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日本全国写真紀行

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取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。
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#関東

【日本全国写真紀行】 31 埼玉県秩父郡東秩父村

埼玉県秩父郡東秩父村 和紙づくりの伝統を守り続ける県内唯一の村 日本が世界に誇る技術の一つに、手漉き和紙技術がある。文字どおり和紙をつくる技術で、熟練した手技によって生み出された和紙は洋紙よりもはるかに強く、ヨーロッパの美術館では絵画の修復にも用いられている。まさにものづくり日本を象徴するものといえるだろう。  和紙は古くから日本各地でつくられてきたが、中でもその技術が卓越しているとして2014年にユネスコ無形文化遺産に登録された三紙がある。島根県浜田市の石州半紙、岐阜県美

【日本全国写真紀行】 28 群馬県利根郡みなかみ町布施箕輪

群馬県利根郡みなかみ町布施箕輪 山間の隠れ里は、まるで養蚕農家の住宅展示場だった みなかみ町の布施箕輪集落は、赤谷川に合流する須川川の左岸にある小さな集落である……というと簡単に聞こえるかもしれないが、実は住所からここを探り当てるのはかなり大変だった。地図上では発見できず、大体の当たりをつけて直接出向き、旧三国街道の宿場町だった布施宿から南西に歩き、みなかみ町新治支所で道を訪ねる。役場の方はとても親切で、詳しい住宅地図を広げて探してくれ、多分この辺りだろうと教えてくれた。彼

【日本全国写真紀行】 27 茨城県北茨城市平潟

茨城県北茨城市平潟 アンコウと温泉の漁師町 福島との県境にある北茨城市。太平洋に面した風光明媚な海岸線は、茨城県の中でも屈指の観光スポットとして人気がある。その中で、自然の入江を利用した漁港を持ち古くから栄えてきたのが平潟である。江戸時代には、山形の酒田港から江戸に向かう東廻りの海運寄港地となり、商業地としてもにぎわいを見せていたという。  実際に足を運んでみると、ほんとうにこじんまりした漁港だ。港の東に薬師堂、西には八幡神社があり、奇岩にも見える海食崖に両岸を囲まれ、お

【日本全国写真紀行】 26 神奈川県足柄下郡湯河原町福浦

神奈川県足柄下郡湯河原町福浦ある洋画家が惚れた小さな漁港 洋画家・中川一政(1893-1991)が描いた『福浦突堤』という作品を観たことがある。漁港に面した山の斜面に並ぶ家々と赤い灯台と突堤が印象的に描かれ、風景画には似つかわしくない躍動感という言葉がぴったりする迫力ある作品だった。この絵画が描かれたのが、真鶴半島の西側の付け根のところにある福浦という小さな漁港だ。  中川一政は、五十六歳の時に真鶴にアトリエをもち、約二十年間福浦漁港に通って絵を描き続けた。地元の漁師たちは、