『&アンパサンド 第1集 詩的なるものへ』

 母方の親族は「きちんと」ではなく「きちっと」というのだが、この冊子にはまさに「きちっと」いくつかの紙製などのものが封入されている。

 そのものらは我々読者に対し、鋏を入れることを求めたり、自分で穴を開けて綴じるように誘惑したりする。貼ってはがせるナントカ、繰り返し使えるナントカに囲まれて不可逆をなすことから逃げ惑う私は、袋とじを切り開いたことさえ数えるほどの手で、おそるおそる瓶博士のチャップブックを開いた。※

 失敗のしようもないのだが、それでも物を壊してしまいうること、壊してしまいうるものを所有する胆力をもっておかないといけないことを思い出せた。それは脆く不気味で加害的になりうる身体に向き合う可能性を閉じないことだと思う。

 2年かけて6号まで揃えると一集としての内容が完成するという趣向。編者である間奈美子さんが、詩歌にとどまらない「詩的なるもの」を探究し、また、そのようなものを表現/体現している様々な作家の作品を様々な形で収めたものだ。Philopoesisと題された20世紀の創作者らの言葉の分析を通じて、詩的な啓示を構成するもの、それを可能にする感受性とはいかなるものかが探られていく。20世紀の特に前半というのは、人間のそういった部分に様々な角度から光が当てられた頃だった。

 福田尚代さんの回文、川添洋司さんのオブジェをあしらった目次、そして大好きな村松桂さんのレイヤスコープ(村松さんの作品は常に「写真と詩」などと分解できない、言葉とイメージとメディアムと場所の総体である)などが横断的に集められ、作り下ろされ、この封筒に収まるように整えられることで、雑誌全体が一つの世界のミニチュア、箱庭のようで、でも感覚を通じて今ここに繋ぎ止めてくれるような冊子だった。全部集めます。

※チャップブックは2号の初回配本限定

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