「”遊びの追求”」賢者の平均知力の低下深刻化に大きな落胆

 4年前に実施された賢者認定試験緩和施策令、通称”賢緩令”により、我が国の賢者数は実施前と比べて21%も増えている。これによって近隣諸国の中で最も賢者保有数が多い国となったことも記憶に新しい。しかしながら、昨日魔法省から発表された賢者平均知力は過去最低の数字を叩きだした。「これは見過ごしてよい問題ではない」と語るのは帝国第一魔法学院名誉学長のウレイテル・コノミライ氏である。

 賢緩令実施前、賢者になるには魔術師としての経験を長く積む必要があり、また複数の形態の魔術を習得し、実戦や魔術開発、生活への貢献などの実績が必要であった。が、賢緩令により魔術師以外の道から賢者になることが可能になったのだ。前厄災時に勇者とともに竜魔王を討伐した”遊人賢者”アルキマワリ・イチャーヅッケの「賢者とは知を極めんとするものであり、魔術以外の道にも知の極みはある。」という言葉を耳にした者は多いだろう。これによって賢者の数は急速に増えていった。複数の形態の魔術を習得しなくても一つの形態の魔術を突き詰めることで賢者になることも可能になったことも賢者の増加へ大きな助けになっただろう。

 魔法省から発表された資料を解析したウレイテル・コノミライ氏はある事実に気が付いた。それは賢緩令実施後に賢者になったものの平均点を実施前に賢者になったものの平均点を比べると29%も開きがある、ということだ。この結果を見せ、ウレイテル・コノミライ氏は「遊人賢者様は”遊び”の追求者であった。この事実を忘れないで欲しい。新しい賢者たちには”遊びの追求”ではない、賢者としての立ち振る舞いをしてほしい」と語った。「賢緩令は、『賢者が愚者であれ』という令ではない。賢者の知力は国力に関わる重大な力である。遊ばせておく人材ではないのだ」

 

 

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