マガジンのカバー画像

日本全国写真紀行

59
取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

【日本全国写真紀行】45 長崎県佐世保市三川内町三川内皿山

長崎県佐世保市三川内町三川内皿山 庶民には手の届かなかった高級品、 今は誰にも広く愛される器に 16世紀末、豊臣秀吉が朝鮮に出兵した「文禄・慶長の役」は、日本、朝鮮、明の三つ巴の戦いとなったが、決着がつかぬまま秀吉の死によって終息。この戦争は侵略した側もされた側も甚大な被害を被ったのみで、何の成果ももたらさなかった。だが、戦いに加わった大名、特に九州の大名たちは、朝鮮の進んだ文化技術を取り入れようと、半島から多くの陶工たちを連れ帰った。そして九州各地にはさまざまな窯場が誕生

【日本全国写真紀行】44 大分県宇佐市院内

大分県宇佐市院内 深い渓谷に広がる日本一の石橋の郷 日本に現存する石橋の数は約二千基といわれている。その九割近くが九州に集中しており、大分県がもっとも多い。なかでも、75基の石橋が現存し、うちアーチ橋の数は64基と日本一を誇るのが、宇佐市院内町だ。  深い谷筋に集落が点在するこの地域では、川を渡るための橋は人々の暮らしにとって不可欠なものだった。しかし、川の流れが急で木製の橋だと度々流されてしまうため、木の橋の代わりに石橋が架けられるようになった。  石橋の材料となる石が豊

【日本全国写真紀行】43 長崎県平戸市田助町田助

長崎県平戸市田助町田助 幕末の志士たちが未来を語り合った、九州の片隅の小さな港町 平戸市の中心街から北へ3.5キロほど行ったところに、田助という小さな港町がある。田助港が開かれたのはおよそ400年ほど前。平戸藩初代藩主・松浦鎮信がここに港を作り、小値賀島、壱岐、呼子などから約50戸を移住させ、臨済宗妙心寺派の天桂寺を創設して田助の管理を任せたのが始まりである。  江戸時代の後半には、日本各地からやってくる船の風待ち、潮待ちの港として栄えた。特に上方へ向かう薩摩船は田助を寄港