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4/22 天下繚乱「仏滅之修羅」

※イラストはボスキャラをイメージしてAI作画したもの。

こっちに書くのは久しぶりになってしまったセッションレポ。今回は天下繚乱、自作のシナリオクラフトルールを一部使いつつ、メインはPLからの「使いたいPC」を受けてからのシナリオ作り。俗に言う「当て書きシナリオ」に近いやつになったので、今回はその経緯を振り返りながら書いてみる。

1.発端

日程的な都合でこの日セッションに参加できたのはおれ含め3人。うちひとり、クリスくんは先週GMをやってくれたし、今回は自分がGMに立候補することになった。

さて、遊ぶにあたってPLにアンケートを実施。

①いつものシナクラ
②PC出してもらってネタ考えるシナクラ
③やっぱりやめとく

このとき③が一人でもいたら少人数だしやめておこうかなー、という気持ちも多少あったんだが、それはともかく②が他を圧倒する得票となった。まぁいつものシナクラもウケはいいんだけどね。DIYとオーダーメイドの選択肢があったら、やっぱりオーダーメイドの方に人気が集まるよね。

……2人しかいないのにこのアンケート意味あったんかな。

2.わるだくみ

今回のnoteの核心部分に触れていこう。

エントリーがあったのは届け出順に、

○沖田総司(青龍/秘剣使い/新選組)
最近のクリスくんの推しキャラ、時空破断の際に健康な女性の身体に生まれ変わった新選組の沖田総司。病のことや仲間と共に行けないことなど、ある程度達観とか諦念が芽生えていたことから、新たな健康な体を得たことを天啓と捉え、新選組の一員として活動することを第一にしつつも、妖異と戦いつつ新たな人生を謳歌している。

○瓔珞/阿修羅(朱雀/玄武/神霊)
最近の坂崎姉さんの推しキャラ。リアル学生時代の夢キャラをルーツに持つという歴史あるキャラクターだ。放埒な僧侶のカバーを持ちつつ、尚武の神としての側面から、人々から妖異を守る戦う姿をも持つ。
玄武まで手を伸ばしているので、自身の戦闘力とともに戦うものへの加護を与える側面も持っている。

といった二者。
となると
①お侍と修羅……であれば武侠モノ
……と考えたのが発端。そうなると、今回の沖田さんは秘剣使いでもあるので、秘剣使いのボスキャラにしようというところから着想を始める。

でもそれだと瓔珞/修羅の方にパンチが効かない。はてさて、からの

②ボスの動機は「負けるのが怖い」にした。
武門に生まれながら、負ける恐怖から羅刹となった存在。本来は尚武の神様にすがる存在だったことにする。戦いの守護神ならば、当然に生まれる勝者と敗者の構図にどう応えるか。
阿修羅自身が帝釈天に敗北してから護法善神へと変わった存在だしね。

さらには沖田さんは時空破断にてそれを克服した立場。ある意味「天が味方したか、せずに羅刹に落ちたか」という対比になるし、きっと病床にあった沖田さんは「負けるのが怖い」立場にあったろうしね。きっと刺さってくれる。

さて、ここからもう一捻り。
ボスはどんな羅刹剣豪にするか。イメージソースは目の前にいた。

③ボスは六本の腕を持つ阿修羅を自称する剣豪である。
よくよく考えれば騙りは剣豪モノに付きもののネタでもあるしね。何者にも負けない強さを求めた結果、「倒した相手の腕そのものと、刀を奪う」というギミックも搭載して伝奇モノ感アップだ。

さて、秘剣はどうしようか、と考えたところで0.8秒くらいで答えを得た。

④ボスの秘剣は《秘剣:八面阿修羅返し》である。
だって阿修羅だもん。もともと複数の刀を所持していないと使えない秘剣、ってのも今回のイメージに近いからね。

しかし、PL2名のところに「場面(選択)」攻撃の《八面阿修羅返し》をカマすのもいささか面白みがない(沖田の《秘剣:淀み刹那》がいい感じに相性がよく、場面攻撃の達成値を-15できる点ではとてもギミックとして使いではある)。

とりあえず、この辺まで決めたところで両PCには導入イメージを伝えることに。ともに「腕」を奪われ刀を奪われた人物を巡るお話のイメージだ。
沖田は共に戦った英傑(2人PCだったので、奥義の補填目的で自PCからゲストを決定)の頼みで犯人を追い、阿修羅のもとには父親を羅刹に奪われた少年が阿修羅像に怒りをぶちまけるところに立ち会うという形。

一度イメージを投げると、あとはそのやり取りの中からシナリオの隙間を埋めることが出来たりするよね。今回は阿修羅のPL@坂崎さんからいいイメージをもらった。
少年の父親(道場主)はこの阿修羅堂に通っていたことがあり、そのときに知り合っていた、という設定を提案してくれたのだ。阿修羅堂に来た少年にその面影を見る、という展開だ。

さて、なにかこうシナリオギミックとしてつかえないものか。そこで目をつけたのが「対象:場面(選択)」であるとともに「射程:視界」である点。

⑤ボスの最終目的は御前試合で《秘剣:八面阿修羅返し》を使うこと。
いざ発動しても、これを阻止するための阿修羅の《破邪顕正》。自身の《千変万化》でお代わりもう一回、っていうのもアリ。
動機は公開情報だし、そこからのもう一捻りで「誰にも負けたくない」の要素から時の最高権力者を狙う、というのもまたヨシ。

が。

《八面阿修羅返し》で場面攻撃させると大変だ、っていうネタ、これで2度め。それも父親の敵討ちってところでも共通してたりして、ちょっとこれはもう少し捻ったほうがいいかな……とか思い始めた。

じゃあどういうところに「対象:場面(選択)」を打ち込むのが面白いかなー、というところでしばし考えた。そこで目につけたのが「射程:視界」。なるほど、目に入るところだったらどこでも、というこちらを優先しよう。かつてアルシャードで「射程:視界」を持つPCのトロフィーとして衛星からの攻撃なんてのをやらかしたことなんかも思い出しつつ、天下繚乱で衛星ってわけにもいくまい、と更に考える。

「射程:視界」の対象をある一瞬、視界の先に捉えることのできる条件、みたいなのを作ればいいギミックになるし、じゃあ手の届かぬ先にあるモノをなんにするか……

ひらめきってのは突然に降ってくるもの。
そしてこれまでの情報の中から掬い出せるものでもある。

PCにも阿修羅。ボスも阿修羅を名乗る剣豪。かつては仏敵だったもの。これだ。

⑤’ボスの最終目的は天高く顕現した極楽浄土に《八面阿修羅返し》を放つことだ。
我ながら天下繚乱らしくなってきたと思う。ならばそのための鍵はどうするか。おりしもD&Dの映画を見ていたおれは、こういう時こそそれ用のアーティファクトで状況を埋めよう、と考えた。そして「蜘蛛の糸で編まれたという曼荼羅図」なるものを考えた。これを燃やし、焼け落ちたときに一時だけ、天空に極楽浄土が実体を持って顕現し、衆生を救済せんと仏がその手を差し伸べるという神話級のアーティファクトである。

阿修羅堂に参拝していたという阿修羅知人の剣豪が息子に託していた、という流れもアリではないか。

しかし、さすがに阿修羅を名乗る羅刹といえども、奥義一発で神仏を滅することは難しかろう、ということでアーティファクトを追加する。

⑥ボスは目的のために、神をも殺す刀を入手している
ボスが刀を奪っているという設定から、こっちはもう入手済みという流れにして、ついでに沖田さんに関連する話として初期の調査目標にする流れにしてみた。奉納刀として作られた逆刃刀が、どのような呪われた逸話か、神仏に特攻のある武器となってしまったものである。
データ的には「分類:妖怪には+対象のキャラクターレベル」、「分類:神霊には+対象のキャラクターレベル✕2」のダメージを与えるというもので、実際に展開にいる仏様などはレベルが青天井なので青天井✕2のダメージを受けてあえなく滅ぼされるというわけだ。

関係なさそうなふたつのアーティファクトを《秘剣:八面阿修羅返し》が結びつける、という展開。

うん。シナリオだいたいできた。
タイトルは前日くらいに付けたかな。相手の狙いがわかった時点で本当の意味がつながるやつ。個人的にはお気に入り。

3.メインプレイ

クリスくんも感想として書いてくれていた通り、ハイライトの多い展開だった。

●GMC、森の石松と沖田さん
秘剣使いにして天才剣士たる沖田さんを強者としてリスペクトする渡世人・石松と、「理屈抜きに強いけど人生を楽しんでいる天才」な沖田さんの掛け合いは楽しいものだった。リスペクトのしがい・されがいがある関係だったね。
実は渡世人として持っている《※金城鉄壁》が今回の《秘剣:八面阿修羅返し》に有効なもうひとつの手になりうるという状況もあったりする。

●自分で持ってきたネタをふくらませる阿修羅
阿修羅像に父が討たれた悔しさをぶつける少年。その面影に知人を見た阿修羅……というOP。神霊PCを迎え入れておきながら、その加護が得られなかったこと、どころか阿修羅を名乗る剣士に父が討たれたという恨みをぶつけられる、というビハインドなスタートを見事に楽しんでくれた。
自身が阿修羅の化身であることは明かさず、父の知人である僧として、少年が持つ曼荼羅図にただならぬ気配を感じた彼は少年からそれを借り受けて羅刹剣士を追う……という流れはお見事。

●出会いのシーンはコミカルに
阿修羅、最初の情報収集でイベントチャートを振ったら『東海道五十三次』の弥次喜多に出会って話を聞くことに。そして彼らの話から曼荼羅図の噂を……聞こうとしたらファンブル。ファンブル表の結果は「朝まで飲み明かしてしまう」!

ということで弥次さん喜多さんと朝まで飲み明かした阿修羅、初手の情報収集に失・敗!

一応その後でも「登場判定に成功したPCが情報収集判定に成功すればOK」というレギュレーションなので、そのつもりがなかった沖田さんが明け方の阿修羅さんに接触、「あぁ、それなら……」と聞いたことがあるという流れで情報収集をサポート!

この辺の流れが読みきれないのがシナリオクラフトのいいところ。背景情報以外の部分はこうやってイベントチャートで進めながらの情報収集。

●最後の「なぜ」
負けることから逃げた羅刹が、どうして極楽浄土殲滅計画を立てたのか、ここをつなぐ役割として抜擢したのが(いつもの)”神機軍師”由比正雪。
「この計略、果たしてあなた方に防げますか? フフフ……」というお約束がやりやすくてほんとに重宝する。
そのうえで今回はPLから「《八面阿修羅返し》をそう使うかー!」という感嘆の声が聞けたから大体の本懐は果たした。

●決戦の前に
「お前たちは敗北が怖くないのか? 武芸者にとって、それはすべてを失うこと」という問いかけを前に、だからといって剣士として、英傑として羅刹を討つことから逃げるわけにはいかないと立ち向かう沖田さんに、「敗北は終わりではない」と、実際帝釈天に破れたことを引き合いにする真・阿修羅。
ここでも大体の本懐が果たせるやり取りだったと思う。

曼荼羅図が焼け落ちるのは3ラウンド後。それまでに羅刹を倒さなければ天高く極楽浄土は現出し、羅刹は残った奥義で《八面阿修羅返し》で神殺しの刃を振るう……というタイムリミット付き戦闘。

PC2人だから、実質6メジャーアクションというのは割とスリリングだったかもしれないが、GMは容赦なく【命中値】でリアクションする《突き返し》なんかも取得させていた。ふふふ。

●最期の「敗北」
《秘剣:淀み刹那》まで繰り出した激戦を制した英傑たち。
(その実、沖田さんのリソースぶっコミの初手で残りHPは2だったんだけど)
「いつか、お前たちも、老い・病・そして死と言った敗北から……石にかじりついてでも逃れようとする時が来るはずだ……」と呪いの言葉を吐いて倒される羅刹。ここで阿修羅は見事に仏教の「生老病死」を拾っての良いコメント。

それに対する返礼……というわけではないが、羅刹の最期を追うように燃え落ちた曼荼羅図、天高く現出する極楽浄土の姿が薄れて消えようとするときに、かつて会った武芸者の声で「息子を頼む…」と聞こえた気がした、みたいな流れにできたのは幸い。

*          *

ということで、今回の感想はGMがシナリオを思いつくまでの頭の運動(?)みたいなものを中心にして詳しく書いてみた。同じように作るGMもいれば、全く別のルートからシナリオにしていくGMもいるだろうが、PLの持っている”物語の種”にめがけて色々と盛っていく作業そのものの楽しさが少しでも伝われば幸いだ。

それでは、良いセッションを。



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