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シャインマスカットと親孝行

シャインマスカットが大好きで、旬の時期はもう大変!せっせと食べている。
予約販売で、2房一セットを買ったら粒が大きくて皮がはちきれんばかりにプリプリした、上物だった。このよろこびを誰かと分かち合いたい!と、一房を母にあげることにした。

母はすぐ近くに住んでいるので、歩いて渡しにいくことにした。
生まれたての新生児を抱えるようにシャインマスカットを持ち、インターフォンを押すと、扉が少しだけ開いた。

扉が全開になると、私より先にシャインマスカットに目を奪われる母。
「お裾分けだよー」と渡すと、なんと目をキラキラさせて
「ありがたやありがたや」と、拝むように私を見るではないか。

「高いからさ、手が出なかったのよぅ〜。こんな大きな粒でピカピカして、美味しそう!ああ、ありがとうありがとう」
ピカピカしているのはお母さんの目だよ!って突っ込みたい衝動に駆られながら、感謝の言葉を体中に浴びた。

母、可愛いな!!

母が、まるで三歳児のように見えた。さらに、菩薩にも思えた。昔、あんなに感情をむき出しにし真っ向から対立していたあの時の母とは、全く違う。

今や、私の中に思春期以降に覚えた負の感情は、もうない。こんな時がくるなんて!!思ってもみなかった。やっと、この時が来たのか。

シャインマスカット美味しいからあげたら喜ぶだろうなぁ、こんなプチ欲のつもりが、かえって自分の心の変化に気がつくことができた。お裾分けに対してまたお裾分けもらっちゃうやつ。お返しに梨もらっちゃったみたいな。

これからが本当の親孝行かもしれない。そう思った。旅行に食事に、これからどんどん行こう。その時は、父の写真も持っていこう。

父は、自分が50歳まで生きられると思ってもみなかったらしく、短命思考だった。一方、母は昔から長生きする気満々だった。本気で、100歳まで生きるつもりでいる。時間はまだまだある。これからたっぷり親孝行しようと思う。きっと父も一緒についてきてくれるだろう。


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