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雨のはなし

小学生の時、給食を食べながら「晴れと雨どっちが好き?」という話題になった。多数派は晴れ。私もその一人だった。晴れの日はなんとなくいい日になる気がして、気分も上向きになるから。
でも彼だけは雨が好きだと言った。なんか落ち着くって。
私にとってはすごく不思議だった。雨の日はどんよりして気分も下がるし、濡れるのになんで雨の日が好きなんだろう。正直納得できなくて、晴れの方が絶対いいと思っていた。
小学生の時の話なんかもうほとんどが思い出せないのに、なぜかこれだけははっきりと覚えていて、雨が降ると思い出してしまう。
そんな話をしていた時からずいぶん経ち、私もかなり大人に近づいて、今ではちゃんと彼が言っていた雨の日の魅力もわかるようになった。たしかに落ち着くし、雨の音は集中力を増してくれる気がする。そしてちょっとだけまったりしてもいいかな、なんて気持ちになる。読書は晴れの日よりも雨の日の方がはかどる気がする。
最近は思うのだ。雨の日があるから晴れの日が素敵に思えるし、晴れの日があるから雨の日が素敵だと思えるんじゃないかって。どちらもずっと続いたら慣れてしまって良さがわからなくなってしまうんじゃないかって。
だから私は今「晴れと雨どっちが好き?」って聞かれたらどっちも好きって答えるかな、と彼の言葉を思い出しながら考えていた。

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