見出し画像

卒業式前夜のおはなし


3月1日。卒業式前日。

卒業式の予行練習で、後ろのクラスの女子が式歌を歌いながら泣いていたのをみて、「あー、この子はきっとこの学校で過ごした3年間が楽しかったんだろうなー。」と、思った。


自分は、明日は泣けないと友人に言った。
小学校も中学校も卒業式で泣いたことはなかった。会いたい人には卒業したって会えるんだから。さっさと卒業したかった。


━━━━━━━━━━━━━━━


午後20:00。
下校ついでに夜食を食べようと言って、最後の日は彼氏と過ごした。

サイゼに行って、くだらない会話をしながらあっという間に帰る時間になって。気づいたら帰りの電車の中にいた。


もう、制服を着て会うことも、朝一緒に登校することも、授業の合間に廊下で立ち話をすることも、一緒に部活に行くことも、一緒に寄り道して帰ることもできない。


そんなことを考えながら、彼に向かって

「きっと、わたしは、大学生になって、2,3ヶ月が経った頃に、今までとか、今日の今この瞬間のことを思い出して、戻りたくてたまらなくなるんだろうなって……」

と口にした途端、涙がぼろぼろ溢れてきた。

彼がえ、え?!急にどうしたの?!って慌てていたけど、もうこっちは全然それどころじゃないのよね。



別れる寂しさ、誰もが経験することだけど。
付き合っていることで会う理由になる、そんな関係性になっていてもまだ、寂しくて、不安で、怖くて、彼のいない世界に1人で飛び込む勇気がなくて。

そんな私が明日、一体何から卒業するって言うの?



友人や彼氏などの身近な存在が、自分の中でどれだけ大きいのかを知ることが"別れ"ってことなのかな。

だとしたら、「明日は泣けない」なんて言っていた私にとって、別れの代償は想像していたものよりもはるかに辛いものだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?