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フードファイティンガー爆食!! ラスト

 県予選から8年後、一年生のときに県予選を一位通過し、全国大会にも大きな爪痕を残した爆食院 饕餮(ばくしょくいん とうてつ)は、その後踊杭鮮海鮮中学校から唯一にフードファイティング部名門檄膳食第四新潟裏米俵高校(げきぜんぱくだいよんにいがたうらよねだわらこうこう)に入学、その後は部員たちに理由を明かさずに米国でのフードファイティングへの挑戦を渇望するが、世界大会には挑戦できずに卒業。卒業後は流れのフードファイティンガー”アクマのトウテツ”と名乗り、賞レースで渡航費を稼いだ。

 そして、今日、ついに爆食院 饕餮は米国の大地を踏みしめた。

「ここが米国、か。陽射しが黄金色だ」

 小麦の風に包まれながら、待ち合わせ場所へと急ぐ。到着場所から思ったよりも近い、徒歩五分程度の"Bee dense, Beef, Blood, Burgers"(通称血液脳関門バーガー)のスライドドアを押す。入店すると陽気な入店音と日本では中々見れない体格のフードファイティンガーたちが目に入る。

「なるほど。当時の先輩はこんなところで戦ったのか。俺がまだ何も知らないうちから」

 8年前の夏の県予選決勝を前にして米国へと消えた桜餅 大納言 猿田彦のことを爆食院 饕餮が思っていると、今だ変わらぬ懐かしい声が聞こえる。

「あ、やっと来た!!!爆食院!」

「しゃばさん!」

 娑婆河原 笠六積。8年前、風秤寺 窮奇から米国行きのチケットを爆食院 饕餮の代わりに受け取り、米国へと渡った男だ。

「お久しぶりです!元気そうですね」

「ああ。全く参ったもんだよ。かっこつけて米国に行ったものの、帰りを考えてなくてね。今も帰れるだけの金は持ってないよ」

「高いっすもんね。俺も金貯めるのに2年掛かりました」

「賞レースだけで2年は大したもんだ。日本では随分フードファイティングは盛り上がってるんだな。竜のおかげか?」

 山俵 竜は中学卒業後、山俵家を継ぎ、日本のフードファイティング業界を盛り上げるために注力した。現在、日本ではサッカー・縦列駐車・フードファイティングの三大競技でテレビも少年の夢も埋まっている。

「はい。やっぱあの人はすごいっす。今やっても良い勝負になるでしょう」

「おいおい、随分言うようになったな。圧勝が当たり前って感じだな」

「まぁ。賞レースでもいつも俺を入れた四人が争うみたいな感じでしたね。一人は途中でくたばりましたが。で、先輩は?」

 爆食院 饕餮がそう言うと、娑婆河原 笠六積は不自然に目を逸らす。そして、一枚のメモ用紙を手渡した。

「ここに行け。多分、お前ならすぐに行けるだろう」

「住所........家、ですか?」

「墓だよ。桜餅の」

「........は?」



 8年越し約束は桜餅 大納言 猿田彦の死という形で終わりを迎える。すべてが灰色の世界で桜餅 大納言 猿田彦の墓を見つめると、アルファベットが並ぶ墓石に日本語が刻まれているのを爆食院 饕餮は見つける。

『アクマのトウテツと食うに相応しい、上の”地獄”で待ってるデース。』

 携帯デバイスを起動して検索すると、一つの大会が見つかる。それは太陽系第三惑星衛星”月”で行われる地獄と評されるフードファイティングの大会であった。

 フードファイティンガーの幕は、すでに食い終わっている。閉じることは、永劫に無い。

               フードファイティンガー爆食!!   完


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