽい!」ってなるやつだ。フィクション作品だと導入でそれを見せるわけだが、セッションならその手前でPLの立場でやり取りできる)、空白をどう埋めるか、ってところはキャラクターの「こんなやつ!」を表明することに貢献できる、って寸法だ。

また、GM側がシナリオの本編で明かされる秘密として、じつは怪盗と少女が血縁でしたー、みたいなことを仕込む場合には大事故が発生してしまうので、この手法は「少女を助けるに至る動機について、またその周辺の情報についてはシナリオ内で踏み込みませんよ」というサインになる(明言した方が良いのは言うまでもないが)

あと「なぜなら、~~」の部分を、PC本来のステレオタイプからズラすことでキャラクターの厚みを出すことができる。

殺し屋が人助け、組織人が情で動く、警官が裏社会と協力する、などなど。

ふぃあ通TRPGチャンネルで言っていた「球形のキャラクター造形」にも通じるところである。ハンドアウトの前半と「なぜなら~~」をなんとなく対立されておくことで、穴埋めによりキャラクターの形に奥行きが出るというわけだ。

【TRPG講座】キャラクターの造形と役割
https://www.youtube.com/watch?v=LDm3ESO3wYo

2.PCへの質問

穴埋めハンドアウトに味をしめたおれはさっそく、次の公式シナリオでもそれをやろうと二匹目のドジョウを探しに沼に潜り、まんまと溺れた。

そう、魔法のスパイスはない。料理を見て選ぶくらいはしないとね。

ハンドアウトの構造的に、「キミは〇〇だが・・・した。なぜなら~~」の構造になってないやつで穴埋めをやろうとしても今ひとつうまくいかない(深層的な理由を掘り下げるのも面白いだろうが)。

で、今回やってみたのが、各ハンドアウトで置かれる状況について、どう思うか?というもの(実は現在進行系でこの記事を書いている)。

他人のハンドアウトも見よう、っていうやつの掘り下げ。
PC①が町の惨状を憂うるヒロインならば、「力を持たず虐げられた人々についてどう思う?」とか「それをひとりの英雄に頼る構図をどう思う?」とか。
PC②がボスに一旦敗北して再起を図る枠ならば「あなたは完膚なきまでに敗北したときどうして立ち上がれる?」とか。

そのままセッションでPC間の会話のシミュレーションになるような問いかけを、ハンドアウトの数だけ、該当PCではなく全PCに送ってみた。Discord内での回答なので、セッション前に全PCがシェアできる形になる。これも表明と履行。なんとすればPC間でコネクションを結ぶ参考にもなるしね。

それぞれのPCに送られる個別のハンドアウトは、もちろんそのPCのリソースだ。だがそのハンドアウトにあるNPCとのやり取り×PC人数だけでなく、そのセッションでは他に主役級のPCがいるのだから、そのPCたちからも引き立ててもらえたら素敵じゃないか。

予め逆張り宣言するのにも使いやすいしね。
「力なき人に貸す手なんかない。オレは復讐こそが目的だ」
「そうやって傷だらけになって戦って……なんになるというんですか?」
そんな投げかけの準備運動として、あえて明示的に質問を投げてみるのも悪くない。

って、これはPLテクニックとして、自分が取得していないハンドアウトについて、「自分のPCなら~」っていうイメージを持っておくとセッション内で絡みに行きやすいよ、って話にもなるな。


昔はPCに合わせて、公式シナリオの中身のアレンジを頑張っていたが、最近はこういう入口部分のアレンジでPL自身に考え、動いてもらってセッションの解像度を上げる取り組みがトレンドだ。

多分あわせ技で、こういう工夫・質問を投げて、それを受け止めた上でシナリオの方にも反映していく、ってのが一番楽しいんだろうな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?