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商品部門長に聞く。商品点数は100万点から1900万点に成長、売上は10倍に。この10年の変遷とこれからの未来とは。

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。

清水さん 商品部門 部門長
パイプ・測定器具等を扱う機械工具商に新卒で入社。6年間勤続後にFA(ファクトリー・オートメーション)メーカーへ転職し6年間勤務。その後、2009年4月モノタロウへ入社。商品部門でのバイヤー、グループ長経験を経て、2021年より現職。

売上が10倍に成長した、商品部門の10年間

ーー清水さんは入社されて10年以上のベテランですが、商品採用を行う部門として、モノタロウはどのように変わりましたか?

まず単純に取り扱う商品数が増えましたね。2009年の入社当時は100万点いくかいかないか程度でした。あの頃はカタログに掲載する商品を売れ筋のものに絞っていた、というのも大きいです。サプライヤー様の元にカタログを持っていき、「市場に売れるような商品を探していて、そういったものを掲載したい」という説明をしていました。

それからしばらくして「原材料以外すべてモノタロウで調達できる」形を商品部として明確に目指すようになりました。メーカーが取り扱っている商品はもちろんのこと、細かな部品も含めて、とりあえず守備範囲を広げていきましょうという方針転換です。

私もFAや機械部品のカテゴリーを担当していたので、数十万、メーカーによっては百万から数百万の、商品データをモノタロウと共有してもらうための交渉をスタートしました。どんどんと問い合わせ件数も増えていき、実績が出るようになってきたのが2011年前後です。


ーー大きな方針転換をされましたが、どのような背景があったのでしょうか?

技術の進歩が背景にあります。データ管理の負荷増大によるECシステムの限界があったのですが、技術の進歩によってより膨大なデータが取り扱えるようになりました。
昔は今ほどシステムは頑丈でなく、登録データ数にも上限がありました。10万点ほどサイトに登録しようとしたらシステム担当者が慌てて飛んできた、なんてこともありましたね。

当時はそれぐらいの規模感で、社員が100人もいないような状態から商品を増やしだし、それで成長サイクルが回り出した形です。当時はまだ在庫点数も5万点ほどで、売れ筋商品を中心に在庫を増やすことで納品スピードを速めていき、結果として売上が伸びた、という流れです。

売上実績があればそれをきっかけに、サプライヤー様との商品取り扱いの交渉も進むようになりますし、後は雪だるま式に成長することができました。次にプライベートブランド(PB)商品の展開も増やしました。一般的な小売でしたらより安いPBばかりが売れてしまうところなのですが、モノタロウで起きたことは、PB商品と、同種のナショナルブランド(NB)商品(※)の両方とも、売上が伸びるということでした。選ぶのはお客様であり、選択肢を増やすことがユーザー増・売上増につながりました。これは本当にありがたいサイクルだなと感じています。売れ行きが良いからPB商品をどんどん投入できるし、NB商品の採用を増やすこともできる。PBとNBが共存し、かつお互いが好影響をもたらしあえる関係性です。

こうして特定の商品の売上が落ちることなく、モノタロウに商品を卸して頂く各社様にも貢献しながら成長していっているな、というのが商品部門から見たモノタロウの10年史です。

当社の成長サイクル

※ナショナルブランド商品:商品メーカーが自社商品やサービスに付けたブランドのこと。


ーーそのような成長を遂げて現在は取扱商品点数が1,900万点ですが、1,800万点から1,900万点突破までに3年近くかかっていました。どんな理由がありましたか?

決して増やしていないわけではないんです。商品点数が変わっていないように見えますが、実は新規登録数は今でも毎年数十万から100万点程度あります。 ただし、廃盤となってしまう商品も非常に多く、そこで相殺されてしまいます。

また、「カスタマイズ登録」が導入されたことも要因ですね。たとえば、アクリル板は縦×横×高さの細かなサイズ指定が可能です。これまではそのサイズごとに注文コードを登録していたのですが、現在のカスタマイズ登録では、各サイズの組み合わせで注文ができるため、注文コードは集約されて一つになります。

このようなシステム開発により、SKU(※)単位だと1,800万という数値から大きくは変わっていないように見えてしまいますが、それはそう見えているだけで、実際はちゃんと成長しています。

※SKU:ストックキーピングユニット(Stock keeping Unit)の略。在庫管理上の最小の品目数を数える単位を表しています。例えば、同じ型のボールペンでも、「黒いボールペン」「赤いボールペン」は別に数えるため、2SKUとなります。

ーー見かけ上は商品点数の成長が少ないように見えますが、実際はしっかりと新しい商品が追加されているということですね。


「何でもそろい、すぐ見つかる」をデータを用いて突き詰める

ーー今後の戦略を教えてください

どのカテゴリーもやれるだけやって登録点数を最大化していこう、というのがこれまでの施策でした。しかし、会社設立から20年以上が経ち、商品を網羅してしまっているカテゴリーが出てきているのは事実です。「モノタロウで何でもそろう」という目指す姿を実現しているともいえます。もちろん、まだまだ拡大余地のあるカテゴリーもあります。

そのため今後はカテゴリーによって対応を変え、「何でもそろう」を実現できているカテゴリーに関しては、それを超えた状態、たとえばこれはもっとお客様が買いやすいよう、選びやすいようにサイト上での見せ方や商品情報をしっかり整理しようといった点により注力していくことになります。

あとは納期ですね、納期の改善や正確性の向上はお客様に貢献できる重要な要素だと考えています。


ーー各事業者のお客様の生産性を向上させるのがモノタロウのミッションであり、それを達成するためにサイト構成や納期の部分を良くしていく、ということですね

その通りです。お客様がモノタロウで商品を選ぶ時は、素早く、間違いなく必要な商品を選んでいただけるように環境を整え、短縮できた時間の分だけ事業者のお客様が本業により長くあたれるようにすること。それこそ、我々が今後さらに突き詰めていきたいところです。


ーーカテゴリー毎の戦略が異なるということは、仕事のチャレンジの種類もそれに応じて多様化しているのではないでしょうか

そうですね、多様化しています。そこにはデータの有効活用が大きく影響しています。私が入社した当時はExcelで管理できるほどのデータ量しかなかったのですが、現在はBigQueryにデータが整えられていて、とても巨大なものになっています。

「各産業で使われる1900万点の商品」×「800万を超えるユーザー」×「22年の歴史」こうした掛け合わせをご想像いただくだけでも、莫大なものとお分かりいただけるのではないでしょうか。
しかも店頭販売とは違い、全てEコマース上での販売ですから、常に詳細なデータが蓄積されていきます。更に仕入れから販売までを自社で行いますから、様々なファクトを私たち自身で持っている状態です。

こうした中で商品部でも多くのメンバー、例えばマーチャンダイザーもSQLでデータを出せる状況にもなっていますし、各種ダッシュボードなどで現在地の見える化の整備も進めています。

これらのデータや情報をもとに、より詳細に課題を発掘し、戦略を出せるようになっています。戦略の方向性も品揃えを増やしていくものから商品情報を充実させるものまでさまざまなので、現在は戦略内容ごとにカテゴリーマネージャーを配置しています。


ーー既に多くの商品点数を取り扱っていますが、新たなカテゴリーを立ち上げる要素はありますか?

拡大余地のあるカテゴリーは、実はまだまだ残っています。去年からは新たに漁業や船舶カテゴリーも立ち上げました。実際どのようなものが使われているかを知るために、プロジェクトメンバーは大分県の漁港まで行って直接モノタロウのお客様にヒアリングしています。

インターネットの小売という形で新たなカテゴリーを最適化していくのは、想像以上に大変なことが多いです。それでもカテゴリーを増やしていくことは「モノタロウであれば、仕事で必要なものは何でもそろう」と思っていただける事業者の方を1人でも多く増やしたいからです。

データ活用というと理路整然とスマートに業務を行っているようにも聞こえてしまうかもしれませんが、データの使い方についてもまだまだ試行錯誤しているところもあります。そして立てた戦略についても社内にも他社にも明確な成功事例はないですから、日々より良い結果に繋がるように、時には地道なアクションを含めてチャレンジをしているところです。

ユーザー企業・サプライヤー企業から見たモノタロウの変遷

ーーユーザー企業様の中でモノタロウの存在はどのように変化してきたのでしょうか

私が働き始めた当時はまだモノタロウを知っている方が少なかったです。存在は知っているけど使ったことはない、競合他社は活用しているけどモノタロウには手を出していない、というユーザー様ばかりでした。実際、工場などに置かれているカタログはまだそのころは競合他社のものが多かったです。
当時は確か年間140億円程度の売上、今の10分の1以下ですね。そこから徐々にモノタロウが各業界に浸透していきました。

過去にバイヤー総出で全国のお客様の元を直接インタビューに訪問することがありました。その時私は、八王子のホテルに4日連続で泊まり、レンタカーを借りてアポなしの突撃訪問を繰り返しました。お客様からしてみればモノタロウは完全にインターネット上の存在であり、それなのに現実世界で突撃訪問が来たわけですから、かなり驚かれましたね(笑)

そういった経験をさせていただいた中でわかってきたことですが、当時のモノタロウはあくまでサブ的な購入窓口で、どのお客様もメインの窓口を別に持っておられました。地元の機械工具商さんなり自動車部品商さんなりとメインに取り引きしていて、そこで買えないものや急に必要になったものだけをモノタロウで買う、という方が多かったです。

もちろん現在でもそういった側面はありますが、当時この事実を知り、まだまだモノタロウには大きな可能性があると感じました。例えば、モノタロウでは軍手を買うだけ、パソコンの周辺機器を注文するだけ、といったお客様に「モノタロウは原材料以外のあらゆる資材を扱っている」と認知が広がり、徐々に様々な商品の購入窓口を弊社にシフトしていただいているように感じます。
今後もモノタロウの取扱商品の幅広さを知っていただけるよう注力し、あらゆる業種のユーザー様にモノタロウをメインの購入窓口に選んでいただくのが目標です。

ーーでは仕入れ側面、サプライヤー様やメーカー様にモノタロウが貢献できていることを教えてください

新しい商業流通ルートを提供できているところだと思います。どの業界でもすでに流通ルートは確立していまして、とくにモノタロウの黎明期は「インターネットの会社でしょ」となかなか受け入れてもらえませんでした。
というのも創業より10年ほどは「インターネット=安売りされる」というイメージがどうしてもメーカー様やサプライヤー様にあったからです。しかし、モノタロウは必ずしも安さだけを追い求めてはおらず、市場価格から適正価格を設定しています。これはほかのECサイトとは大きく異なる点です。そういったモノタロウの特徴は徐々にご理解いただくようになりまして、現在では新しいルートの一つとしてサプライヤー様にご認識いただいています。

また、モノタロウでは商品も顧客の業種も幅広いので、元々想定している層とはまったく異なった業種のお客様に商品を買ってもらえることも頻繁に生じます。これは、量や業界など扱える商品の幅が決まっていることが多い卸売り様やメーカー様の既存の商的流通では起こりにくいことです。、サプライヤー様やメーカー様にしてみても、これまではリーチできていなかった業界とつながれるわけです。実はこの商品がこの業界で売れていますよとお伝えすると皆さんに非常に喜んでいただけますね。


モノタロウの商品部門で働く意味とは?

ーー清水さんは、商社・メーカーで営業を経験しモノタロウに入社されていますが、実際どういう業界の出身者の方が多いのでしょうか

ほとんどはメーカー、工具商を始めとした商社、他の小売業種からの転職者です。特に商品部のマーチャンダイジング関連ではEC・インターネット業界からの転身者はいないですね。商品部門全体のパーセンテージで言えば、95%は非EC・インターネット業種からの方ですね。さまざまなキャリアの方が商品部に集い、日々チャレンジしています。入社時点では、インターネットやEC、ITの知識は必須ではなく、そういったことになじめるかどうかで「ものごとを構造的に捉えることができる」「状態をデータも用いて把握してきた経験がある」「仕組み化や汎用化をしていきたい」というような考え方をしてきた方が入社されているように思います。

ーーインターネット業界以外のキャリアを持つ方がモノタロウに転職することで得られるものは何だと思いますか
いくつかありますが、大きなものとしては、大量の顧客データや商品データ、行動データを取り扱う能力と、それらを活かしてより良いマーチャンダイジングを実現していくことですね。モノタロウはこれまでに蓄積してきた膨大なデータがあり、その活用スキルを磨く環境も整っています。営業をされてきた方であれば、折衝能力×データで物事を分析する力というスキルセットを得られます。マーケティングをされてきた方であれば、自前のデータを活かし沢山PDCAを回して、データ分析能力を更に磨くことができるでしょう。

SQLは必須ではなく、社内で希望者への研修が行われて学んで書けるようになっている方がたくさんいます。キャリアパスに関しても可能な限り本人の意思を尊重してもらえますし、向上心がある方ならどんどんと成長していけるでしょう。


ーーモノタロウならではの面白さとはどういったところでしょうか

さまざまなことを任せてもらえる企業風土があります。たとえば、新しい商品カテゴリーを立ち上げる際も一から携われます。もちろんその業界を知らない状態からスタートですし、さらに流通構造も把握していないなかで事を進めていかなくてはならず、なかなかに大変ではありますが。

まったく知らない業界の場合は、どういった展示会をやっているか、主要なサプライヤーはどこかを調べたり、ベンチマークにするような競合他社はどれかを調査したりします。医療介護系カテゴリーだったら、製造業の方が部品調達のついでに絆創膏を買われるというように、まずは既存カテゴリーのお客様にサブで買っていただくのを目指します。

そこから、医療や介護の関連施設のような本当のメイン層へ徐々にシフトしていく、というのが通常の流れです。それが成功し、自分がタスクを立ち上げたカテゴリーが一つの柱として自立できた時には、やりがいを強く感じられますね。

データを用いたチャレンジも同様で、発見した課題や思いついた改善案が真っ当なものであれば、それを実行していくことはだれも止めません。

ーーどのような方にモノタロウへ入社してほしいでしょうか

仕事内容や取り組む方法が変化していく中で、それにしっかりと対応できる、そして自分から改善しようと動ける人ですね。今でこそモノタロウは2,000億円の売上がある企業ですが、まだまだ発展途上であり、さらなる成長に向けて日々試行錯誤しています。

その状況にコミットできる、さらに言えば、楽しめる方にモノタロウへ入社してほしいですし、現在活躍されている方にはそういった方が多いです。確定したやり方を忠実に守るのではなく、その人なりの考えやマーケティングの結果などを逐次反映させていける方がモノタロウに合っていると思います。つまり、チャレンジ精神が旺盛な方ですね。他者に任せるのではなく、自分で考えて改善していけるような人と一緒に仕事していきたいですね。


モノタロウでは共に働く仲間を募集しています!