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ライス🍚センター🍚梅干し

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日の丸弁当って、ご飯が梅干しに群がっているみたいだよね。
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ライス🍚センター🍚梅干し-10

ライス🍚センター🍚梅干し-10

「その、惚気話だか自慢話だかよく分からない耳障りなものを悩み相談として、よくこの売れ残り前で必死に婚活パーティー巡りしているアラサー手前の偉大なる先輩に話してくれたよね。流石よね。流石過ぎて涙も溢れない。ただ、私の心は泣いているわ。お前の人生という臍の緒を、ここで断ち切れと内なる鬼が囁いているから」
 親愛なる高校時代からのJ先輩が、私の頬を龍頭か何かと勘違いしているのか、掴んで捻って三周ぐらいさ

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ライス🍚センター🍚梅干し-9

ライス🍚センター🍚梅干し-9

「先輩は、大好きな食べ物を最後まで取っておくタイプの人ですか」
 次の日、会社のお昼休みにお弁当を広げ、相手の顔は全く見ずに唐突に聞いてみたわ。
 先輩は買ってきたコンビニのおにぎりを、半分だけラップを剥がして怪訝な顔をしていたようだけど、私はタコさん型シャウエッセンをケチャップまみれにして、ただひたすらに喉に押し込むという作業に打ち込んでいたの。
「何? 心理テスト的な何か?」
「違います。残し

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ライス🍚センター🍚梅干し-8

ライス🍚センター🍚梅干し-8

 あたしの住んでいる1LDKのアパートは、ベッドが一つ、カラーボックスが二つ、折り畳みの白いテーブルとテレビがあって、何処ぞのゲームセンターでまぐれで取った、くまのプーさんに出てくるキャラクター「イーヨー」のでっかいぬいぐるみが鎮座している。
 収納は9畳の部屋に対して広めのクローゼットがあって、洋服とかお気に入りのバックとか入っているけど、普段はカーテンで締め切っている。
 ユニットバスは狭いけ

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ライス🍚センター🍚梅干し-7

ライス🍚センター🍚梅干し-7

 休憩時間中、背中に位置情報センサーをオンにして常時情報を提供する状態になっているあたしは、多分GPSの位置ズレが「近代衛星アホ過ぎwww」と鼻で笑ってしまうくらいの精度を高めていて、その受信感度はwi-fiを「ういふい」とか言ってしまう上司を五十年前だったら可愛いですねとか言ってあげるに違いないぐらい人類の英知を嘲るぐらいの包容力だったと思うわ。
 彼の靴音だけで、あたしのSiriは「なんのご用

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ライス🍚センター🍚梅干し-6

ライス🍚センター🍚梅干し-6

 で、デジャヴってくるのよ。
 中学三年の卒業式。
 あの時あたしは、似たような感情を抱いてなかったかと。
 就寝時間でもないのに抱き枕にしてなかったかと。
 狭いワンルームマンションのフローリングで、骨盤矯正のストレッチとか、第三じゃないビールを片手に動画サイトをひたすら閲覧してキャッキャッと柏手をする間も悶々としているのには、この感情が邪魔だった訳。
 じゃあ確かめてみようじゃねーかと。
 明

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ライス🍚センター🍚梅干し-5

ライス🍚センター🍚梅干し-5

 この苛々は、生理前だからなのか、慣れない業務に日々溜まったストレスが私の眉毛をマナーモードにしているのかよく分からなかったんだけど、兎に角先輩が何事も無かったように他の社員と話しているのを見ているだけで「○○! アウト!」っていうお馴染みの効果音と共にケツバットしてあげたい衝動に駆られている日々が暫く続いて。
 それでもあの握り拳を包まれる感触が伝わってくると、溜飲がグッと収まるのは、もしかして

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ライス🍚センター🍚梅干し-4

ライス🍚センター🍚梅干し-4

 不思議なくらい、接点は同じ学び舎で過ごしたというくらいで。
 でもあれだ、部署も同じ総務。
 なんかよく分からないけど、お昼休みが終わると、あたしは両手を天に仰いで噴水のポーズをするみたいに伸びをする癖があって。
 握りこぶしをオフオワイトの仕切板に向けていると、必ずどこからともなく背後に忍び寄ってそっと上から掌を被せてくる訳よ。
 肩をビクつかせて後ろを振り返ると、唇の端を斜め上に向けた先輩が

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ライス🍚センター🍚梅干し-2

ライス🍚センター🍚梅干し-2

 高校行ってからは、なんていうの? 抜け殻? 燃え尽き症候群?
 いやいや、普通に高校生活を送っていたつもりだけど、達成感の無い毎日を送っててさ。
 今思うと、凄く勿体無い事をしていた気がするよね。
 そりゃあ、周りに合わせて流行りのファッションや音楽も付き合ってたし。
 彼氏だって何人か作った筈なんだけど。
 いつも、凄い虚無感に襲われていて。
 殆ど上の空の状態で、漸く目が醒めるのよ。
 高二

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ライス🍚センター🍚梅干し-1

ライス🍚センター🍚梅干し-1

 思えば境目は中学三年の卒業式。
 あの時、ずっと好きだった男子生徒に告白しようと最後の教室で会話をしていた時だったと思う。
 男子生徒の名前はもう思い出せないけど、その時のあたしにとってはかけがえのない存在で。
 高校受験という名の懲役で踠き苦しんだあたしの学校生活に、唯一色彩を付けてくれていたのは確か。
 他愛も無い、今まで楽しかったねー、高校行っても忘れないでねーとか、そんな話の中で、いつ切

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