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5/14 ラストレクイエム『狼の刻※公式』プレイレポ

最近まぎれもなくヘビロテしているラストレクイエム。見事にうちの卓のスタンダードに入り込んだなー、という実感に繋がってきた。セッションが終わったらシステムの良いところの分析とか「まだ足りてなかった!」ってくらいにボロボロ出てくる。オススメだ!

ルールブックと同時発売されたスーパー・シナリオ・サポート(SSS、おれたちはスリーエスと読んでる)にはシナリオが4本掲載。3~5人用でハンドアウト3つのロング版と、ハンドアウト2つのショート版がそれぞれ2本付いているというオトクな構成だ!(バディ導入でハンドアウト数が少なくても運用できる形なのも良いところ)

と、突如の宣伝を前置きにしつつ、今回はそんなSSS掲載の『狼の刻』をプレイ。ネタバレに当たる部分は本記事の下部にまとめて掲示しているので、これから遊ぶGMの参考や既プレイ後のよその卓はどうだった?みたいな楽しみになれば幸いだ。

1.プリプレイ

宣伝はもうちょっとだけ続くんじゃ。
実はラストレクイエム、ウェブサイト上で公式シナリオのシナリオトレーラー部分はすべて公開されている。

今回の『狼の刻』も同様だ。オンラインセッション環境でも、こういった情報の共有がし易いのは本当に助かる。
これにいくつかのレギュレーション(一部は一応ネタバレ箇所に書くことにする)を加えるいつものやり方。
今回はついでに、ある程度経験点も溜まってきたし「公式レギュレーションにあるとおり、経験点10点まではエネミー強化はしない。10点超えたところから調整するよー」というレギュにしてみたのだが、全員キッカリと10点ジャストで抑えてきた。そういうところ大好きだ。

▼PC①:鴉藍(アラン)・ヴァン・グレシル

PLは坂崎さん。最近ちょっとセッションから離れ気味だったんだけど見事復帰を果たしてくれて嬉しい。今回はラスレクデビュー時に使ったサンプルPCのデータを修正してのエントリー。もともとサンプルキャラ「霜刃の天使」だったのを、ステータススタイルをエージェントから貴族とかを表すハイソサエティに修正し、若干成長を施しての生まれ直しだ。

サンプルキャラで一回遊んだとあと、継続プレイ用にフィッティングはいろいろな卓でやられていることだと思うが、今回ももともとの設定にうまいこと載せてきたなぁ、といったところ。仇敵を追いながらもすっかりやる気のない退廃ムードに更に寄せてきたイメージだ。

そんな貴族に生まれ直したアランだが、今回のHOでは人狼族の青年と協力する話。もともとこのゲームでの人狼族…ベルセルク族は、アランの血族・ルシファー族がライバルたる竜族・ファフナー族との戦いのために生み出した戦闘種族。来歴からすれば支配者に当たるわけだ。

貴族ムーヴに加えてかつて支配していた血族を助けるというHO。これはなかなかおもしろい取り合わせになったんじゃないかしらん。

▼PC②:ミアー・東丈・アレクサンダー

PLはクリスくん。今回は新キャラでのエントリー。HO的にはヴァルハラの構成員、というところだが今回のキャラクターは魔術結盟からの出向キャラ、すなわち魔術師:グリモアだ。更に加えて翼に依って魔力を操ることに長けたルシファー族の血を引いているということで、血筋的にも恵まれたキャラクターである。

名前のアレクサンダーはルールブックを読みこんだクリスくんのアイディア。ワールドガイドにある「人類で初めてゴシック種族と邂逅した魔術師」が魔術結盟のグランドマスターのアレクサンダー氏。その一族に生まれたという設定も含めて、非凡なる事がよく分かる。
(ところでそんな非凡な才能を持った探求者として「スタイル:エキスパート」を選択しているんだが、エキスパートで取得できる社会技能が〈社会:政治経済〉なあたり、ここは任意でも良かった気がするけどね)

15才の才能に溢れた魔術師キャラで自信家、ということで、惣流アスカや遠坂凛のようなツンデレ系才媛をイメージしていたんだが、セッション始まって動いているのを見たら思ったよりIQ低くてびっくりした。

しかしセッション後によくよく聞いてみれば「今回はガキっぽいところを表に出すことを意識していた」というクリスくんの言。まさか思惑通りに運ばれていたとは思わなかった。

導入ではPC④とともに、危険な呪われた品を保管庫に届けるというもの。実に有能魔術師だからこそ選ばれた! という大変良いイメージだった。データ的にはリソースのそれなりの部分をリアクション方面に割り振りながら攻撃もできるスタイル。今回のバディがドスコイマッチョなところ、いい組み合わせになったんじゃないかと思う。

▼PC③:狼谷 燎(かみや・りょう)

PLは猫屋敷さん。「しあわせの真帆路町」で一度紹介したアームズ/ベルセルク/エージェントの戦人。ヴァルハラに所属しているエージェントPCは、実はおれたちの間で使っているPCでは数少なかったりする。
「粗にして野、しかして卑に非ず」な無頼の戦士系PCとして、果断実行、割りとサバサバした死生観の持ち主なんだけど、中の人のPLとしての立ち回りもあってそこまでヤバく見えないのは一周回ってスゴいと思う。

今回のHOでは街で暴れる強盗団の情報から、強盗団という暴力に狼谷というメガ暴力をぶつけるという展開と思わせつつ、その背後にレムレスがいるかも知れないから調査、というエージェントらしいもの。

破槍ゲイボルグから放たれる必殺の槍術と同時にそこそこ以上の防御性能も併せ持ち、今回のようなソロ任務でも十分活躍可能。こういう戦士として完成されたスタイルは結構好きだったりする。

▼PC④:我上 陰(がじょう・かげり)

「絶望の輪舞曲」にも登場していたアームズ/オルフェウス/サーヴァントの円卓の騎士・ガウェインその人。いつかアーサー王の再来する世界を少々さっぱり良きものとするために、自らオルフェウスへと転化したというスゴい設定。
今回はPC②のバディとして、呪物の封印に当たる。有能魔術師と円卓の騎士の手に依って封印される呪物、ということで、投入されてくるPCそのものがシナリオにハクを付けてくれる形になった。こういうのも悪くない。

データ傾向は前回と変わらず。すべてを費やした攻撃は「外45」というダメージチャートの場外ホームランを叩き出す、メジャーアクションで放たれてダメージ21以外狙えない点を除けばだいたい神業と同様のダメージである。と言いつつ、達成値はマイルドなので、「対応を強制する」系の攻撃ではある。ラウンド中に手札補充ができないこのゲームではこういう組み立ても重要である。というかリアクションせねば死ぬのでAとか切らざるをえないんだが。

▼バディコネクションの妙

ラストレクイエムの特徴と言っても良い(というか手癖でやってると見逃しがち)ルールのひとつに、バディ間のコネクションがある。
通常のFEARゲーだと、コネクションは「PC①→PC②」な感じで、PC①がPC②をどう思っているか、どういう関係か、みたいな結ばれ方をすることが多い(ラスレクのルールの基礎となったN◎VAシステムがいきなり逆転しているのでややこしいが)。

コネを結ばれている相手は、結んだ相手のことを知っていたほうが良いとはいえ、「PC②→PC①」のコネクションはセッション中に結んだり、あくまでハンドアウト選択時の「PC間コネクション」の範疇外であることが主流だ。

そんな中でのラスレクのバディコネクション。
例えば「親友:あなたとバディは親友である。お互いのことは理解し合っており、ともに信じあっている
そう、バディコネクションについては、互いの関係性を包括した結び方になっているのだ。「師弟」とか「主従」なんかは分かるところだが、上記の「親友」とかに至るまで、互いの関係として設定することになるのだ。

もちろん、両者の合意あってコネは決定されるのだが、結ぶ側の提案として双方の関係を決定していく、っていうところ、このゲームにおけるシステム的な「バディっぽさを演じるギミック」として機能しているんじゃないかと思う。
(ちなみに、「任意」があるので、片方は親友と思っているが反対側はライバル視している、みたいな関係性もアリだ!)

▼今回のPC間コネクション

PC①→PC②、アランとミアーの関係については、セッション前に通話で話し合いの場を持っての設定だった。今回はミアーの「ルシファー族の血を引いている」という設定を拾い上げ、ミアーの先祖が自分の親しい人物だった、ということでその面影を見ている『信頼』というもの。
やっぱり異種族モノではこういう年齢差設定は定番だよね!
結果、ハイソサエティたるアランの屋敷にある蔵書をたまに閲覧にくる人間の魔術師:ミアーという面白い関係性が生まれるに至った。良いものだ。

PC②→PC④は前述のバディコネクション。
ここでミアー@クリスが提案したのは「任意」より「満足」。ミアー側からみえれば「あの円卓の騎士!そのバディとしてふさわしいのは私!」という、「釣り合いが取れている事自体が自信の現れになる」という、ミアー自身のキャラクター立てをしつつ、我上の格をも上げるファインプレイ。
一方の我上も、そんな彼女のサポートをすることに「満足」という関係性だ。現在の我上はホストを生業にしている「ステータス:サーヴァント」なので、そういう意味で「仕え甲斐のある人物」みたいな捉え方と結びつけたわけだ。

PC④→PC③、我上から戦人・狼谷に対して。これは我上が自身の設定から、かつてブリテンで戦っていた異民族たちを彷彿とさせる獣じみた生き様・戦い方に対しての「不満」というコネクションになった。ネガティブなコネクションは取り扱い注意では在るのだが、セッション中には事あるごとに、騎士然とした我上が狼谷の言動をたしなめたり眉をひそめたり、という絡み方で、これも自身のRPをしつつ狼谷の無頼な生き方をクローズアップする形でうまく演出ができていたと思う。

PC③→PC①。狼谷からアランに対しては「不満」。既に戦いの現場で何度か振る舞いを見ていたのか、アランの「面倒くさい」という生き方に対しての煮えきらなさに対してのストレートな感情の発露である。これもPC設定をよく見て、その特徴的な言動へのスタンスを明示するというプレイングだ。あえて一方通行的な感情でコネクションを結んだのも狼谷の戦士らしさ…でもあるし、ハンドアウト上、ベルセルクの青年というNPCと交流を持つことがわかっているPC①:アランとの関係を深めすぎない、という計算もあってのことだと思われる(あくまでGMの分析)。

今回はラスレクで特徴的なバディコネクションのことがあったので、PC間コネクションについても分量を割いて書いてみた。
遊ぶ前からセッション内での絡みがイメージできて、GMとしても期待せざるを得ない展開、やはりセッションは予告とかHOとかを公表してから当日までずっと続いているんだなぁと実感したものだ。

2.メインプレイ(ネタバレ無)

▼BGM、悪くない?

ディスコードのbotに、youtubeの音楽を鳴らしてくれるというものがあったので、フリー音源を収集してきてシーンのBGMを流してみた。
ものすごく久しぶりにやってみたんだが、とりあえず悪い方の感想は無かった(良い感想を得られたと言っていない)。

個人的には準備の時間を少し増やして、フリーBGMから「これがいいかなー」ってやっている時間そのものも楽しかったので総体としてはプラスだったかな。

というか、それを通じて触れることができたフリー音源の世界。まぁ詳しく突き詰めると利用規約とかが絡んでくるのであまり深入りもまずいんだが、今まで殆どやって無かった分、新鮮な気持ちになれたものだった。

▼才媛・ミアー!

設定を聞いた段階では、かなりの天才系才媛をイメージしていたミアーだが、バディ・我上の周りでチョロチョロと子供っぽいムーヴをする、ミドルティーンと聞いていたがローティーン気味というか、アニメで言うと画角にいる限りなんか動いているようなキャラクター。
陰陽でいうとブッチギリの陽で、生ける死者を討滅する本作においてはそれだけでキャラが立つ。

……というだけじゃなかったんだなぁこれが。

シーンプレイヤーでないシーンでは画面の動きを賑やかにしつつもカメラの正面には立たず、シーンプレイヤーになったときにはしっかりとセンターを決める(その時はわりと板についたkawaiiムーブ)緩急の付け方はお見事だった。

▼神業の使用回数を増やす神業

今回は我上のステータス:サーヴァントの持つ《献身》。これは他のキャラクターの持つステータス神業の使用回数を1回増やす効果がある。これについて、前回同様にPLからの「なにか助けが必要なムーブして」っていうコールが良かった。
《献身》の経験点条件が「感謝されたなら」というのも相まって、まず「一手足りない」という状況を作ってもらうっていう、「トスを上げてもらう」お願いはとても大事になる。

これなしに「神業の使用回数を増やす神業」を、ワイルドカードのように、パズルのピースを増やすように使ってしまうと、あまりにも状況のコントローラーとしての振る舞いになってしまう、そういうスタイルのキャラクターにこの手のブレイクスルーが備わっていたら、むしろコントローラーとして使うことが経験点の条件になるのだろうが、あくまでステータス:サーヴァントをロールプレイとして出していくために、この「トス上げて」のお願いは良い立ち回りだったと思う。

ところで全然関係ないけどオルフェウスの持つ万能系神業《刹那の玉座》の時間操作能力で「神業の使用前にまでそいつの時間を遡らせた」なんていう演出で神業の使用回数を回復するの、ゲームのコントローラーっぽく、かつ「状況を覆す」という条件にもハマりやすそうでよくないだろうか。

▼GMの悪ノリ

そんな流れで我上の《献身》で増やしたアランの《権力》によって、隠された秘密が明らかになるシーン。せっかく円卓の騎士の助力による情報開示ということで、我上のプレイヤーから聞いていた「他の円卓は、それぞれオルフェウスに転化する以外にも、代々使命を伝えていく道を選んだものもいた」という設定があったため、《権力》の要請に答えたのは欧州にいる「トリスタン13世」。

PL「円卓の時代からだと13世は少なくね?」
我上のPL「いや、トリスタンの名を継ぐ事のは難しいということだろう」

みたいな設定元PLからの解釈による援護射撃も受け、音速を遥かに超える謎の伝達速度で、トリスタンの「詩」による情報開示がなされたのだった…!

ってあたりでGMが悪ノリをし始め。

PCのひとりが《完全なる世界》(経験点条件:調和をもたらす)を使えば「レイヴンたちよ見るがいい! ルシファーはあくまでも君臨するもの! ここに調和は保たれた!」とか別のPCの《刹那の玉座》(状況を覆す)で「レイヴンたちよ見るがいい! 届かずの無限遠に逃れたレムレスを陽光が暴く! ここに優位は覆された!」とかのナレーション経験点チェック。
突如始まった奇行演出に、「さっきのトリスタンが実況してんじゃね?」とう冷静なツッコミが心地よかった。

▼不覚!

ところが、である。
戦士系キャラクターであるところの狼谷は、今回のボスと丁々発止のやり取りをしてもらいたくて色々と因縁を吹っ掛けたり吹っ掛けられたりしていたんだが(詳しくはネタバレの方へ)、そんな狼谷からの攻撃でボスがダメージ軽減特技を使わされ、反撃として神業で即死を与える→狼谷、《増殖》で耐え、間髪入れずに《断罪の一撃》!ボスは神業でそれを凌ぐ…!という息つく間もないような攻防が繰り広げられたのだが。だが。

あまりにもキャッチボールをきれいにシメすぎて、狼谷からの《断罪の一撃》に対する経験点条件「畏怖を与える」がうまく演出しきれなかった! これはセッション後にPLの猫屋敷さんから申告があったこともあり、経験点チェックを逃すことに。

演出を忘れといてなんだが、最新のGF誌でも「対象が記述されていない」ということをしっかり書かれていたので、神業が放たれた時には(まぁ経験点至上主義になる必要はないんだけれども)GMのみならず、参加者誰かがキャッチする体制が理想的だね、これは。

▼アフタープレイ

Twitterのタイムラインで「反省会」とか「感想戦」とか、名前を巡るやり取りとその背景にあるプレイ内容のダメ出しの苦い思い出……なんて話をしていたその裏で。

セッション後に一度経験点まで配布した後にDiscordに再集合して、『ラスレク』にはない「良いロールプレイ」「ほかのプレイヤーを助けた」とかの話を各プレイヤー分順番に話をしたら、そこから話に花が咲きまくって、あそこが良かった、あの立ち回りはうまかった、とかで4時間ぐらい話をしてた(途中シン・ウルトラマンの話題にもなったけど、それでも流石にこの規模は初めてかもしれない)
良かった点ところ、やろうと思って話せば延々と話せることも実感。同時に、こういうのは自分から動いて話題にすることでどんどん広がっていくなぁとも思ったなぁ。でも一番会話を弾ませてくれたのは、いつものメンバーが久しぶりに全員揃ったからかもしれない。自然と会話のポジションが決まってて、なかなか話題が尽きないのだ。

3.ネタバレ感想

さて、ここからはネタバレになる感想部分。ちょっとスペースを開けるとしよう。

















おれの環境だとちょうど空白で1ページ埋まるラインまできた。

▼エピタフ指定の可能性

このシナリオの情報項目は、すべて「公開エピタフ:任意」だ。条件達成時、GMは配置したエピタフから好きなものを公開することができる。
このシナリオでアレンジした点の1つがこれ。
条件(多くは情報収集の成功)を満たしたときに公開するエピタフを予め決めておいて公開する形に変更したのだ。

わかりやすいところでは、予告・ハンドアウト、それにオープニングフェイズを経て、「どう考えても今回のレムレスはベルセルク族」っていう予想が立ってきたところで、シナリオのタイトルコール並みの安定感をもって最初に公開するエピタフをベルセルクにした。
「ですよねー」っていう声と同時に、セッション情報の開幕としてはこれ以上ない選択肢だったと思っている。

今回は人狼をモチーフにしたような犯人探し、ネタバレ欄なのでハッキリいうと依頼人であるアーズィンが実はレムレスである、という展開のシナリオである。そのためにとった方法としては、もう一つのスタイル:グリモアは最後に開くようにするという仕掛け。
シナリオ中盤でボスと思しき女:偽月喰らいがベルセルク=イージスとして立ちはだかってくる事も含めて、最終的な答え合わせとして、ボスとの決戦間近になって最後のスタイルが明らかになるという流れを仕向けたわけだ。

もうひとつ、今回のアフタープレイで出た話としてはエネミー神業《証拠隠滅》の開示タイミングによるシナリオコントロール。
ぶっちゃけ今回は察しのいいPLもいたことから序盤からアーズィンもしかして…?みたいな流れもあったのだが、《証拠隠滅》が開示されていないことで、メタレベルで「今はそれを追求する流れじゃない」っていうのが示されていた。
シナリオ上、「ここからは秘められた情報を暴くターンだ!」っていうメタ情報を渡すタイミングをコントロールするのに、エピタフ指定は使いやすい。

エピタフ指定は一部だけ、というやり方もアリだと思うので、今後のシナリオ作成の足しにできるテクニックを掴みかけた。

▼アーズィンの扱い

PC①、アランとアーズィンのやり取りが面白かった。その本性はラスボス「月喰らい」ということで、身の丈に合わない尊大さが見え隠れするRPをする、という流れではあったんだけど、今回のアランのハイソサエティ取得を含め、ベルセルク族にはそれなりに尊大さが出るということを事前に教えてもらっていた事もあったので、アーズィンの尊大さはむしろ虚勢のような雰囲気に伝わるように調整。
結果的にアランはかなりアーズィンのことを気にかけてくれた。
このシナリオ、PCの序盤モチベーション(今回の場合はアーズィンの力になる)が見事に裏切られる作りなので、気にかければ気にかけるほど、PCとしては見事に裏切られたことになってしまう。PLとしてはかなりダメージを負いやすいピーキーなセッティングだ。

今回は事前の情報開示で「モチベーションに対してビターエンドになる」というネタバレを先にしておいたこと、あと《神業》による欺瞞ということで、「高貴なるルシファーをも騙してみせる恐るべきレムレス」を演出することで、PLの納得力へのダメージを軽減する方向で調整した。

結果的に、PLからは「それでもムカついている!」というコメントがもらえて、モチベーションは「憎きレムレスを討滅する!」に揃えていくことができた。

▼行儀のいいPLに感謝

ミドルフェイズの山場。《操り人形》によって操られた呪物保管庫の人がアーズィンを刺すシーンがあるのだが、ここでアーズィンに思い入れを持ってくれていたアランPLなどは「止められませんか!?」と聞いてくれる流れに。当然だよね!

そこでGM「ゴメンこれはムービーシーンということでお願いします」

って話をしたところ、あっという間にポジションチェンジして「アーズィン!大丈夫か!」って流れにシフトして、ミアーも「回復魔法を(データにはない)」とか狼谷PLは「なにか狼の遠吠えっぽいものが聞こえたとか無い?」って確認から、「なにかされたと察知してすぐに廊下に警戒のために飛び出す」とか、ホント瞬時に「刺されたあと」の行動にシフト下のホントに熟練のワザマエだと思った。ありがてえありがてえ。

▼行儀悪くしようとすればこんなこともできる

行儀といえば、グリモアの神業《事象改変》。これ「困ったら他の神業ひとつ分」とは書いてるが、基本GMが認める限り何でもできる神業。

ついでにいうとスタイル:メディックの《起死回生》は、同様のゲームの神業と違って「そのシーンで死亡したPC以外でも復活させられる」(ただしGMが都合が悪いときにはキャンセル可能とわざわざ明記されている)。

プレイ済みのひとはもうおわかりですね?

アーズィン、《事象改変》にて死んでなかったことになりました。

どうも《事象改変》余りそうなんで、念のため《起死回生》のテキストも読んでいたGM、使い所を迷っているPLに「ちなみに今回はキャンセルしないよ」と吹き込んだりもしたんだけど。

ミアー@クリスくんは「それだ!」とばかりに《事象改変》の使用を宣言。どんな演出にしようか……ってところでGMは我に返る。

「ごめん! 神業の使用差し戻ししていいから、まずはアーズィン担当のアラン@坂崎さんの許可の上でやってー!」

危うく本気で行儀悪いことをするところだった。
PLのクリスくんも「まったくだ!」と同調。坂崎さんに確認の上でゴーサイン。

アーズィンの行く末については、担当PLの方から「悲しい別れ」としてエンディングをやりたい、みたいな意向があるかもしれないからね。その辺無視して復活させるのも行儀が悪いというものだ。

▼狼谷と真・月喰らい

今回は力を取り戻した真・月喰らいと丁々発止をやってもらうつもりだった。何しろ同じベルセルクで、ネオの要素として片やアームズ、片やグリモアという捻れた鏡写し。相手も暴力大好きと来たものだ。

特に最終戦闘前のやり取りが冴えててよかった。
「狐の真似なんてらしく無ェな」
まさにまさにという話で、力を取り戻すために(シナリオ本来の記述より)演技をしていた真・月喰らいの状況を見事に指摘した形になった。PLの知性が透けて見えるだけかもしれないが、この狼谷という男、ただの戦闘バカではなくこういう方面の鋭さもあってカッコいい。

必殺の槍撃を〈障壁魔術〉で致命傷とならない形でしのいだ真・月喰らい。受けた傷からの呪詛で狼谷の心臓を呪い、爆ぜさせようとする(《殺戮》)が《増殖》で得た膂力で槍を振るい、まとわる呪咀を払う狼谷。
その勢いのままに放たれる(ここ重要、《増殖》の経験点条件は「戦い続ける」)《断罪の一撃》が今度こそ真・月喰らいの心臓を捉えようとした時《絶対防御》を使用、力を取り戻していた右腕の掌でそれを受け、貫かれながらも寸前で止める、という一瞬の攻防。

割って入ることも躊躇われるような暴力のぶつかり合いを思わせる神業の応酬に、うっかり《断罪の一撃》で畏怖することも忘れてしまっていた。不覚!


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