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リモートワーク環境下におけるコラボレーションの探究 —— バーチャルオフィス編

会社全体で WFH 生活が始まって約 3 ヶ月が経過した。この間、リモートワーク環境下における同僚とのコラボレーションを促進する方法を探究してきたので、現状について共有したい。

コラボレーションを促進するための工夫は色々あると思うのだが、この記事ではバーチャルオフィスサービスに焦点を当てて紹介する。

TL;DR

- 同僚との常時接続用アプリとして複数のバーチャルオフィスを評価した
- バーチャルオフィスは CPU 使用率の低さ が最重要
- 現時点の最適解は Remotion
- 同僚との常時接続と会議用のアプリは使い分ける

前置き

勤務先(Uzabase/NewsPicks)は、フルフレックスかつ出社義務を伴わない会社であるため、緊急事態宣言発令前からリモートワークが積極的に行われていた。しかし全員がリモートワークするようになると、これまでとは異なる課題感が目に付くようになった。具体的には以下のプロセスである。

- 同僚に声をかける度に Slack でメンションを飛ばし
- Google Hangout(現 Meet)の URL を発行し
- 同僚の参加を待って会話する

会議をするほどではない、同僚とのちょっとした会話 —— 従前であればオフィスの同僚に声をかけるようなコミュニケーション —— が、極端にやりづらくなった。言い換えれば、コミュニケーションコストが高騰した感覚を持った。

コミュニケーションコストの高騰は対話を減少させる。 ちょっとした会話を躊躇い、ひとりで悩む時間が増え、同僚とのコラボレーション機会は減少し、結果アウトプットの質は低下する。

感覚的な話で申し訳ないが、リモートワークは恐らく、個人の「効率性」を増大させる。集中しやすく、時間の制約もなく仕事に取り組むことが出来るようになるからだ。しかし チームの生産性・あるいは創造性 を考えたときに、本当にリモートワークは創造性を高めているのだろうか?

僕自身は、同僚とのコラボレーションを重視している。会社で働く最大の価値は、コラボレーションから新たな価値を創造できることである。これがなければ、チームで働く意味はない。そう考える僕にとって、コミュニケーションコストの高騰は看過できるものではなく、リモートワーク環境下におけるコラボレーションツールの探究が始まった。

バーチャルオフィス

コロナ禍で俄かに盛り上がっている領域のひとつに、バーチャルオフィスサービスがある。Pragli のブログ を引用すると、バーチャルオフィスとはリモートワーク環境下における重要な課題 —— 「孤独」と「コミュニケーション」 —— を解決するためのサービスである。具体的には、以下の機能を提供する。

- 同僚の存在を認知させ親密なコミュニケーションを生み出す
- 肩を叩くような素早いコミュニケーションを可能にする

現下でも次々と新しいサービスが誕生しているところではあるが、例えば WFH STACK では、現在 6 つのサービスが紹介されている。

僕自身は、前述の課題感を解決するにあたり「気楽にコミュニケーションをとれるツール」としてのバーチャルオフィスに目をつけ、これらの中から次の 3 つを、それぞれ 2 週間ずつチームで利用して評価してきた。

結論として、我々のチームでは Remotion を愛用している。

バーチャルオフィスに必要なもの

なぜ Remotion を利用しているか。これは一言で言えば「最も軽いから」である。

Remotion を使用する前に使用したサービス(Pragli/Tandem)に関しては、使い勝手にそれほど大きな不満はないものの、日が経つにつれて徐々にメンバーが常駐しなくなってしまった。これは何故かというとシンプルで、「アプリを起動していると重い」から。結果、みんな少しずつアプリを起動しなくなり、過疎ってしまう —— 同僚と常時接続してコミュニケーションを促進するためのアプリなのに、そもそもアプリを起動しない —— そんな状況に陥ってしまうことが分かってきた。バーチャルオフィスとして機能しないのだ。

機能だけで言えば、恐らく  Remotion は上述したサービスの中で最もシンプルだ。最低限の機能しかない。にも関わらず唯一使い続けられているのがこのサービスなので、恐らくバーチャルオフィスにとって(見過ごされがちだが)実は非常に重要なファクターが「動作の軽さ」なのだろう。

※ 余談だが、技術的に Pragli はウェブアプリ・Tandem は Electron を利用したアプリとして提供されている。いずれもブラウザベースの技術を利用してアプリが動いているため、特にレンダリング処理を中心に CPU 使用率が高くなる傾向にある。これらと比較すると、Remotion はネイティブアプリのようで、そもそも技術ベースが異なる。僕の使用している Macbook 基準の数字になってしまうが、ざっくり言えばブラウザベースのアプリ(Pragli/Tandem)は対話をしていないときでも CPU 使用率が常に 20-30% 程度・対話を始めると 60% 以上 CPU を消費するが、Remotion は対話をしていないときで 0.1% 程度・対話をするときで 20-30% 程度とかなり軽快に動作する。この差は根本のアーキテクチャを変更しない限り、なかなか埋められないだろう。

Remotion で出来ること

それでは Remotion で出来ることについて簡単に紹介したい。

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Remotion をインストールすると、このように画面上に同僚が表示されるようになる。以下のようにユーザーが出来ることは極めて少ない。

- 自分のステータスを設定する
- 同僚のステータスを確認する
- 同僚に声をかけてビデオチャットを開始する

また、画面の共有機能もついている。この画面共有機能は決して派手なものではないが、仕事をする上では必要十分な品質だと思う。

個人的にはステータス設定が面白いと思う。Remotion では以下の 3 段階のステータスが設定できる。

- Open
- Around
- Away

オンラインステータスが Open と Around に分かれているのが珍しいところで、Open は「いつでも声をかけられる状態」を示している。このステータスの場合、声をかけると即座にビデオチャットが始まる(Around の場合は声をかけて応答があるとビデオチャットが始まる)ので、コミュニケーション上のストレスが非常に少ない。僕自身は極力 Open ステータスになるようにしている。

会議用のアプリとバーチャルオフィスは別物

最後に、会議用のアプリとバーチャルオフィスは使い分けることをお勧めする。

バーチャルオフィスは近場の同僚に最適化されたつくりになっており、多人数での会議を想定した仕様になっていない。感覚的には 4 人以上が参加するのであれば、Remotion などのバーチャルオフィスではなく、専用のサービス(Google Meet や Zoom など)を使うべきだ。これらのサービスは会議に便利な機能を備えているし、通話や接続の品質も高い。バーチャルオフィスは一緒に働いている同僚との距離感を縮めたり、ちょっとしたコミュニケーションを促進するためのもので、会議用アプリとは目的が異なる。

まとめ

以上、ここ 2-3 ヶ月で試したバーチャルオフィスサービスについて紹介してきた。僕自身の学びを簡単にまとめると以下になる。

- 常時接続用のアプリと会議用のアプリは分ける
- 常時接続用のアプリに何より重要なのは CPU 使用率の低さ

バーチャルオフィスは使ってみないとその良さが伝わらないプロダクトだが、一度使ってみるとコレ無しの生活には戻れないほどの魅力がある。Google Meet で常時接続していれば良いのでは? などと思っている人は、ぜひ一度試してみてほしい。

この領域については今後も次々と新しいサービスが出てきそうな気配がある。引き続き探究していきたい。

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