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TRPG TIPS:先生が「まず描写」というワケ

TRPGオンラインフェスティバルで「友野詳✕鈴吹太郎 ドラマチックマスタリングを語る」を視聴してきた。

配信の中でも「録音は駄目だけど内容のレポートはOK」というお話があったので、自分の中での整理も含めて、鈴吹先生がドラマチックなマスタリングをする上で「明日からやって上達がわかるテクニック」として紹介されていた内容について書いてみようと思う。堂々と人の褌で相撲を取るってわけだ。

そもそも「明日からやって上達がわかるテクニック」なんて都合のよいものがそうそう転がっているわけがない、あったらみんなやってるよ! みたいな話になるんだが、これがまた、意識せずにいると出来ないものなんだよな。

だから、これは「TRRP TIPS」なんてタイトルを付けながら、自分の意識付けのためのアウトプットだ。堂々と他人の褌で相撲を取る滑稽な行いではない、はずだ。

前置きが長くなってしまたがドラマチックなマスタリングをする上で「明日からやって上達がわかるテクニック」、それは

シーン開始時に、キャラクターの目に入るものを順にしっかり描写する だ。

映画でも、なんとなく「あ、これこんな風に見せたいシーンだな」って思う「綺麗な絵」ってのがあるもので、アレを口頭の描写でやっちゃうイメージ、とおれは理解した。

1.描写とは

何でも定義付けから入ろうとするのは面倒くさいヤツの典型だよな。
とはいえ、今回取り上げる「描写」については、基本的にビジュアル面、視覚的な物を中心に語っていく。心理描写とかそういうヤツは、今回はどちらかというとその対局にある「セリフ」に類するものとして分類しておく。

つまりは映像だったり、三次元的な配置だったり、カメラ位置だったりの部分。視覚的情報っていうやつだ。

まぁ、キャラクターの”目”を意識して、気を失うときに徐々に暗転する情景、とか動揺したキャラクター一人称視点で描写ごと揺れ動いたりの演出もあるので、心理描写と情景描写を完全に切り分ける事は難しいんだけどね。

おっと。今回のnoteはおれ=MOOの環境を想定しているので、オンセで背景の一枚絵を見せたりキャラクターの立ち絵を表示したりレベルの視覚情報をGMの描写によってどう補強するか、くらいの技術レベルで書かれている。

今後VRTRPGの隆盛によって、この辺りの視覚情報については技術のパワーで人間による口述というインターフェースをやすやすと飛び越えていく可能性だってあることを一応補足しておく。
(個人的にはARでテーブル上に展開するのがクールだと思うんだけどね。やっぱりダイスはナマで振りたいと思ってしまうのだ)

2.舞台を描くこと

さて、面倒くさい定義の話はこの辺にしておいて、描写についての話だ。FEAR系ゲームのシナリオ描写フォーマットでも、「■描写」みたいな形でセクションが分けられているし、なんだったら「まず描写を読み上げること」とまで書かれているから、鈴吹社長の仰っていたテクニックは、実はそもそもFEAR系ゲームのフォーマットにおいてはデフォルトで搭載されているメソッドだったりする。

大事なのは映像作品っぽさ=没入感。

まず目に入るもの、そこから広がっていく描写。大昔のPCのものすごく遅い描画のようでもあるが、ここで大事なのは視点誘導=意識誘導。映画での印象的なシーンって、没入していくように視覚的も計算されているよな。あれを口頭の描写で代用してやるわけだ。

映画的な手法、という点ではカメラ位置って結構重要なファクターで、それで言えば決してキャラクター視点に限るわけではないが、セッションで印象的なシーンをやるときに、キャラクター視点がまず挙げられるのはひとえにPCとしての没入感を増すためだろう。

おれがこのテの話をするときに必ず引き合いに出すのがハリウッド板ゴジラ(2014版・いわゆるギャレゴジ)のホノルル空港、ゴジラが初めてその全身の姿を観客の前に表すシーンだ。

迫るゴジラ(ともう一体)にパニック状態の空港を左右に揺れる映像は、そこにいる「誰か」をイメージさせる。それが画面左の旅客機にフォーカスしたかと思えば飛行機は右に吹き飛ぶ。吹き飛ぶものを追うように(これも目線だ)カメラは動き、吹き飛んだ飛行機は「なにか」に当たって爆発する。その「何か」は黒くゴツゴツした岩壁のようで、カメラはその主に向かって上昇……仰ぎ見るその姿は…ゴジラだ!

てな塩梅。ファーストインパクトの瞬間をここまで大事にしてくれたらゴジラファン冥利に尽きるというものである。

この没入感が、ドラマチックなセッションになるように各PLの背中を押してくれるというわけだ。そして、状況の描写はPCの次の行動の足がかりになる。その場面の各キャラクターの位置関係や部屋の雰囲気など、演出に使える糸口にできるのだ。

地下空洞なら、言い返した声は幾重にも反響するかもしれない。路地裏スラムなら、相手の背後に見える都市の光に、企業に属するヤツの表情は伺いしれないかもしれない。ムカつくアイツの胸倉を掴める距離なのかどうかは、別に戦闘開始時の距離がなんだか10mあるのと関係してもいいし、しなくても良いのだ。

他にもカメラアングルを意識した描写はいくつもテクニックはあると思うけど、今回はPCの目線意識、ということで。

3.NG案件

同時に、このテクニックは「これをやらないようにした方がいい注意点」もあぶり出すことになる。

すなわち、さっきの逆、冒頭からNPCのセリフで入るシーンは、オススメされない、ということだ。

これは自分にもものすごく経験があって、GMの思い入れの割に盛り上がらないケースはこれに該当していた気がする。

配信でも仰っていたが、セリフを喋ってしまうとPCは「何か返事をするタイミングが来た、なにか答えなくちゃ」と思ってしまう。
その上、セリフで始まったシーンをイメージできるのはそのシーンを考えているGMだけだ。声をかけられた場所もシチュエーションも明らかになっていない場所でPLが自分のPCを動かすのは結構難しい。

動かしてみた結果、GMのイメージする距離感と全く違う状況、なんてコントみたいな状況も何回かあった。正直PLは足をすくわれた感があって、これは逆に没入感を削ぐ。振られたと思って動いてみたら監督から「カット!そうじゃない!」って言われるわけだからね。

「絵」のないメディアでいえば小説やラジオドラマなんかも含まれるが、そういう発信者と受信者だけのメディアと違って、TRPGでは実際に動くPCが存在する。実際に動かそうとする側の立場に立てば、手法によって適・不適はあることがわかる。

セリフから始まる印象的なシーンが活きるメディアも確かにあって、そのとき感じた印象をTRPGでも使いたい、というのは分かるんだけど、ここは我慢、ということだ。

セリフから始まる印象的なシーンと、PCの目線を同時に活かすなら、シーンそのものを暗闇にしてみるのもアリかもね。
(ただし一部のPLはすぐに暗所のペナルティとか明かりの準備とか言い出すのでやっぱり「演出的な暗闇」であることの描写は必要かもしれない)

4.力を入れるところを決めておく

トークショーでは、相方たる友野詳先生がここで良いことを言ってくれた。

「ずっと描写に力入れたシーンやってると疲れるんちゃう?」(記憶に頼って意訳)

NG案件に書いてるような失敗のことを思えば、描写から先に入る、ってのは忘れないようにしっかりやっていくとしても、描写に力を入れてしっかり見せていくのを全部のシーンでやるのは大変だ。実際に映画で見てみても、おれみたいな素人でも「見せたい絵」が見えるようなシーンはそんなに数が多いわけじゃない。

しっかりと描写に凝る=シナリオにもしっかり書き込んでおくのは、各導入と、大事なシーンいくつか、ってくらいに絞り込むくらいがいいんだろうな。

問題はその描写の盛り方、なんだけどな。

トークショーで「シーンを見せる描写の仕方のコツってありますか?」ッテ質問をして、取り上げてもらったのさ。

なんせ、もともとの話題が「明日からやって上達がわかるテクニック」なのだ。きっとこれにもいい感じの答えが帰ってくるに違いない、と思ってたおれは足をすくわれた。

(意訳)「自分たちプロだから……練習あるのみかな」

ウッス。

文章で場面を表現したもの、要は小説とか云々を読んだりの積み重ねが大事、ということだ。逆に、映像作品を見てそれを「〇〇みたいなの」以外の表現以外の方法で相手に伝えられるようになること、なんかも含まれるだろう。

放送では「みんなで同じ作品を観て『〇〇みたいなの』っていう方法もあるよ!」って紹介されていたけどね!

まぁ、最初はとにかくきれいにうまくやること、よりも、ノッてきてついついセリフ優先に進めてしまうところをグッとこらえて、しっかりと順序を意識して、”描写を先”にしていくことを気をつけること、なんだろうな。だからこその「明日からやって上達がわかるテクニック」というものだ。

ということで、今回はトークショーのおかげで改めて描写の大切さをきれいに整理できたので、忘れないように言語化して記しておくための記事。

ついでにおれ以外のTRPGerが、どこかで役に立ててくれれば幸いである。

良いセッションを。

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