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全国最中図鑑

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日本を代表する和菓子の一つである「最中」。香ばしいパリパリの皮とともに餡を頬張れば、口の中にふわっと広がる品のよい甘さ。なんとも幸せな気分になるお菓子です。編集スタッフが取材の途…
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2024年5月の記事一覧

「全国最中図鑑」76 修禅寺物語(静岡県伊豆市)

ちょっとコワいお面の形をした最中だ。顔面が縦二つに割れ、目にはポッカリと穴が空き、恐怖に近い悲痛な表情をしている。 この古いお面、実は鎌倉幕府の二代将軍・源頼家の顔を模したもので、本物が修善寺の宝物殿に安置されている。頼家は頼朝と北条政子の嫡男で、18歳という若さで将軍になるが、独裁政治が過ぎるという理由で出家させられ、修善寺に幽閉される。そして修善寺で温泉に浸かっていた時、湯口から大量の漆を流し入れられ、全身がかぶれて病に伏せるようになり、結局死んでしまう。死ぬ前に頼家は、

「全国最中図鑑」75 金山石臼最中(新潟県佐渡市)

 佐渡金山は約400年の歴史を有する日本最大の金山である。1601年に3人の山師により開山され、2年後には徳川幕府直轄の天領として佐渡奉行所が置かれ、小判の製造なども行われて江戸幕府の財政を支え続けた。  平成元年、資源枯渇のため操業を休止し、長い歴史の幕を閉じた。  金の精製工程をざっくりと説明すると、発掘した金鉱石をまず選別し、細かく砕き、大きな石臼ですり潰し、それを水で流して金を選別し、溶かす。この時に使われていた大きな石臼を形どって作られたのが、文化5(1808)年創