TRPG TIPS:そのネタバレは何をスポイルしているか

話の出どころが分からないのはTwitterあるあるだとして。

そのTRPGシステムをやりこみすぎてエネミー識別ルールが機能しない、というTLのお話。

もちろんゲームによってエネミー識別ルールはバラッバラで、識別判定に成功した結果で得られるものも千差万別。ルールブックの該当ページを示し、GM裁量で配分できる固有能力まで全て開陳するSW2.5のようなシステムもあれば、属性と特技、防御修正のみ、みたいな形で大まかなデータ傾向がわかるアリアンロッドやコード:レイヤードみたいなゲームもある。

DXとかSRSとかはたいてい、エネミーデータの識別については無頓着で、いわゆる復活系とか打ち消し系リソースが推奨されない、ってガイダンスがあるくらいのデータ確認はできない系。

N◎VAとかかつては〈知覚〉と組み合わせて相手の装備を確認したり、その場合「隠匿レート」が最大目標値になるので制御値上げるより簡単だと、〈知覚〉組み合わせ戦術避けに高隠匿レートのサイバーウェアを仕込んだり……と、閑話休題。

エネミー識別周り、システム側からどんな風に戦闘を楽しんでほしいか、を割と積極的に明示した要素なのよね。デザイナーのデザイン観が出やすい、とも言えるかも。

敵のデータを知っていた方が当然に有利になるのは、大体の戦闘デザインで共通だろう。だから、識別で有利に、っていう展開は識別を担うPCにとっては活躍しどころ、トロフィーのひとつだ。
逆に、識別できるゲームで「知っていても知らなくても戦術変わんない」になっちゃうと、識別系のデータを持つPCの活躍のチャンスが1つ減ってしまうことになり、楽しみうるポイントをスポイルする1要素たり得る。(まぁこれはキャラクタービルドの段階で、敵編成に対しオールラウンドで戦える/出来ることを先鋭化する……のパターンにおいて起こりうる話なのだが)

逆にシステムにそれら識別が組み込まれていないゲームに置いて、それは明示されていないトロフィーということになる。
だからこそ、情報収集によってその一部が明らかになる!とかをシナリオに組み込みやすい利点があったり、ぶっちゃけ残リソースを明示しないことによるバランス調整という利点と比較した結果だったりするのだろう。

ちなみにおれはどっちも好きだが、苦戦を強いられているときにデータ明示されてる方が詰将棋感が強く、PLが表に出てきやすいのは否めない。データ明示されてない状況だと「どうせ悩んだところでわからんし!」って吹っ切れやすいかもしれないw

そんなわけで、識別ルールが整備されていようがいまいが、運用で同等のことを持ち出すことはできるし、識別に成功し、戦闘を有利に進められるというトロフィーが存在する。大事なのはシステムに規定されたルールでもセッションルールでも、それが楽しむために用意されたものだということだ。

でまぁ、そういう視点で見てみると、エネミーデータとその識別をGMが用意してるってことはそこで活躍してほしい、識別判定の成否で一喜一憂してほしい、っていうGMからのラブコールみたいなものだ。PLの立場でいうと、例えるならシナリオ既知プレイと同じようなものと思えばいい。知っているのに知らんぷり、シナリオ既知プレイでできるんなら、それと同じ脳細胞を使って知らんぷりするのが推奨である。
(もちろん、敵のデータ知らないフリで動いた結果自分のPCが活躍できないとかそういうことはあるだろうが、そんなキミでも既知プレイシナリオの展開を先回りで立ち回り、GMの「楽しんでほしい」を蹴るようなスポイルは流石にしないだろう)

他方。
GMの方の達成感としては、「エネミー識別に成功したからこそ有利な戦況になった」っていうデザインができればそれに勝るものではない。識別ルールでの活躍を考えるとき、慣れたPLに喜んでもらうための一手として、オリジナルエネミーを用意してみるのもいいかもしれない。
既知か未知か、PLの熟練度で活躍度が変わるのは望むところではないよね?

いずれにせよ、楽しもうとする試みは推奨されるべきである。
未知/既知によって、その「楽しもうとする試み」の何が維持され、何がスポイルされるかを見極め、「楽しもうとする試み」自体をGM/PLが一緒に育てていければと思う。


話は大きく逸れるが、「既知によるスポイル」がゲームそのものの成立を阻害すると考え、マーダーミステリーは「既知では遊べない」という方向に舵を切っているわけで。それもまたゲームに真摯な態度だと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?