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全国最中図鑑

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日本を代表する和菓子の一つである「最中」。香ばしいパリパリの皮とともに餡を頬張れば、口の中にふわっと広がる品のよい甘さ。なんとも幸せな気分になるお菓子です。編集スタッフが取材の途…
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2023年9月の記事一覧

「全国最中図鑑」60 可麻久良 〈かまくら〉最中 (神奈川県鎌倉市)

麻可奈思美 佐祢尓和波湯久   可麻久良能 美奈能瀬河泊尓 思保美都奈武賀 (万葉集第14巻より) ――愛しい人と夜を共にしに行こう。鎌倉の水無瀬川には潮が満ちているだろうか―― 万葉集には、鎌倉は「可麻久良」という万葉仮名で記載されていることからつけられた、三日月堂花仙の名物もなかである。最上級の北海道産の大納言を丹念に炊き上げ、じっくり練り上げて丁寧に仕上げたつぶしあんをたっぷり挟んだ逸品。はみ出しそうな量のあんと、そのあんの水分に負けない厚みでサクサクとした食感の皮

「全国最中図鑑」59 くらづくり最中『店蔵』 (埼玉県川越市)

埼玉県川越市には「蔵造りの町並み」が今も残っている。蔵造りは類焼を防ぐための耐火建築で、江戸の町屋形式として発達したものだが、現在の東京ではもうほとんど見られない。そんな貴重な江戸の面影を、ここ川越では見ることができる。 川越に蔵造りの街並みが形成されるきっかけとなったのは明治26年の大火だった。川越市の全戸数3,315戸のうち1,302戸を焼失したこの大火災は、川越商人たちに防火への意識改革をもたらした。大火の後、焼け残った建物が伝統的工法による蔵造りの建物だったことに着目