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クズとヒモの共同作戦(2:0:0)

クズとヒモが元カノを追い返す為に奮闘する
ドタバタコメディ

ジャンル…コメディ
上演目安時間…20分
登場人数:2人…男×2(演者性別不問)
注意事項:飲酒&喫煙シーンあり
(未成年演者はご注意)
(大人の方は飲酒&喫煙 ご自由にどうぞ)

甲斐…甲斐祐樹(かいゆうき)元ヒモ。

柴田…柴田克樹(しばたかつき)シンプルなクズ。



0:クズとヒモの共同作戦
 
0:古いアパートのドアの前に立つ男。
0:おもむろにチャイムを鳴らす。

0:ピンポーン
甲斐:「柴田さーん」
0:ピンポンピンポーン
甲斐:「しーばーたさーーん」
0:ピンポンピンポンピンポーン
甲斐:「おい柴田!いるのはわかってるぞ!」
0:ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
甲斐:「… は~~」
甲斐:「柴田さんさぁ返済期限、先週ですよねぇ」
甲斐:「いいんですよ?こっちは出るとこ出ても」
甲斐:「困るのはお宅の方じゃないんですかぁ?」
甲斐:「借りた物はちゃんと返しましょうよ〜柴田さーん」
0:ピンポンピンポンピンポンピーン…ポーン…ピー…
甲斐:「……」
0:呆れたように息を吐く
甲斐:「あれー?柴田さんいないみたいですねー」
甲斐:「残念だなあ。…じゃあ」
甲斐:「偶然道端で拾ったこの3万円は、やっぱり警察に届けることに…」
0:ガチャ
柴田:「―3万?どこ?」
甲斐:「…やっと出てきましたね」
柴田:「なんだ甲斐君か。ふぁ、おはよ」
甲斐:「おはよ…って、もう3時ですよ」
柴田:「起きた所からが朝でしょ」
甲斐:「は~…」
甲斐:「本当に今日もびっくりする位クズですね」
甲斐:「ひとまず、部屋にいれてくださいよ」
柴田:「んー」
0:2人で部屋の中に入る
甲斐:「うわー、相変わらず汚い部屋」
柴田:「別に誰に見られる訳じゃないし」
甲斐:「また空き缶を灰皿代わりにして」
柴田:「お前は俺の母ちゃんか」
甲斐:「いや、俺だって別にそこまで綺麗好きって訳じゃないですけど、これはヤバいですよ。汚部屋一歩手前」
柴田:「まだ大丈夫でしょ」
甲斐:「汚部屋に住む人は皆それ言うんですよ」
柴田:「あぁね…ふぁ、眠」
0:あくびしながら窓際で煙草を吸い始める
甲斐:「ていうかこの部屋、暑くないですか?」
柴田:「あぁクーラー壊れてるから」
甲斐:「え?!まだ直してないんですか?!」
柴田:「うん」
甲斐:「去年の冬も、うちエアコン壊れてるからっていってましたよね……」
柴田:「あー…。そうだっけ?」
甲斐:「言ってましたよ!さっさと直せ!」
柴田:「んー…。金ないし」
甲斐:「馬券は買えるのに?」
柴田:「時間ないし」
甲斐:「新装開店には並ぶのに?」
柴田:「めんどくさいし」
甲斐:「はーー…ほんっっとクズ…」
0:がっくりと肩を落とす
柴田:「で、3万は?どこ?」
甲斐:「はあ?そんなもの、ある訳無いじゃないですか」
柴田:「え、ないの?」
甲斐:「ありませんよ。あんたみたいなクズ、そうでも言わないとドアを開けないと思って」
柴田:「あっそう…」
甲斐:「露骨に興味無くすのやめてくださいよ」
柴田:「じゃあお金貸して」
甲斐:「息を吐くようにクズだな?!」
柴田:「クーラー直すから〜」
甲斐:「いやそんな事いって、絶対全部パチンコにつっこむでしょあんた」
柴田:「今度こそ本当本当」
甲斐:「クズの言う『今度こそ』は、信用しちゃいけない言葉トップ3に入りますよ」
柴田:「倍にして返すから」
甲斐:「まだ諦めないの?!あんた凄いな?!」
柴田:「チッ、ダメか…」
甲斐:「いや…それでよく貸して貰えると思ったな」
柴田:「まあ、甲斐君意外とちょろいし」
甲斐:「へえー…?」

柴田:「で、結局何の用なの?」
甲斐:「あーそうでしたね。それなんですけど…まぁ簡単に言うとー…そのー」
甲斐:「―柴田さんっ、暫くこの家に泊めて下さい…!」
0:勢いよく頭を下げる甲斐
柴田:「え? 嫌だけど」
甲斐:「…ッわかってはいたけど、この容赦のなさ…!」
柴田:「何で一銭の得にもならないのに、ただでさえ蒸し暑いこの家に、もう1人住まわせなきゃいけないの」
甲斐:「いや~~それは重々承知なんですがぁ…これには深い深~い事情がありまして…」
柴田:「へー。事情ってなに?」
甲斐:「…(ごにょごにょと)…に…まして…」
柴田:「何?聞こえないけど」
甲斐:「彼女に…!追い出され、まして…!」
柴田:「えぇ… またぁ?」
甲斐:「今回はちょっと訳ありというか…」
柴田:「甲斐君さ、去年も似たような事言ってなかったっけ」
甲斐:「いやあの時はたまたま、元カノと歩いてる所を見られて…」
柴田:「ほぉん。その前は?」
甲斐:「四股してるのがバレて…」
柴田:「…で、今回は?」
甲斐:「彼女が留守の間に、家に女友達を、、」
柴田:「……」
甲斐:「い、いや、その子とは本当!何も無くて!」
柴田:「ヒモの言う『何もなくて』は、信用できない言葉トップスリーに入るよね」
甲斐:「ぐ…っ仰る通りです…」
柴田:「甲斐君さ、人のこと散々クズ呼ばわりするけど、そっちも負けず劣らずのクズだよね」
甲斐:「いやでも、俺は柴田さんみたいに打たないし賭けないし、お酒も程々です」
柴田:「その代わり女関係はガバガバのゆるゆるだけどね」
甲斐:「違いますよ!ちょっと心が広いだけで」
柴田:「そういうのを、ゆるゆるって言うんだよ」
甲斐:「とにかく!新しい家を見つけるまで、暫くここに置いて欲しいんです」
柴田:「次の財布を見つける迄ってこと?」
甲斐:「そういうと人聞き悪いじゃないですか」
柴田:「事実でしょ」
甲斐:「普通に家を探しますよ。」
柴田:「どうだか」
甲斐:「勿論!タダでとは言いません」
柴田:「お」
甲斐:「(息を吸い込んで)……置いてもらってる間に、この腐り切った家をぴかぴかにしてみせます」
柴田:「…なんだ」
甲斐:「お金は無理ですよ!俺ヒモだったんですよ?!」
柴田:「掃除なんて別にいいよ、俺こまってないし」
甲斐:「じゃ、じゃあ!料理作ります!」
柴田:「俺、インスタント大好き」
甲斐:「そんなのばっかり食べてたらメタボになりますよ?」
柴田:「今のところ、まだ大丈夫」
甲斐:「柴田さんって、本当に先のこと考えないんですね…」
柴田:「むしろ考えたら負けだと思ってるから」
甲斐:「全然誇らしくないですからね?!やっぱりクズだな!」
柴田:「ヒモに言われてもねぇ。やーい女の敵ー」
甲斐:「うっ…それを言われるとつらい…!」
柴田:「で?条件は以上?」
柴田:「なら交渉決裂ってことで」
甲斐:「(被せて)柴田さん」
柴田:「ん?」
甲斐:「…30万」
柴田:「………」
甲斐:「俺が貸した30万、いつ、返してくれるんですか?」
柴田:「……」
甲斐:「あれー…何でしたっけ?直ぐに返すとか何とか」
甲斐:「もうかれこれ一年になりますかねぇ…。一年って早いなぁあっという間ですねー?」
柴田:「ふー……」
0:空き缶に煙草を潰す
柴田:「甲斐君、今日からここが君の家だ」
甲斐:「はい。また暫く、ご厄介になります」
柴田:「うーい…」
甲斐:「ていうか柴田さん、本当にクーラー直さないんですか?」
柴田:「無理無理。なんなら甲斐君、直してくれてもいいよ」
甲斐:「そんなの無理ですよ。えーこのクソ暑い中でクーラーなしか、大丈夫かなぁ。寒い時の方がまだ良かった気がする…」
柴田:「文句言うなら出てっていいよ」
甲斐:「1時間で追い出されるのは、最短記録更新ですよ?!」
柴田:「いいじゃん。記録、更新してこ」
甲斐:「嫌ですよ、そんな不名誉な記録…。」
甲斐:「あ、そうだ」
0:持ってきたコンビニ袋を漁る
甲斐:「これから宜しくって事で、乾杯しましょ」
柴田:「おっ いいねえ」
0:缶ビールを開けてぶつけあう
甲斐:「ごくごくっはー、やっと落ち着いたー」
柴田:「あーー…生き返るー」
甲斐:「チータラと柿ピーありますよ」
柴田:「つまみのチョイスが分かってるねぇ甲斐君」
0:ピンポーンとチャイムが鳴る
甲斐:「―ん?お客さん、ですかね」
柴田:「うちにそんなの来ると思う?」
甲斐:「いやー…」
甲斐:「そんな物好き、俺位じゃないですか?」
柴田:「全くね。やれやれ…」
0:よっこいしょと立ち上がる
柴田:「はいはーい…ん…?」
0:ドアスコープから外を覗く
柴田:「…甲斐ちゃん。女の子の友達呼んだ?」
甲斐:「え?俺が柴田さんにそんなサービスする訳ないじゃ…ハッ」
柴田:「?」
甲斐:「ししし、柴田さん…!それってまさか、ピングブラウンのゆるふわカール…」
柴田:「うん。あと小玉メロンサイズ」
甲斐:「どこ見てるのか丸わかりですね!?って、そんな事言ってる場合じゃない、」
甲斐:「柴田さん、出ちゃだめです。その扉は今この瞬間から開けてはならないパンドラの箱になり(ました)」
柴田:「(被せて)彼女?」
甲斐:「ア、ハイ。…」
0:チャイムの音がなり続ける
柴田:「何で?追い出されたんじゃないの」
甲斐:「いや、まぁ追い出されたも同然というか…」
柴田:「どゆこと?」
甲斐:「友達を追い出してから、彼女に物凄い形相で問い詰められて…」
柴田:「自分の家に女連れ込んでたら普通浮気だと思うもんね」
甲斐:「で、ですよね…。でも本当に何もなかったんですよ?!」
柴田:「あーはいはい。それで?」
甲斐:「必死で弁明したんですけど、だんだんヒートアップしてきちゃって…」
柴田:「あー勢い余ってぐっさり刺されるパターンね」
甲斐:「そうなんですよ、で、これは流石にまずいと思って」
柴田:「命からがら逃げてきた、と」
甲斐:「…はい。そんな所です」
柴田:「それで追いかけて来たのか、相当だね」
甲斐:「非常に、ヤバいんです」
柴田:「ぱっと見そんなヤバい子にみえないけど」
柴田:「ちゃんと話せば分かるんじゃない?」
甲斐:「柴田さん…女は見かけによらないんです…」
柴田:「ひー。怖いねぇ。俺は表面だけでいいや」
甲斐:「そんな事言ってると、いつか痛い目みますよ」
柴田:「今まさに痛い目をみてる人に言われてもね」
0:チャイムの音の間隔が少しずつ短くなる
甲斐:「でも、どうしてここがわかったんだろう」
甲斐:「逃げ出してきたのは先週の夜ですよ?」
甲斐:「ネットカフェと友達の家も経由してきたし…」
柴田:「携帯は?」
甲斐:「あ、はい。それは流石に持ってます」
甲斐:「ライフラインなんで」
柴田:「追跡アプリとか」
甲斐:「そこまでします?!」
柴田:「普通の子ならしないと思うけど…」
甲斐:「あー…あいつ普通じゃなかった…」
柴田:「で、どうすんの?」
甲斐:「どうしましょう…。」
甲斐:「あっ!ひとまず俺は裏庭から逃げて、柴田さんがいい感じにごまかしてくれたら」
柴田:「やだよ俺、逆恨みで刺されるの」
甲斐:「でもだって、それしかないじゃないですか!」
柴田:「この家がバレてるなら、今後もまた来ちゃうでしょ」
甲斐:「ええぇ…それは困りますよ…。次の家だって探さないといけないし…」
柴田:「もう諦めてヨリを戻せば?」
甲斐:「いや~~さすがにもう無理ですよ…」
柴田:「まぁそうだよね。んー…じゃあ、アレかな」
甲斐:「おっ何か名案が!」
柴田:「目には目を、クズにはクズを」
柴田:「ーヒモにはヒモを… ってね」

0:下着同然の姿で扉を開ける柴田

柴田:「あー…どうもコンニチハ。お嬢ちゃん、もしかして元カノさん?ごめんね。あいつ今出かけてるんだ」
0:困惑する彼女に口角を上げる
柴田:「ん、俺?あー…どんな関係かはまぁ、想像に任せるけど…」
柴田:「そういえばこの間あいつがさ、これからは俺の為にお金を稼ぐって言ってくれたんだよね。今までは貢がせてたけど、今度は自分が貢ぎたいんだって」
柴田:「それで仕事始めたから暫く忙しくて…って、帰ってきた。―おかえり祐樹(ゆうき)」
甲斐:「ただいま克樹(かつき)。遅くなってごめん」
甲斐:「あれ、アサミ?びっくりした、来てたんだ。どう、スーツ似合う?」
甲斐:「いやぁ参ったよ、今日も休日出勤でさ。はは。ああ、実は俺、就職したんだよ。今までありがと、これからは克樹の為に頑張るよ。じゃ…ばいばい、アサミ」

0:部屋の中に戻ってくる二人 

柴田:「いやー終わった終わった」
甲斐:「はーー緊張したーー」
柴田:「『浮気なら許してあげるけど、自立ならもういらない』って、ここまで来た割にはあっさりだったね。もっと修羅場になると思ったのに」
甲斐:「まー。ヒモを飼う女の子っていうのも、色々あるんですよ」
柴田:「ほぉん?…まぁ詳しくはきかないけど」
甲斐:「……柴田さぁん」
柴田:「ん?なに」
甲斐:「俺、初めてあんたがクズでよかったと思ったーー!」
0:感極まって柴田に抱きつく甲斐
柴田:「あーあー、暑苦しいから離れて甲斐ちゃん」
柴田:「嘘から出たまことになっちゃう、」
柴田:「ロマンティックが止まらなくなっちゃうから」
甲斐:「え、何ですかロマンティックって」
柴田:「んー…伝わらない。世代かなぁ…」
甲斐:「ん…??」
柴田:「何でもないよ」
甲斐:「そうですか?」
0:不思議そうにしながら離れる甲斐
甲斐:「ていうか柴田さん、スーツなんて持ってたんですね」
柴田:「甲斐ちゃん、俺の事なんだと思ってる?」
甲斐:「うーん、借金持ちでギャンブルと女の子が大好きなクズですかね」
柴田:「ま、それはそうなんだけどさ」
柴田:「昔取った杵柄(きねづか)っていうかね」
甲斐:「へー?柴田さんもちゃんと働いてた時期があったんですね」
柴田:「まぁね」
甲斐:「サイズはちょっと大きかったけど、バレなくて良かったです」
柴田:「俺がお嬢ちゃんと話してる間に裏庭から出て回り込んだのも、気づかれなくてよかったよ」
甲斐:「ですね。スパイ映画みたいでなんかドキドキしました」
柴田:「スパイ映画だとしたら三流だね」
甲斐:「まぁ確かに」
甲斐:「とにもかくにも、これで一件落着です!」
甲斐:「改めて乾杯しましょー!」
柴田:「うーぃ、おつかれー」
0:飲み掛けの缶をぶつける
甲斐:「ゴクゴク~っぁあ、うまい!」
甲斐:「柴田さん本当にありがとうございました!」
甲斐:「そしてこれから、宜しくお願いします!」
柴田:「はいはいよろしく。…って、こんな暑いのによくはしゃげるね」
甲斐:「クーラーだけは早急に直しましょう。生死にかかわりますよ」
柴田:「そうだね。甲斐ちゃん、買って(はぁと)」
甲斐:「いや誰が買いますか!無理ですよ!無理!」
甲斐:「それより柴田さん!早く俺が貸した30万返して下さい!」
柴田:「へー折角元カノ追い払ったのに。甲斐君は恩人にそんな事言うんだねー」
甲斐:「ぐぬ…。それを言われると…って、この言い争いは不毛だからもうやめましょう」
柴田:「まあ、それもそうだね」
0:ピンポーン…
甲斐:「ん?」
柴田:「また元カノ?」
甲斐:「いや、今回の二股相手は先に切れてましたよ」
柴田:「へーやっぱりしてたんだ。…じゃあ何だろ。俺、畳にケツささっちゃったから見てきて」
甲斐:「それ、想像すると中々怖いですよ…。まぁいいですけど、よいしょ」
0:立ち上がってドアスコープを覗く
甲斐:「……」
柴田:「誰ー?」
甲斐:「柴田さん…柄シャツにサングラスの強面なお兄さん達って…友達にいます?」
0:ピンポーン、ピンポンピンポン!
柴田:「…甲斐君」
柴田:「俺は困ってる所を助けたね?」
甲斐:「…はい」
柴田:「じゃあ今度は甲斐君の番だね。お願い助けて(はぁと)」
甲斐:「~~やっぱりクズだーーー!!」
 
0:end


2022/01/19 ボイコネ投稿作品

お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。

ダメ男達がわちゃわちゃしてる話が書きたくて。
コメディも楽しいですよね、ノリと勢いって大事。
本作はボイコネ掲載時から少し加筆したけど殆ど訂正してません。

シリーズシナリオなので、今後続編も投稿します。
そちらも是非、宜しくお願いします。


#クズヒモ


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