宇宙飛行士への手紙

こんにちは、もんぺです。

今回の曲は「宇宙飛行士への手紙」です。

この曲はアルバム「COSMONAUT」の曲です。
このアルバム自体、僕からするととても異色なアルバムだった気がしてとても印象に残っています。それまで物語調の曲が中心だったBUMPの歌詞の表現が少しずつ抽象的な表現に変わって行き、曲調もリズム感もこのアルバムはこれまでとは違っていたような気がします。(音楽に詳しいわけではないので、細かな解説はできません)

特に、アルバムの一曲目の「三ツ星カルテット」は曲の入りもどこから入るのか予想がつかない、どこで切れるのかわからないという感じで初めて聞いた時は良さがわからない曲でもありました。

でも、いつも通りアルバムリピートで聴いているとこれまでにない音楽が癖になって行き、また歌詞も抽象的であるからこそ、誰の人生にも寄り添う内容でどんどん好きになって行き、お気に入りのアルバムになりました。

さて、話がそれましたが、「宇宙飛行士への手紙」は、「COSMONAUT」つまり「宇宙飛行士」という題名のアルバムの中でその単語を冠した曲で、もしかすると、このアルバムの主役を飾る曲なのかもしれませんが、
実際聞いてみるとカルマやray、sailing day のような主役級のテンポのよさやノリの良さがある曲という感じもしませんでした。
少なくとも僕はよくわかりませんでした。笑


「踵が2つ 煉瓦の道」

「雨と晴れの隙間で歌った」

「匂いもカラーで思い出せる」

「今が未来だった頃の事」


表現が独特ですね。「踵がふたつ」、つまり一人と言うこと。「今が未来だった頃」つまり過去のこと。こういう表現をするのはやっぱり藤原基央さんだけな気がします。
そして、「匂いもカラーで思い出せる」。匂いは本来、嗅覚で感じるもので「色味」という視覚の情報は持ちません。
しかし、誰もが経験があるように、「匂い」を嗅ぐだけで人は情景まで思い出すことができます。つまりその情景の鮮明さを「カラーで」という言葉で表現しているのでしょう(多分)
この歌詞の一番最初の文章を見ただけでも、BUMPっぽさが溢れています。

歌詞について書きましたが、この曲の持つメッセージは「大切な人、大切なものとの時間は限られている。今を、時間を大切に。」ということなのではと思います。少なくとも僕は、この曲を聞いてそう思いました。


「どうやったって無理なんだ」

「知らない記憶を知ることは」

「言葉で伝えても 伝わったのは言葉だけ」

「出来るだけ離れないでいたいと願うのは」

「出会う前の君に僕は 絶対出会えないから」

「今もいつか過去になって取り戻せなくなるから」

「それが未来の 今のうちに ちゃんと取り戻しておきたいから」


一見すると当たり前のことを言っているだけです。
記憶、思い出は「経験したこと」の集まりです。百聞は一見にしかずという言葉があるように、その経験の集まりである「記憶」を言葉で伝えるのは難しいことです。

そして何より、人との出会いや、一緒に時を過ごすということを、後から「取り戻すこと」はできません。出会う前のその人に会うことはできないし、一緒にいなかった時間を「一緒に過ごした」ことにするのは、後になってしまえばできないことです。

だからこそ、出会った後の「今」は出来るだけ離れないでいたいと願うのだと思います。


「ひっくり返した砂時計」

「同じ砂が刻む違う2分」

「すべてはかけがえのないもの」

「そんなの誰だって知っている」


ここも好きですね。「同じ砂が刻む違う2分」。2分という時間は誰にとっても平等です。
ですが、その2分で過ごした記憶や、経験や、感情、ひいては「感じる時間の長さ」まで、全ての人で異なっています。もしかすると、その時間の「相対性」という考え方の一つの表現として「宇宙飛行士」という言葉を使ったのかもしれませんね。(あくまで個人の感想です)

ちなみに宇宙飛行士に手紙を出すと、その飛行士の移動速度が高速であれば、おそらく少し過去に届くのではないでしょうか。(相対性理論の曲解です。間違っているかも。。。)
とすれば、この曲は少し未来を行く人から、過去の人へのメッセージとも取れるかもしれません。


「死ぬまでなんて嘘みたいなことを本気で思うのは」

「生きている君に僕はこうして出会えたんだから」

「そしていつか星になってまた一人になるから」

「笑い合った 今はきっと」

「後ろから照らしてくれるから」


死ぬまで一緒にいようなんて、嘘っぽいですよね。僕もその気持ちはまだわかりません。

でも、お互いが同じ時間軸で生きている間に出会えて、その人を大切だと思える奇跡が訪れたなら、その奇跡を大切にしたい、死ぬまでその人と一緒にいたいと思う気持ちがこの曲を通して少しはわかりました。
「トリケラトプスに触る」ことも「双子座でのんびり地球を見る」ことも、僕たちが生きている人生という時間軸ではできないのに対して、「大切な人と一緒に死ぬまで過ごす」ことは自分と相手の気持ち次第でできることなんだから、
考えたっていいですよね。

それに何より、その大切な人ともいつか必ず別れが来て、一人になる時が来るのだから、その時に自分の心を明るくしてくれる大事な思い出をいっぱい作っておきたいという気持ちは、日々生きている中で忘れがちな、とても大事なことのように思います。


「踵が4つ 煉瓦の道」

「明日と昨日の隙間で歌った」

「全ては かけがえのないもの」

「言葉でしか知らなかったこと」


「踵が四つ」、二人になって誰かと出会って、「誰だって知っている」はずだった「全てはかけがえのないもの」だということを本当に知ることができる。

大切な人やものと出会うことは、それくらいの意味と重要性があるということを教えてくれる素晴らしい曲だと思います。


この曲の意味が自分の中に入ってきたのは、祖父が亡くなった時でした。
祖父は口数の少ない人で、幼い僕はいつも少し怖い人だと思っていました。祖父はその後、少しずつ認知症の症状が出始め、僕が高校生の時、介護施設に入りました。そして僕が大学生の時に祖父は亡くなりました。

祖父が亡くなった後、祖父について話す両親や親族の話を聞いて初めて、祖父が話すのが好きで、昔はよくみんなと話をする楽しい人だったことを知りました。

自分の親を育ててくれた、僕のことも優しく見守ってくれていた祖父のことを、僕は何も知らないまま、話すこともできないまま、失ってしまいました。

それからしばらく経った後に不意にこの曲を聞いた時、涙が出てきて、
自分が高校生で、まだ祖父が話ができた時、もっと話しておけばよかった、一緒にいればよかったと心の底から思いました。

自分が大切にする人は、当然一人だけではありません。そして、自分が使える時間は限られています。
その中で、日々少しでも自分が大切に思う人と過ごす時間を長くとって、お揃いの記憶を集めておけば、もしその人との別れが訪れた後も
その楽しかった記憶が心を照らしてくれるのではないかと思います。

そんな考え方を教えてくれる「宇宙飛行士への手紙」、ぜひ聞いてみてください。



あとがき
今回は特に好きな曲だったのもありますが、毎回どんどん文章が長くなっていて、最後まで読んでくれる人いるのかなぁと思っています。
言葉が足らないことも多いですが、もし聞いてみた感想や、自分が聞いたときの気持ちを共有してくださる方がいればとても嬉しいです。



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