マリオン 88

「では、気を付けて」
 「私」はそういい、カオリはマリオンを抱きしめると、
「今度は、家でお話ししましょう」
 とだけいって、離れた。
 ジャンボジェット機が空を割らんばかりに飛び立っていく。カオリはそれを見送ると、空港を後にしようとした。「私」もそれに続いた時、パットからの電話が鳴った。
「ベイカー・アンセムが、自宅で拳銃自殺をしたそうだ。遺書も残っている。内容はまだわからんが、おいおい明らかになるだろう。それと、ヤコブ・グラハムとアイラ・マイアの処分が決まった。ヤコブは無期限の独房、アイラは医師免許はく奪、ということになったそうだ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
「礼には及ばんよ」
 そういって電話が切れた。
 
 ふと、振り向いてみた。
 確かにそこに、ベイカー・アンセムが空を見上げていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?